財産を残したくない相続人がいる…遺留分の仕組みと相続人の廃除が認められるケースとは

あの人には自分の財産を渡したくないーー。自分の死後、財産を受け継ぐ相続人の中にそうした人がいる場合、生前に準備できることはあるのでしょうか。

  • 相続人の最低限の取り分である遺留分とは
  • 遺留分すら渡したくない場合はどうすればよいのか

こうしたポイントについて、「みんなの法律相談」に寄せられた実際の相談事例と弁護士の回答をもとに解説します。

目次

  1. 遺言を残しても「遺留分」は発生する
  2. 遺留分とは
  3. 遺留分すら渡したくない場合の対処法
  4. 廃除が認められるケース
  5. まとめ

遺言を残しても「遺留分」は発生する

alt 自分の財産を残したくない相続人がいる場合は、どうしたらよいのでしょうか?

相続について

相続させたい人がいる 相続をさせたい人物がいるため公正証書遺言を作成した場合、遺言書に書かれている人以外の親族から遺留分の請求が発生する場合はあるのでしょうか。

また公正証書遺言を作成するには全部でいくらくらいかかるのでしょうか。

森田 英樹の写真 弁護士の回答森田 英樹弁護士 相続人が兄弟姉妹のケースでは遺留分は発生しませんが、それ以外の相続人の関係では遺留分が存します。

公正証書の作成費用は遺産の額などによって異なってきます。日本公証人連合会のHPをご覧になり確認ください。

特定の相続人に財産を残したくないと考えても、相続人の中には「遺留分」が発生することがあるようです。

遺留分とは

alt では、遺留分とはどのような仕組みで、どのような場合に生じるのでしょうか。

遺産分割においての遺留分ってなんですか?✴

遺留分とは 遺産分割協議書に書いてある、遺留分という言葉はどんな意味で、どんなものですか?

武田 健太郎の写真 弁護士の回答武田 健太郎弁護士 > 遺産分割協議書ってのに書いてある、遺留分って言葉はどんな意味で、どんなものですか?

「遺留分」とは、被相続人の財産の中で、法律上その取得が一定の相続人に留保されていて、被相続人による自由な処分(贈与・遺贈)に制限が加えられている持分的利益をいいます。

例えば、Aさんのお父さんが亡くなった場合、Aさんは相続人で、Aさんのお父さんは,被相続人となります。被相続人であるAさんのお父さんに財産があり、被相続人であるAさんのお父さんが遺言でその財産すべてをCさんに譲ると書いていた場合でも、相続人であるAさんは法律上認められた金額を遺留分として請求できるのです。

遺留分制度が定められた趣旨は、被相続人の財産処分の自由と相続人の保護(生活保障など)という相対立する要請の調和を図ることにあると考えられます。

池田 毅の写真 弁護士の回答池田 毅弁護士 遺留分という単語の意味ということで言えば、概ね次の通りです。

被相続人(亡くなった人)は、遺言で例えばある相続人に全財産を譲ることが出来ます。
しかし、そうなると、他の法定相続人は、一切もらえないという結果になってしまいます。
法律は、その場合でも最低限もらえる遺産の範囲というのを決めています。ケースによりますが、原則として法定相続分の2分の1は、もらえることができます。この最低限もらえる分を遺留分といいます。

遺留分は、原則として法定相続分の1/2が認められるようです。法定相続は次のような仕組みになっています。 遺言がなく、話し合いでもまとまらない場合、誰がどのくらい遺産を相続するのかは、原則として民法のルールにしたがって決まります(法定相続)。 配偶者(妻・夫)、子どもなど、被相続人との関係によって、優先順位・相続できる遺産の割合が決まっています。次の図のような関係になっています。 alt

法定相続人 遺留分
配偶者のみ 配偶者が1/2
配偶者と子ども(第1位順位) 配偶者1/4、子ども1/4
※子ども(孫)が複数いるときは1/4を均等に分ける
配偶者と父母(第2順位) 配偶者1/3、父1/12、母1/12
配偶者と兄弟姉妹(第3順位) 配偶者1/2・兄弟姉妹なし
子どものみ 子どもが1/2
※子どもが複数いるときは1/2を均等に分ける
父母のみ 父1/4、母1/4
兄弟姉妹のみ なし

遺留分すら渡したくない場合の対処法

alt 遺留分すら渡したくない場合はどうすればよいのでしょうか。

遺言書で特定の相続人を除外したい場合について

遺言書で遺留分を除外できる?  
義父が長男には一切相続させたくないと言っています。遺言書に長男には一切相続させないと明記すると言っていますが、それで済むことなのでしょうか?それで長男からくるであろう遺留分減殺請求を拒否できるのでしょうか?

加藤 尚憲の写真 弁護士の回答加藤 尚憲弁護士 (1)「長男には一切相続させない」との文言の効力について


遺言書に「一切相続させない」と書いても、何の法的効力もありません。遺留分は、相続人に対して最低限の相続を保証する制度です。


この程度の文言で遺留分を無効にすることができるなら、そもそも遺留分という制度はないも同然ですから、遺留分減殺請求を拒否できるということになるわけがありません。

(2)相続人の廃除について

一般的に、相続人の廃除が認められることは容易ではありません。実際、裁判所に申し立てられた廃除の申立ての大半は却下されています。

あなたのケースに近い例でいうと、2000万円以上の借金を親に肩代わりさせた事例で、「著しい非行」に当たるとして廃除が認められたケースもありますが(神戸地裁伊丹支部平成20年10月17日審判)、あなたのケースに比べると、金額が一桁異なります。

長男さんが引き出した金額の相続財産全体に占める金額や、その他の事情にもよるとは思いますが、廃除が認められるのは容易ではないであろうと思われます。

(3)その他

基本的に、「一切相続させない方法」というものは存在しないので、まずはこの点をお義父さんに理解していただくしかありません。

現実的には、「どれだけ長男の取り分を減らしていくか」という観点から考えるべきでしょう。


考えられるアプローチとしては、特別受益の主張が考えられますが、今回は、贈与ではなく長男さんが勝手に引き出したケースなので、特別受益に当たるとは考えにくいです。

むしろ、お父さんが長男さんに不当利得返還請求権を行使できるので、これが相続の対象になるという考え方が適しているでしょう。

もっとも、弱点は、10年以上経過していることで、すでに権利が時効にかかっていることです。


長男さんが時効を主張すれば、お金を取り戻すことはできません。

結局のところ、本件は、お金は戻ってこない上に、相続にも反映されないという残念な結果になりそうな状況です。

お義父さんとしては不本意かもしれませんが、そもそも、お義父さんも数百万円を引き出されて今まで法的措置を取らなかったという落ち度があり、故に権利を失うことはやむを得ないものと考えられます。

遺留分すら渡したくない場合は、「相続人の廃除」という方法がありますが、廃除はなかなか認められないようです。

廃除が認められるケース

alt 廃除が認められるのはどのような場合なのでしょうか。

推定相続人排除の申し立て

推定相続人廃除の申立て 推定遺産相続人の排除を申し立てたいのですが、その際に著しい非行の証明が必要だと思っています。

民事損害賠償請求裁判で十分といえる証拠があれぱ、申し立ては認められるでしょうか?
申し立てる理由は刑法に触れる不法行為です。認められるハードルは、民事裁判より高いですか?

岡村 茂樹の写真 弁護士の回答岡村 茂樹弁護士 1.廃除の理由となる場合

・被相続人を虐待した場合
・被相続人に対して、重大な侮辱を与えた場合
・推定相続人にその他の著しい非行があった場合 被相続人の財産の不当処分
・賭博を繰り返して多額の借財を作りこれを被相続人に支払わせた
・浪費、遊興、犯罪行為、暴力団や右翼団体など反社会集団への加入・結成、異性問題を繰り返すなど親泣かせの行為
重大な犯罪行為を行い有罪判決を受けている(過去の判例からの一般論としては5年以上の有期懲役、無期懲役または死刑に該当するような犯罪行為)
・相続人が配偶者の場合には婚姻を継続しがたい重大な事由 愛人と同棲して家庭を省みないなどの不貞行為
・夫婦関係の事実が存在しない(遺産目当てに戸籍上の夫婦になった場合など)
・相続人が養子の場合には縁組を継続しがたい重大な事由 親子関係の事実が存在しない(遺産目当てに戸籍上の養子になった場合など)

2.家庭裁判所はこの申立てに対し慎重に審議する傾向にあり、実際に相続廃除が認められた事例はそれほど多くありません。また、相続廃除は遺言で行うことも可能ですが(民法893条)、推定相続人が異議申立てをすると認められない場合がほとんどで、推定相続人が一切の異議を申し立てないか、重大な犯罪行為を犯して刑務所に収容されているようなことがなければ、相続権が剥奪されることは稀です。

上記を参考にしてください。結構というか、極めてハードルは高いです。

廃除が認められる理由としては、さまざまな項目がありますが、実際に認められることは稀なようです。

まとめ

相続人の中に財産を相続させたくない人がいる場合、その旨遺言を残しておくことになりますが、遺言を残しておいたとしても、相続人には「遺留分」という最低限の取り分が認められるようです。 遺留分すら認めたく場合、相続人の廃除という手続きがありますが、認められるハードルは極めて高いようです。

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