お墓を引き継ぐと相続放棄ができない?お墓参りはしてよいのか【弁護士Q&A】

遺産相続において相続放棄を検討している場合に、遺産を引き出すなどすると、単純承認と見なされて相続放棄ができなくなってしまうことがあります。では、お墓を引き継いだり、お墓参りをすることも相続放棄に影響するのでしょうか。「みんなの法律相談」に寄せられた実際の相談事例と弁護士の回答を元に解説します。

目次

  1. お墓を引き継ぐと相続放棄ができなくなる?
  2. お墓参りはできる?
  3. お墓の管理費は誰が負担するの?
  4. まとめ

お墓を引き継ぐと相続放棄ができなくなる?

alt 先祖代々のお墓を引き継ぐと、相続放棄ができなくなってしまうのでしょうか。

お墓を引き継いでも相続放棄は可能ですか?

相談者の疑問 私の弟が他界しました。弟は再婚していて妻と子ども(連れ子)がいます。弟には借金や離婚した妻子への未払いの養育費があります。

先日、実家のお墓(父と母が入っている)の名義が弟になっていたのを、私名義に変更しました。

現状では相続人は現在の妻子となり、私は相続人ではないと思いますが、今後、現在の妻子が相続放棄をした場合は私も相続放棄をしようと考えています。

弟の名義だったお墓を私名義に変更しましたが、現在の妻子が相続放棄をして私が相続人となった場合に、相続放棄を行うことは可能でしょうか?

鈴木 克巳の写真 弁護士の回答鈴木 克巳弁護士 ◆ 民法は、896条本文で「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と規定するとともに、897条1項では、「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する」と規定しています。

◆ つまり、祭祀財産は、相続とは無関係であり、相続財産(遺産)ではなく、祭祀承継者の所有に帰属することを民法は明確に規定しているのです。

◆ また、本件での「ご実家のお墓」は、弟さんの祭祀財産というものではなく、弟さんがご実家の祭祀財産の承継者になっていたのを、弟さんのご逝去に伴い、貴殿が承継したということですから、弟さんの相続の問題は全く無関係ということになります。

◆ なお、民法では、祭祀承継者は、原則として「慣習」によって決まると規定されているのですが、関係者全員が納得した上で誰かが祭祀承継者になる場合は、後で特に問題が出るということはありません。また、本件では、ご実家のお墓を貴殿が承継するのは、慣習上当然認められるものともいえます。

◆ 以上から、ご実家のお墓の所有権を弟さんから承継しても、弟さんの相続につき、相続放棄ができることは明らかですので、ご安心ください。

お墓のような「祭祀財産」を引き継いでも、相続放棄ができなくなることはないようです。

お墓参りはできる?

alt 相続放棄することによって、お墓のある土地の所有権までも手放すことになってしまう場合、相続放棄後もお墓参りをすることはできるのでしょうか。

相続放棄後のお墓参りについて(お墓は所有している山にあります)

相談者の疑問 現在、夫の両親は健在ですが、両親が亡くなった後、遠方にいる私たちが生家や山などを管理することは難しいため、両親死後、財産は放棄する予定です。

しかし、夫の両親が、所有している山に先祖代々のお墓があります。今のうちに、山ではなく、管理しやすい場所にお墓を移すことを提案しましたが、お金がかかるからと義両親に断られました。

そこで、質問ですが、財産を放棄した場合、放棄した山にある先祖代々のお墓に、自由に、お参りすることができるのでしょうか。そもそも、お墓などがある山を相続放棄することはできるのでしょうか。

岡田 晃朝の写真 弁護士の回答岡田 晃朝弁護士 相続は財産問題で、祭祀承継は別の問題です。相続放棄してもお墓参りは可能です。

ただ、山自体が新たな権利者のものになり、墓の撤去など求めてくれば、山の利用自体が問題になる可能性はあります。

相続放棄をしても、お墓参りをすることは可能なようです。 ただし、相続放棄によってお墓のある土地を手放した場合は、その土地は他人のものになってしまうため、お墓の撤去を求められるなど、支障が出る場合もありそうです。

お墓の管理費は誰が負担するの?

alt 相続放棄をした場合、お墓の管理費を支払う必要はあるのでしょうか。

相続放棄とお墓の管理費について

相談者の疑問 相続放棄の範囲についてです。

主人の父親の相続放棄が完了しました。母親は生きています。主人の父親側のお墓(市が管理している霊園にお墓を作っています)について、少し疑問が出てきました。

現在、亡くなった父親が、管理費を口座引き落としにしていたみたいです。生前からお墓についてはもめていて、こちらは永代供養を考えていて、父親は永代供養を拒否。

今後の管理費支払いは、母親がするのですが、母親が払わなければこちらに請求が来ると思います。お墓の管理費について、相続放棄をした場合、払う必要はないのでしょうか?やはり、相続放棄とお墓の管理費は関係ないものなのでしょうか?

木野 達夫の写真 弁護士の回答木野 達夫弁護士 1.相続放棄とお墓の管理費は別問題です。

民法897条によれば、お墓などは相続財産ではなく、誰が承継するかは、①遺言で指定があれば指定された人②地域に慣習があれば慣習に従う③慣習がはっきりしない場合は裁判所が決める、という順番で決まります。

お墓などを承継する人のことを「祭祀承継者」といいます。相続人の一部が相続放棄をしても関係ありません(相続放棄した人が「祭祀承継者」になる場合もあります)。

2.仮に上記1によって、「母親」が「祭祀承継者」ということであれば、ご主人には管理費の支払義務はありません。

したがって、その場合、「母親」が管理費を支払わない場合に、法的な意味でご主人に対して管理費の請求を行うことはできないことになりますが、事実上、「管理費を支払ってもらえないと無縁仏に移します」という通知が関係者(ご主人も含む)に送られてきます。

それを無視して支払いをしなければ無縁仏(合祀墓地)に移されます。

3.仮に上記1によって、ご主人が「祭祀承継者」ということであれば、相続放棄をしていてもご主人が管理費を支払う義務を負います。支払わなかった場合は上記2と同様の流れになるでしょう(法的手続までしてご主人に対して管理費の支払いを請求したりはしないでしょう)。

お墓の管理費については、祭祀承継者が負担することになるようです。相続放棄をした人が祭祀継承者になったとしても、お墓の管理費を支払う義務を負うようです。

まとめ

お墓のような「祭祀財産」を引き継いでも、相続放棄に差しつかえることはないでしょう。お墓詣りをしても問題ないようです。 相続放棄をしても、祭祀継承者になった場合は、お墓の管理費を支払う義務を負うようです。

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