遺言書

2018年02月07日

認知症の親が書いた遺言は有効なのか…「遺言能力」とは?

遺産分割を行う際に相続人同士でもめないよう、親などに遺言書を書いてほしいと思う人もいるでしょう。 では、親が認知症と診断されている場合でも、有効な遺言書を作成させることができるのでしょうか。自力で書くことが難しい場合、家族が代筆してもよいのでしょうか。 こうした疑問について「みんなの法律相談」に寄せられた実際の相談事例と弁護士の回答を元に解説します。

目次

  1. 認知症の人の遺言書を家族が代筆してよい?
  2. 遺言能力とは?
  3. まとめ

認知症の人の遺言書を家族が代筆してよい?

alt 遺言書を書く人が認知症の場合、他の家族が代筆などをしてもよいのでしょうか。

認知症患者の遺言状は有効か?


相談者の疑問
近年、母親92歳が、介護レベル1に認定されまして、かつ腰を痛め現在入院中です。介護レベル1に認定された原因は、認知症が進展してきているためであり、年金用の金融機関名、口座などの忘却、朝話した事項の忘却など、財務面での管理などができない状態です。

その状態の母親に遺言書を書かせようと兄弟が計画しています。

本人の記憶力、判断力が不確かな状況で、その子など(私を除く)が勝手に作成した遺言、あるいはそのような趣旨の文書を作成し、本人に説明・同意を求め、署名させる可能性がありますが、上述のような状況の親に署名させたものが有効となるのでしょうか?


鈴木 克巳弁護士
◆ 公証役場で作成する公正証書遺言ではなく、自分で作る自筆証書遺言は『全文自筆(作成年月日や氏名は勿論、すべて自署した上で押印したもの』でなければ『無効』です。

氏名欄だけ自署した(残りの部分はワープロ作成の)ような自筆証書遺言書は無効です。

◆ 認知症であっても遺言能力はありと言える場合があります。認知症の程度にもよります。

また、遺言能力は、個々の遺言ごとに判断されますので、複雑な遺言内容であれば認知症が軽度であっても無効、簡単な内容の遺言(例えば、「全財産を〇〇に相続させる」という単純な遺言)であれば認知症が相当進んでいたとしても有効と判断される可能性があります。

◆ 『書き写し遺言』、つまり、誰かが書いた文章をそっくりそのまま書き写すだけの能力がある人に遺言書を作成させてしまうという手段をとる人が世の中にはいます。

これを『事前に阻止』することは、遺言書作成者の同居家族でない限り難しいでしょう。同居し、他者を寄せ付かさない、これしかないのでないでしょうか。

◆ 万が一、『書き写し遺言』が作成されてしまった場合は、後で『遺言無効』を争っていくことになるのですが、その時のためにやっておくべきことは、医師に診断書をこまめに作成してもらったり、遺言書作成者の判断能力が欠如していく様子の日記を付けておくといった方法が考えられます。

また、成年後見の申立てをし、後見相当とされた場合は、後見人の知らない間に作成された遺言は、本人の意思に基づかないものだ、書き写しだと認定され、無効と判断される可能性が高くなります。

自筆証書遺言は、すべて本人が直筆する必要があるようです。家族が代筆したものや、パソコンで打ち出して署名捺印をしたものは遺言書としての効力を持たないでしょう。 有効な遺言書を作成するには「遺言能力」が必要ですが、認知症の診断を受けたからといって必ずしも遺言能力がないとは言い切れないようです。

遺言能力とは?

alt 有効な遺言書を作成するために必要な「遺言能力」とはどのようなものなのでしょうか。

認知症、字の書けない人、喋りが聞き取りずらい人に遺言書を残してもらうには


相談者の疑問
認知症の人に遺言書(公正証書)を作成してもらうことは可能でしょうか?医師の診断書(長谷川式?)が必要だと思いますが、診断書には判断能力があるないまで書いてもらえるのでしょうか?

字が書けない人や話すことに障害のある方(その人の言葉が聞き取りづらい)の場合はどうでしょうか?


三津谷 周平弁護士
遺言書を作成する前提として、遺言をされる方に遺言能力があることが必要です。遺言能力の有無は、自ら遺言をすること、遺言の内容、遺言の効果などを遺言を書かれる方が判断することができるか否かで判断されます。

認知症の方は、この遺言能力が欠けている場合が多く、遺言を作成することができない場合がほとんどかと思います。

また、字が書けない人の遺言書作成についてですが、遺言能力のある方であれば、公正証書遺言であれば作成することが可能です。公証人が代筆してくれますので、遺言作成を行うことが可能です。

また、話すことに障害がある方であっても、遺言能力があり、自署ができる方であれば、ご自身もしくは公正証書で遺言を遺すことは可能です。もし字が書けない場合でも公正証書遺言であれば、遺言を作成することができます。

こうした方がいいという基準がないため、あくまで参考程度の意見になりますが、診断書の形で、長谷川式の点数と判断能力に関する医師の方の見解を書いていただくのがいいように思います。

遺言能力があるかどうかは、遺言の内容や遺言がどのような効果があるのかといった点を理解できるかどうかで判断するようです。 遺言能力があれば、話すことに障害がある人や、遺言書を直筆できない人でも、公正証書遺言の形式で有効な遺言書を作成できるようです。

まとめ

有効な遺言書を作成するためには、本人に遺言能力があることが前提となるようです。 認知症と診断されたからといって、必ずしも遺言能力がないと判断されるわけではないようです。遺言能力の有無は個々の遺言ごとに判断され、遺言の内容によっては、認知症がかなり進んでいても、有効と判断されるケースもあるようです。 遺言能力があれば、話すことや字を書くことが難しい場合でも、公正証書遺言の形式で有効な遺言書を作成できるでしょう。

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