退職に伴う有給消化の件

公開日: 相談日:2012年09月25日
  • 2弁護士
  • 2回答

弊社は派遣会社です。
派遣社員(以下、Kという)の退職に伴う有給消化の件で法的な見解をお伺いします。

本年7月31日に退職した元派遣社員Kから、
未払い分の給与10日分を支払って欲しいと
簡易書留で封書が届きました。

調べましたところ、既労働分については全額支払い処理が
されており、よくよく中身を確認しましたら、
退職時に消化した有給分10日を支払って欲しいという内容
のもので、正直困惑しております。

本年5月15日に、Kが7月31日をもって退職したいと申し出があり、
弊社は、退職届を受け取り承諾しました。
ところが、入社して6ヶ月経過した日である6月14日に、
Kは有給届(7月21日から30日までの10日間)を持参し、
有給を全部使って退職したいと申し出がありました。

弊社の就業規則には、
・退職届を提出した者は、会社の承認があるまでは従前の業務に服さなければならない。
・退職届を提出した者は、退職までの間に必要な事務の引継ぎを完了させなければなら
ない。また、事務の引継ぎが完了せずに退職し会社の信用を落として損害を被った場合は、
第39条第3項の出勤停止とする。そのため、その間の賃金は支給せず、それにより会社の
信用を失い損害を与えた場合は、その損害を求めることができる

と明記されている旨を、Kに説明させていただきご理解いただいたはずですが、
今回の簡易書留の内容には誠に困惑しております。

ご質問ですが、
弊社は退職時に消化したとKが主張する有給分10日分の給与を
支払わなければならないのでしょうか?

派遣元である弊社の指示に従わず、引継ぎ業務も行わず、
無断で有給と称して退職したKに支払う必要があるのでしょうか?

弊社就業規則によりますと、引継ぎ業務を完了せず退職した場合、
その間は出勤停止となり、その間の賃金は支給しないこととなっております。

ちなみに、Kは有給休暇10日を合法的に取得しております。
弊社就業規則も所轄労基に届けを出してあります。

労働問題に詳しい弁護士の方からの見解をお伺いしたいと存じます。

320969さんの相談

回答タイムライン

  • 鈴木 祥平 弁護士

    注力分野
    労働問題
    タッチして回答を見る

    初めまして、事案を拝見いたしました。本件のケースでは、①年次有給休暇の権利(年休権)の行使の問題と②就業規則との関係の問題があるようなので、二つについて説明します。

    1.年休権の行使について
     労働者には、年休権という権利があり、年休権の行使の具体的手段として時季指定権という権利が認められています。これは、「この日を有給として休みたい」という意思表示をすれば、その日は原則として「休日」にすることが出来るという権利です。ただ、会社側としても好き勝手に休日にされては困るということを考慮して、「時季変更権」という権利が認められています。これは、「その日は有給にして貰っては困る」という意思表示をすることによって
    時季指定権の行使により、「休日にすることができるという法的効果」を阻害する権利です。ただのその場合には、「事業の正常な運用を妨げる場合」出あることが必要です。お話をお伺いする限り、Kさんは、有給は合法的に取得しているということなので、時季変更権を行使していないということでしょうから、Kさんは、有給を有効に取得したということになりそうです。

    2.就業規則との関係について
     御社の就業規則には、「退職届を提出した者は、退職までの間に必要な事務の引継ぎを完了させなければならない。また、事務の引継ぎが完了せずに退職し会社の信用を落として損害を被った場合は、第39条第3項の出勤停止とする。そのため、その間の賃金は支給せず、それにより会社の信用を失い損害を与えた場合は、その損害を求めることができる」(賃金不支給条項)があるようです。
     ただ、残念ながら今回のケースでは賃金不支給条項に該当するとはいえません。Kさんの年休権の行使(時季指定権の行使)によって引き継ぎが上手く行かないのであれば、それこそ会社の側で時季変更権を行使することで支障を避ける事が出来たと思われるからです。
     年休が有効に取得されたという前提であれば、それに対応する賃金については支払わざるを得ないというのが結論になりそうです。もちろん、具体的な事情によっては、不支給ということも考えられるでしょうが、本件のケースで不支給にするというのは困難であるように思われます。

  • 相談者 320969さん

    タッチして回答を見る

    鈴木弁護士様

    ご丁寧なご回答誠に感謝致します。
    また、非常に分かりやすくご回答いただき、いい勉強させていただきました。

    今回のケースの場合は、
    労働者の時期指定権に対し、使用者側の時期変更権を明確に行使すべきでした。

    その点を曖昧にしたまま退職時期を迎え、退職後に未払い賃金という形で
    請求されても、企業側は打つ手がないということがよく理解できました。

    労働者にも生活がありますので、
    弊社としては請求金額をお支払いする方向にさせていただきます。

    今後に向けてはいい勉強ができましたので、
    合法的な企業運営に邁進していきたいと存じます。

    今回はありがとうございました。

  • 小池 拓也 弁護士

    注力分野
    労働問題
    タッチして回答を見る

    退職までの全労働日について年休を取得する旨労働者が申し出た場合,引継ぎがあるからといって時季変更権を行使することはできないというのが行政解釈です。
    (ご参考)
    http://www.e-sanro.net/sri/q_a/roumu/r_bas_049.html

    年休の買い取りを交渉(厳密には違法の疑いがあるが,おそらく申告されない)するなど,労働者と話し合い納得してもらうしかないと思います。

    就業規則や労働契約で何を定めても,労働基準法は強行法規であってこれに反するものは無効です。御社の就業規則を根拠に引継ぎを求めても,年休がとれなくなってしまう結果となるならば,これを強制できません。

    結局,日ごろ年休消化を奨励する必要があるのではないでしょうか。


この投稿は、2012年09月時点の情報です。
ご自身の責任のもと適法性・有用性を考慮してご利用いただくようお願いいたします。

もっとお悩みに近い相談を探す

新しく相談をする

新しく相談をする 無料

弁護士に相談するには会員登録(無料)が必要です。 会員登録はこちらから