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残業代

未払い残業代を請求する方法

使用者は労働者に対して労働の対価として給料や賃金を支払います。労働基準法では支払いに関する規定を定めており、違反した場合は罰則対象です。労働者は未払いの残業代を請求する権利があります。ここでは未払い残業分の残業代を請求する方法を確認しましょう。

目次

  1. 未払い残業代を請求する方法
  2. 裁判所に申し立てる場合の方法
  3. 確実に支払いを受けるための仮差押と差押(強制執行)
  4. 会社が倒産している場合
  5. 未払い残業代の請求権の時効

未払い残業代を請求する方法

以下で請求方法の流れを確認しましょう。

証拠を集める

未払いの残業代がいくらなのか証明できる資料を集めましょう。証拠となる具体的な例は、以下のとおりです。

  • 雇用契約書、就業規則
  • 実際の労働時間や退勤時刻を立証する資料
  • タイムカードや日報
  • 社用パソコンの送受信記録
  • 個人的な日記などに残した労働時間の記録

使用者に内容証明郵便を送る

話し合いで解決できれば手間も時間もかかりません。まずは使用者との間で解決できないか試みてみましょう。書面で記録を残したほうがよいので、勤務先の会社に対して内容証明郵便を送りましょう。


通知書
平成◯◯年◯月◯日

東京都◯◯区◯◯町◯丁目◯番◯号
株式会社◯◯◯◯
代表取締役◯◯◯◯殿
東京都◯◯区◯◯町◯丁目◯番◯号
見本太郎 印

私は、貴社から雇用され、平成◯◯年◯月◯日から社員として勤務してきました。
しかし、貴社は私に対して、平成◯◯年◯月分から平成◯◯年◯月分の給料、総額◯◯万円分が不払いとなっております。
つきましては、労働基準法第23条に基づき、本書面到着後7日以内に、総額◯◯万円に所定の遅延損害金(年6% ※退職後に請求する場合は、14.6%)を付加してお支払い下さい。
万が一お支払いが頂けない場合には、労働基準監督署への申告、民事訴訟の提起もしくは刑事告訴等の法的手段をとらせていただきます。

振込先 銀行名:◯◯銀行
支店名:◯◯支店
預金種別:普通預金
口座番号:◯◯◯◯◯◯◯
口座名義:◯◯◯◯

以上

労働基準監督署に申告する

当事者間で解決が難しい場合は、勤務先の会社の労働基準監督署に給料未払いを申告しましょう。申告は無料で、匿名で申告することもできます。

労働基準監督署が勤務先会社の調査を行ったうえで賃金を支払うよう勧告するので、調査結果によっては指導や是正勧告がなされない場合もあります。また、勧告に強制力はないため、賃金を強制的に支払わせることはできません。

あっせん制度を利用する

場合によっては、あっせん制度を利用して使用者との間に第三者を立てて話し合うこともできます。利用は無料なので、あっせん制度を利用したい場合は労働基準監督署または労働委員会などに相談してみましょう。

支払督促

未払いの給料に関して、裁判所を経由して一方的に使用者側に文書を送ることができます。使用者からの対応がない場合、最終的に強制執行によって未払い給料の取り立てができます。

ただしこれは一方的な措置にすぎず、その後訴訟となる可能性が高いので注意しましょう。

裁判所に申し立てる場合の方法

当事者間だけの話し合いで解決が難しい場合は、裁判所に申し立てましょう。調停や審判など、話し合いの要素が強い手続きであっても、決定事項に強制力があります。

審判や訴訟など、弁護士に依頼したほうがよい場合もありますので、専門家への依頼も合わせて検討しましょう。

項目 管轄の裁判所 目安の回数 備考
民事調停 簡易裁判所 2.3回 ・話し合いの余地がある
労働審判 地方裁判所 3回まで ・話し合いの余地がある
・最終的には審判で決定
・弁護士への依頼が望ましい
少額訴訟 簡易裁判所 1回 ・話し合いが難しい
・未払金60万円以下
訴訟 ・未払金140万以下の場合は簡易裁判所
・未払金140万を超える場合は地方裁判所
長期化する可能性あり ・話し合いが難しい
・弁護士への依頼が望ましい

民事調停

訴訟で争う前に、話し合いの余地がありそうな場合は民事調停から始めるとよいでしょう。調停では調停委員が当事者同士に譲歩させ、紛争の解決をはかります。簡易裁判所で行うため、あっせんとは異なり賃金支払いの強制執行が可能です。

労働審判

労働審判員の介入によって、話し合いで解決をはかります。ただし話し合いがまとまらなかった場合は、裁判所が審判を下します。調停とは異なり、より迅速な解決が望める方法です。

ただし労働審判の間に話し合い(調停)の場も持たれるため、その時点で解決となった場合は審判に至らず終了する場合もあります。

少額訴訟

未払金が少額の場合は、原則として1回の審理で解決できる少額訴訟がよいでしょう。即時解決を目指す手続きなので、訴訟に至るまでにできるだけたくさん証拠を揃えることが紛争解決の条件となります。

訴訟

未払金が140万円までの場合は簡易裁判所へ、それを超える場合は地方裁判所へ申し立てます。訴訟となると場合によっては長期化することもありますし、法律知識が求められます。弁護士に相談したほうがよいでしょう。

確実に支払いを受けるための仮差押と差押(強制執行)

使用者が裁判所の命令に従って支払えば解決するのですが、残念ながら支払いが受けられない場合も考えられます。使用者が支払いに応じない場合は差押(強制執行)となりますが、確実に支払いを受けるための方法として「仮差押」を裁判前に行うことができます。

例えば裁判が長期化した場合に、使用者が預金などを使い果たしてしまえば支払い能力がなくなってしまいます。仮差押をしておけば、使用者は財産に手をつけることができません。

仮差押には費用がかかる

ただし、仮差押のためには労働者側が担保として約10~35万円の供託金を負担する必要があります。勝訴すれば担保として支払った金額は取り戻すことができますが、敗訴の場合は難しいでしょう。仮差押は効力が高いのですが、費用面を考えると慎重に検討する必要があります。

会社が倒産している場合

会社が倒産してしまって未払い賃金を請求する相手がいない場合は、労働組合を結成・加入して使用者と争ったり、未払賃金立替払制度を利用したりするとよいでしょう。

未払賃金立替払制度を利用すると、会社に代わって、独立行政法人労働者健康安全機構が未払い賃金の最大8割を支払ってくれます。ただし利用条件がありますので確認しましょう。

未払賃金立替払制度の利用条件

対象 具体的な条件と備考
使用者(会社) ・1年以上事業活動を行っていた
・会社(使用者)が法律上の倒産
または事実上の倒産(中小企業の場合に限る)した
労働者 ・倒産について申立てや認定の申請が行われた日の6か月前から2年までの間に退職している
・正社員以外の雇用形態や、外国人も対象となる
・退職の理由は自己都合でも会社都合でもよい
未払い賃金 ・退職日の6か月前から請求日までに支払期日が来るもの
・定期賃金または退職金(賞与は対象外)
・合計額が2万円以上

支払い限度額

原則として未払い賃金の8割が支払われますが、退職日の年齢に応じて以下のとおり限度額が決まっています。

退職日の年齢 未払い賃金(立替払い)の限度額
45歳以上 未払賃金の限度額は370万円
→立替払いの限度額は296万円
30〜45歳未満 未払賃金の限度額は220万円
→立替払いの限度額は176万円
30歳未満 未払賃金の限度額は110万円
→立替払いの限度額は88万円

例えば、35歳の人で未払い賃金の合計金額が300万円であればその8割の金額は240万円です。ただし、未払い賃金の限度額が220万円であるため、176万円しか受け取れません。240万円よりも64万円少ない金額となります。

手続き方法

まずは未払い賃金があることの証明書を取得しましょう。証明書を発行してもらう相手は倒産の種類によって異なります。法律上の倒産の場合、四つのケースが考えられますのでそれぞれの請求先を確認してください。

項目 証明書の請求手順と請求先
法律上の倒産 ①下記いずれかに当てはまる対象者に未払い賃金の証明書を請求する
【破産】破産管財人
【特別清算】特別清算人
【民事再生】再生債務者
 ※使用者(会社)または代理人
【会社更生】更生管財人
事実上の倒産 ①使用者(会社)を管轄する労働基準監督署長に倒産の認定申請をする
②倒産の認定を受けたあとで未払い賃金の確認申請をする

証明書と請求書が揃った段階で、労働者健康安全機構に提出します。審査に通り、支払いが受けられる場合は1か月程度で指定口座に振り込まれるでしょう。

未払い残業代の請求権の時効

未払い残業代も給料の一部ですから、給料を請求する権利の時効と同様その時効期間は2年です。

全ての事例にあてはまるわけではありませんが、残業代請求の場合には、会社が「長時間の残業が発生していることを知りながらその残業代の支払いを放置していた」事例で、残業代の不払いについて会社に不法行為が認められるとして、時効期間が3年となった裁判例もあります。

退職金については金額の大きさや退職後に請求する難しさが考慮され、時効が5年となっています。在職中のトラブルを避けるため、退職後に請求したい場合でも、請求権には時効がありますので注意しましょう。

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