口約束は遺言として有効?
遺言書はないが、亡くなった人が生前、「~に相続させる」などと発言していた場合、その発言は遺言として有効なのでしょうか。
相談者の疑問
死んだ父親が、生前、「家(一軒家)を甥にやる」(相続だと思うのですが)と言っていました。言葉だけで「遺言書」などはありません。言葉だけでも遺言として効力があるのですか?
弁護士の回答森田 英樹弁護士
ありません。
民法は、遺言者の意思を正確に残して無用な混乱・紛争を避けるため、遺言時効を法律で定めるほか、自筆証書遺言、公正証書遺言など厳格な方式を踏まない限り遺言としての効力を認めていません。
亡くなった人から「財産をやる」などと生前に告げられていたとしても、口約束だけでは遺言としての効力は生じないようです。 自筆証書遺言や公正証書遺言といった決められた形式で作成された遺言書でなければ、法的に有効とは言えないでしょう。
口頭での生前贈与は有効?
口約束の遺言には法的な効力がないようです。では、口頭でされた生前贈与は有効なのでしょうか。
相談者の疑問
生前の被相続人の預金通帳から多額の現金の引き出しがあったことに対して、引き出した当事者の相続人は「元被相続人がやると言ったからもらった」と言っています。
契約内容が口頭のみで生前贈与契約書がなかった場合、生前贈与は無効でしょうか?また、無効の時はどの様な名前の対処をすればよいのでしょうか?もし証人がいるなら有効でしょうか?
弁護士の回答柏木 幹正弁護士
贈与は口頭だけでなされても、つまり贈与契約書がなくても有効です。
問題は、被告相続人が本当にやると言ったのか、それとも相続人が勝手に預金を出金したのかということです。
被相続人は亡くなられているわけですから、確認のしようがないかもしれませんが、証人がいるかどうか、出金した当時に贈与されることが不自然な事情(たとえば、被相続人の病状や日頃の言動など)がないかどうかといったことで判断されることになります。
なお、仮に有効に贈与された場合、遺産分割においては特別受益として、計算上その相続人が既に受け取り済みの相続財産という扱いになる可能性が大です。
生前贈与は、贈与契約書などがなく口頭でなされた場合も、有効と考えられるようです。