未払いの残業代と割増賃金を正確に計算するために押さえておくポイント

未払いの残業代を会社に払ってほしいーー。そう考えていても、いったいいくら残業代を請求できるのか、明確にわからない場合もあるでしょう。 残業代・割増賃金を計算するルールは、法律で厳格に決められています。この記事で計算方法を確認して、正確な金額を計算できるようにしましょう。

  • どんな場合に割増賃金が発生するのか
  • 深夜・休日…残業した日・時間帯で何が異なるのか
  • 月給制の場合、時給換算はどう計算すればいいのか
  • 歩合制・特殊な労働時間制度の場合の計算方法

目次

  1. 残業代と割増賃金が発生するケース
  2. 未払い残業代の計算式
  3. 残業パターンによって異なる割増賃金率
  4. 基礎時給の出し方
  5. [応用編]歩合制の場合

残業代と割増賃金が発生するケース

アルバイト・パート、契約社員など雇用形態に関わらず、所定労働時間以上に働いた場合は、原則として1分単位で残業代が発生します。

割増賃金が加算されるケース

法定労働時間を超えて働く場合、割増賃金が加算されます。会社は、時給に換算した賃金に最低でも25%上乗せした賃金を支払う必要があります。通常時の時給が1000円であれば、時間外労働にあたる時間は最低でも時給1250円以上ということになります。

未払い残業代の計算式

月給制の場合、基本となる残業代の計算方法は次のとおりです。

残業代= 残業時間 × 基礎時給 × 労基法上の最低の最低割増賃金率
原則として、
1分単位で計算
月給ー除外賃金
ーーーーーーーーーー
1か月の平均所定労働時間
1.25
(〜1.75)

残業した場合、発生する一時間あたりの賃金は一概に同じとはいえません。残業代として支払われる時間あたりの金額は、労働条件によって異なります。詳しく見ていきましょう。

残業パターンによって異なる割増賃金率

深夜・休日労働などで更に加算される

深夜労働や休日労働の条件にあてはまる場合は、割増賃金率はさらにあがります。たとえば、深夜(22時〜5時)に時間外労働をおこなった場合は、割増賃金率は50%(25%+25%)以上になります。労働基準法に基づくと、最大で75%以上まで上がります。 ただし、会社によっては、割増賃金率などが労働基準法より有利に定められているケースもあります。まずは、会社の就業規則・賃金規定を確認しましょう。

割増賃金の種類 割増賃金率 条件
(法定)時間外労働 +25%〜 法定労働時間を超えて働いた場合
深夜労働 +25%〜 22時〜5時に働いた場合
(法定)休日労動 +35%〜 *法定休日に働いた場合
月60時間を超える時間外労働 +50%~ 月60時間を超える時間外労働をした場合
(※一部の中小企業は対象外)

時間外労働と法定休日の割増賃金率は重複しません。たとえば、法定休日に法定労働時間を超える9時間の労働をしたとしても、賃金は35%以上の割増です。

法定休日とは?

労働基準法では、労働者が最低でも1週間に1回、または4週間に4回以上の休みを得られるよう定めています。 多くの会社で週休2日制が取り入れられていますが、法律で定めれられた休日は週1日であり、残り1日は会社が定めた所定休日です。 法定休日に労働した場合は、割増賃金が35%以上の割増賃金が発生します。法定休日の曜日は就業規則や雇用契約書を確認してみましょう。記載がない場合は、土日休みの会社であれば、日曜日を法定休日として計算されることが多いです。

「振替休日」か「代休」か

休日出勤をした場合でも、その後に取得した休暇が「振替休日」なのか「代休」なのかで取り扱いが変わってきます。 「振替休日」とは、あらかじめ休日と定められていた日を労働日として、その代わりに他の労働日を前もって休日にしておくことをいいます。 つまり、前もって「休日」と「労働日」を入れ替えておくことが「振替休日」です。 一方、「代休」は、突発的に業務にあたる必要が生じ、あらかじめ休日の振替先が指定されないで休日に働いたような場合に、その代わりに後で特定の労働日を休みにすることです。 「振替休日」の場合は、たとえば、法定休日の日曜日に出勤していたとしても、その日は「労働日」として扱われているため、休日出勤にはあたらない、つまり割増賃金が発生しないことになります。 一方、「代休」の場合は、あらかじめ休日と労働日を入れ替えている場合ではないので、法定休日の場合は35%、法定外の休日の場合でも法定労働時間を超えた時間外労働の場合には25%の割増賃金が発生します。 振替休日 振替休日の場合は、「労働日」と「休日」を事前に交換します。

  • 日曜日:通常の労働日と同じ扱いです。休日労働にはあたらないため、休日労働としての割増賃金は発生しません。
  • 水曜日:通常の休日と同じ扱いです。

代休 代休の場合は、「労働日」と「休日」が事前に交換されていません。

  • 日曜日:休日労働にあたるため、35%以上の割増賃金が必要です。
  • 水曜日:代休は無給扱いになるため、この日は給与が発生しません。

実際に計算してみよう

ここまで割増賃金の仕組みを紹介してきましたが、実際にはどのように計算すればいいのか、主な残業のパターンを例に具体的に確認していきましょう。 残業の割増賃金パターン

残業のパターン 係数 (例)時給1500円の場合
法定時間外労働にあたらない残業 ×1 1500円
かつ深夜労働にあたる残業 ×1.25〜 1875円
法定時間外労働にあたる残業 ×1.25〜 1875円
かつ深夜労働にあたる残業 ×1.5〜 2250円
法定休日労働にあたる残業 ×1.35〜 2025円
かつ深夜労働にあたる残業 ×1.6〜 2400円

[補足]残業時間が1か月に60時間を超えている場合

法定時間外労働が1か月に60時間を超えると、割増賃金率は50%以上になります。 ただし、法律の経過措置として、次の表の業種で、①②のどちらかの条件をみたす中小企業は、現状このルールが適用されていません。適用されるのは2019年4月1日からの予定です。

業種 ①資本金(または出資)の額 ②労働者の数
小売業 5000万円以下 50人以下
サービス業 5000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他 1億円以下 300人以下

次は、この「60時間ルール」が実際にはどのように適用されるのか確認しましょう。 月の残業が60時間を超えている場合の残業の割増賃金パターン

残業のパターン 係数 (例)時給1500円の場合
時間外労働にあたる残業 ×1.5 2250円
かつ深夜労働にあたる残業 ×1.75 2625円

曜日ごとに残業代を計算すると、次のようになります。

  • ⑦4h×2250+⑧1h×2625=1万1625円

基礎時給の出し方

時間・分で残業代・割増賃金を計算するのだとしても、「月給制の場合はどう計算すればいいの?」という疑問もあるでしょう。月給制の場合は、まず、「基礎時給」を算出する必要があります。 計算式は次のようになります。

残業代= 残業時間 × 基礎時給 × 労基法上の最低の最低割増賃金率
原則として、
1分単位で計算
月給ー除外賃金
ーーーーーーーーーー
1か月の平均所定労働時間
1.25
(〜1.75)

月給から除外される賃金がある

ひとくちに「月給」といっても、「家族手当」「通勤手当」など、会社からは給与の他にもさまざまな名目で手当や賃金が支給されます。 基礎時給を計算するうえで、これらの手当や賃金の中には、月給から差し引いて計算するものがあります。 ただし、除外される手当にあたるかどうかは、実質的に判断する必要があると考えられています。名目上「家族手当」「通勤手当」と支給されている場合であっても、こうした手当に当たらないケースがあるということです。 たとえば、「家族手当」という名目で支給されている手当でも、家族構成や員数に関係なく一律に支給されているといった事情があれば、実質的には「家族手当にはあたらない=除外されない」ということになります。 次の表は、除外されないケースの一例です(②)。

①除外される手当・賃金 ②除外されないケース
家族手当(扶養手当など) ・独身者にも支給されている
・家族の人数に関係なく一律で支給されている
通勤手当 通勤の距離や交通手段に関係なく、一定額が一律に支給されている
別居手当(単身赴任手当など) 別居の有無に関らず、一律に支給されている
子女教育手当 家族構成などの個別事情によらずに、一律に支給されている
住宅手当 持ち家か賃貸かの違い、住宅ローン、家賃の額といった個別的事情を反映していない
臨時に支払われた賃金 ・次の条件に該当しない賃金
(1)臨時的、突発的事由に基づいて支払われた、
(2)結婚手当など、支給条件はあらかじめ確定されているが、支給する条件が発生が不確定で、かつ、とてもまれに発生するもの
1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナス・賞与など) 年俸制の場合などで最初から賞与額が決まっている場合

[参考]最低賃金を下回っていないかも確認しよう

基礎時給を計算した結果「こんなに時給が低いのか…」と感じた場合は、最低賃金を下回っていないかどうかも確認するとよいでしょう。 基礎時給が最低賃金を下回っていた場合、最低賃金法で定められた最低賃金との差額も合わせて請求できます。詳しくは「あなたの賃金を比較チェック|最低賃金制度」をご覧ください。

1か月の平均所定労働時間の出し方

1年間の所定労働時間を計算し、12(か月)で割ってください。うるう年の場合は「366」日で計算します。

  • (365日ー1年間の所定休日数)×1日の所定労働時間 ÷ 12

[応用編]歩合制の場合

日本の法律では、労働者には、働いた時間に応じて一定の賃金が支払われなければならないことになっています。完全歩合制など、「出来高払い」のみで労働者を働かせることは違法です。 歩合制を導入している場合は、歩合給と固定給(確定している月給)を併用しているケースが考えられます。 歩合制で割増賃金が加算される場合、歩合給と固定給で別々に計算します。 歩合給はあくまで「成果に対する報酬」であるため、時間外労働をしても25%以上の割増賃金しかつかない(100%分の労働賃金は発生しない)ので注意してください。 また、基礎時給は所定労働時間ではなく月ごとの実労働時間で計算します。 残業代を計算する場合は以下の残業代を合計して算出します。

  • 固定給に対応する残業代=残業時間×固定給÷所定労働時間×1.25
  • 歩合給に対応する残業代=残業時間×歩合給÷実労働時間×0.25

残業代の計算例

たとえば、給与の条件と1か月の勤務時間が以下のような、場合を例にとって考えてみましょう。

Cさんの1か月の勤務時間例
給与 固定給:255,000円
歩合給:100,000円
労働時間 所定労働時間:170時間
実労働時間:200時間
時間外労働:20時間

Cさんの残業代は、合計40,000円となります。内訳は次のとおりです。

  • 固定給に対応する残業代:20時間×255,000円÷170時間×1.25=37500円
  • 歩合給に対応する残業代:20時間×100,000円÷200時間×0.25=2500円

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