相続

2018年02月13日

ニート期間中の生活費援助は「特別受益」? 遺産の取り分への影響

亡くなった人から、生前に生活費の援助を受けていた場合、特別受益にあたるとして、遺産分割の際に持戻しの対象となるのでしょうか。 たとえば、長年親の援助を受けてニート生活を続けていたような人は、相続分が減らされるようなことはあるのでしょうか。 この疑問について「みんなの法律相談」に寄せられた実際の相談事例と弁護士の回答を元に解説します。

目次

  1. ニート期間中の生活費援助は特別受益にあたる?
  2. 生活費の援助が特別受益と見なされるケースとは?
  3. まとめ

ニート期間中の生活費援助は特別受益にあたる?

alt 亡くなった人からの生活費の援助は特別受益にあたるのでしょうか。ニート生活をしている間の生活費を親に支払ってもらっていたというケースを例に解説します。

長年のニート生活は遺産相続に影響しますか?


相談者の疑問
亡くなった父の遺産相続で調停をすることになります。相続人は母と兄と私の3人です。

ここで気になっているのは、私は20年近くニート生活をしてきたことです。現在もそうです。父に生活をさせてもらってきました。飲食代や煙草代や社会保険料などの世話になってきました。特別、まとまった大きな額をもらったことはありません。

このたび、兄から20年近くのニート生活の費用は特別受益にあたるとして主張されています。そこで質問ですが、

①上記の様な20年近くのニート生活の費用は特別受益にあたるのでしょうか?法定相続分の遺産相続とはならないのでしょうか?

②もし特別受益にあたるとか、調整が計られる場合、どれ位の請求額を要求されるのでしょうか?

③法律的な根拠や、これまでの判例などはどういったものでしょうか? 私のニート歴が、調停や裁判で調整を計られる可能性はどれぐらいですか?


畠山 晃弁護士
生計の資本としての贈与(民法903条1号)は、生計の基礎として役立つような財産上の給付をいい、生活の苦しい子に対し、生活費を必要の都度渡すことや本件のような援助程度の内容をすることは、後々まで生計の基礎として利用できる財産の贈与ではなく、扶養の範囲内と考えられるため、合計金額が多額になったとしても、特別受益には該当しないと考えます。

親から子に対する生活費の援助は扶養の範囲内と考えられるため、特別受益にはあたらず、持戻しの対象にならないようです。

生活費の援助が特別受益と見なされるケースとは?

alt 生活費の援助が扶養の範囲内と考えられる場合は特別受益にあたらないようですが、生活費の援助であっても、一定の条件にあてはまると、特別受益にあたることがあるようです。どのような条件なのでしょうか。

生活費をもらった場合の特別受益の証明方法


相談者の疑問
妹が被相続人(父)から毎月特定額の生活費をもらっていた場合、上記生活費を特別受益とみなす方法をお教えください。

父が亡くなり、子どもである姉妹(私、妹、母は既に他界)で遺産分割をすることになりました。

私と妹は既に嫁いでおりそれぞれ嫁ぎ先の籍になっています。妹は結婚を機に父と同居しましたが、数年前に父は老人ホームに移動しています。

妹は、父と同居している間、父から毎月一定額(7~10万円)をもらっていました。妹は、父に生活費を出すように要請したわけではなく、父が勝手に出した費用のため、特別受益にはあたらないという考え方で話を進めそうな様子です。

こちらとしては、父、妹の認識の差異があっても毎月一定金額の援助は特別受益にあたるのでは思っているため、遺産分割の際の特別受益として話を進めたいのですが、この毎月の父からの生活費は特別受益にあたらないのでしょうか。

また、父の過去の通帳履歴を照会したところ、毎月上記相当額が引き出されている履歴を確認することはできましした。これは特別受益としての証拠になりますか?


岡村 茂樹弁護士
1.生計の資本としての贈与は特別受益の対象になるとされています。

2.通常、この生計の資本としては、「居住用不動産の取得費用、事業を始めるにあたっての事業資金の援助、負債を肩代わりして弁済金を用立てた」などがあげられています。

3.そしてその金額としては、小遣い、お礼の域を超え、遺産の前渡しと評価できる程度のものとされています。

4.今回の毎月の金銭交付ですが、「同居期間中」「毎月7万円から10万円」という点が気にかかります。同居している娘に対するお礼と自分の生活費として渡していたと評価されれば、特別受益性は薄くなるでしょう。お父様がご自分で、別途、生活費を負担していたなどの事情があれば別ですが。

5.このあたりの事情を精査されるべきです。

生活費の援助が「生計の資本としての贈与」と考えられる場合は、特別受益にあたるようです。 具体的には、亡くなった人から生前、住宅資金や事業資金の援助を受けたり、借金を肩代わりしてもらったりしたケースで、その金額がお小遣いの域を超えているような場合は、特別受益にあたるとして持戻しの対象となる可能性があるようです。

まとめ

ニート生活をしている間に親から生活費を援助してもらっていたケースなど、生活費の援助が扶養の範囲内と考えられる場合は、特別受益にあたらず、遺産分割の際、持戻しの対象にはならないでしょう。 ただし、援助が「生計の資本としての贈与」と考えられる場合は、特別受益にあたる可能性があるようです。

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