相続

弁護士監修記事 2017年08月10日

後見、保佐、補助…「法定後見」を利用するための手続きの流れ

法定後見制度とは、判断能力がない、あるいは、不十分な人が、経済的な不利益を受けたりすることがないよう法律でもって保護する制度であり、判断能力の程度によって、「成年後見」「保佐」「補助」という3種類が用意されています。 法定後見制度を利用するときには、親族らが家庭裁判所に申立てをして、審判を得る必要があります。標準的なケースでは、申立てから審判が確定するまで、おおむね4か月以内です。 ここでは、法定後見の手続の流れや、申立てに必要となる書類などについて詳しく紹介します。

目次

  1. 法定後見制度の利用法
    1. 法定後見制度を申し立てる手続きの流れ。
    2. 申立てできる人
    3. 必要書類
    4. 申立てに必要となる費用
  2. 後見開始までの流れ
    1. 審理手続
    2. 審判
    3. 審判の確定・告知
    4. 不服申立て(即時抗告)
    5. 成年後見等登記

法定後見制度の利用法

法定後見制度とは、知的障害、精神障害、認知症などが理由で、判断能力がないときや不十分なときに、その人が不利益を受けないよう、第三者がサポートしながら本人を保護する制度です。 この法定後見制度を利用するためには、本人の住所地(住民登録してある場所)を管轄する家庭裁判所に「後見開始の審判」などを申し立てる必要があります。 どの家庭裁判所に申し立てればよいかについては、裁判所のHPで確認できます。

法定後見制度を申し立てる手続きの流れ。

この申立てをするときには、後見・保佐・補助のどの制度を利用したいかによって、準備する内容が異なります。

後見の場合

「後見」の場合は、後見人に、法律上当然に広い権限が認められるので、後見開始の審判を求めるだけで、特に他の審判を申し立てる必要はありません。

保佐の場合

「保佐」は、成年後見人と違い、すべての法律行為について最初から代理権を認められているわけではありません。 お金を他人に貸す、高価な財産を売買することなど、法律に定められた一定の行為について同意する権利が認められています。 「同意権」とは、本人が契約などをするときに、その行為が本人にとって不利益でないかを検討して、問題がなければ同意する権限です。 同意していないに本人がこれらの法律行為をおこなった場合は、その契約を取り消すことができます。 そのため、保佐人に代理権を与えるためには、保佐開始の審判の申立てとは別に、「代理権付与の審判」を申し立てる必要があります。

補助の場合

「補助」の場合、補助開始の審判を求めただけでは、補助人に代理権や同意権といった検眼は与えられません。 そのため、具体的にどのような権限を与えるかについては、別途申立てを行い、家庭裁判所の審判で決める必要があります。 たとえば、補助人に代理権を与えるときには、「代理権付与の審判」の手続が必要となりますし、同意権を与える場合には「同意権付与の審判」の手続が必要となります。 そして、代理権や同意権が及ぶ法律行為の範囲についても、家庭裁判所の審判の中で決めていきます。

申立てできる人

成年後見制度に関する申立ては、本人自ら行うことができます。 しかし、そもそも本人の判断能力がない場合や不十分な場合などに利用する制度であるため、本人が申立てをすることができないケースもあります。 そのため、本人に限らず、配偶者、4親等内の親族、成年後見人等、任意後見人、成年後見監督人などが申し立てることもできます。 親族がいない人や、親族による申立てが難しい場合には、市区町村長、検察官が申立てをすることができます。 親等

必要書類

法定後見制度の申立てには、以下の書類が必要となります。 それぞれの状況によって、必要となる書類は異なりますので、どんな書類が必要になるかについては、弁護士などの専門家に相談するか、家庭裁判所に問い合わせてみましょう。

申立書類・申立書
・申立事情説明書
・親族関係図
・本人の財産目録とその資料
(不動産登記簿謄本(全部事項証明書)、預貯金通帳のコピー等。)
・本人の収支状況報告書とその資料(領収書のコピー等。)
・後見人等候補者事情説明書
・親族の同意書

戸籍謄本・本人と後見人等候補者(本人と後見人等候補者が、同一戸籍の場合には1通で可)

住民票(世帯全部、省略のないもの)・本人と後見人等候補者(本人と後見人等候補者が、同一戸籍の場合には1通で可)

登記されていないことの証明書・本人が成年被後見人、被保佐人等に該当しないことの証明

診断書診断書、診断書付票を主治医等に作成依頼する

愛の手帳の写し知的障害の方が各種サービスを円滑に受けるための療育手帳のこと

申立てに必要となる費用

申立てのときに必要となる書類は、それぞれの状況によって異なりますので、それに伴って費用も変わってきます。 ここでは、標準的なケースで必要となる費用についてご紹介します。

申立手数料

申立手数料は、1件につき800円かかります。この手数料は収入印紙で納めます。 代理権付与の審判や同意権付与の審判を行う際には、それぞれ手続の手数料として、そのたびに800円かかることになります。

登記手数料

後見等が開始された後は、裁判所が登記するために2,600円の登記手数料がかかります。

連絡用の切手

切手の費用は各裁判所によって異なりますが、3,000円~5,000円である場合が多いようです。

鑑定料

後見開始審判申立事件や保佐開始審判申立事件では、鑑定が行われることもあります。 鑑定費用はケースバイケースですが、50,000円~100,000円は見積もっておくと良いでしょう。なお、鑑定費用は、あらかじめ家庭裁判所に納めておく必要があります。

後見開始までの流れ

後見等の申立てがなされると、審理が始まり、家庭裁判所の調査官が、本人の意向、成年後見人などの候補者の適性などを調査します。 審判確定までにかかる期間は、それぞれの事情によって異なりますが、おおむね4か月以内です。

審理手続

審理では、調査官による面接や調査、親族への問い合せにより、事実関係を確認します。

面接(申立人、後見人等候補者など)

申立てを行うと、調査官が申立人と面接して、申立てまでの事情、本人の生活状況、判断能力、財産状況、本人の親族の意向などについてヒアリングを行います。 申立て時には「財産目録」と「収支状況報告書」を提出する必要がありますが、これらの内容についてもヒアリングされます。 調査官と成年後見人等候補者との面接においては、後見人等候補者事情説明書に基づいて、欠格事由の有無、適格性に関する事情を確認されます。

本人調査

本人の意思を尊重するため、家庭裁判所で本人と面接して、陳述を聴取することがあります。補助や保佐で代理権を与えるときには本人の同意が必要になるため、この手続きをするときに同時に同意の確認も行われます。 本人が家庭裁判所に行くのが困難なケースでは、家庭裁判所の担当者が本人の元に出向いてくれます。

親族への照会

書面等で、本人の親族に、申立ての概要や成年後見等の候補者の氏名を伝えて、意向を確認することがあります。

鑑定

鑑定は、本人の判断能力がどの程度あるのか、回復する見込みがあるのかなどを医学的な見地から判定するために行われます。 医師の診断書の内容などから、明らかに後見相当と判断される場合には、鑑定が省略されることもあります。 後見、保佐、補助を含めた法定後見制度において、鑑定が実施されるのは10%程度です。 最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況 ―平成28年1月~12月~」参照

審判

調査や鑑定が終了すると、家庭裁判所は後見等の開始の審判をして、申し立てられた類型(後見・保佐・補助)や、それに伴う同意権・取消権・代理権を成年後見人等に与えることが適切かどうかを検討し、最も適任と思われる人を選びます。 この場合には、複数の後見人が選ばれることもありますし、後見人等を監督する監督人を選ぶこともあります。

必ずしも後見等が開始されるわけではなく、第三者のサポートは不要であると家庭裁判所が判断する場合もあります。

審判の確定・告知

審理の結果が確定すると、その内容を書いた審判書が本人、成年後見人等に選ばれた人と申立人に郵送されます。 成年後見人等が審判書の謄本を受領して2週間が経過すると審判が確定して、後見・保佐・補助が始まります。

不服申立て(即時抗告)

審判の内容に不服があるときには、上記の2週間以内に不服申立てを行うことができます。 この場合の不服とは、後見開始・保佐開始・補助開始の審判そのものに対する不服で、成年後見人等の人選について不服とすることはできません。 この異議申立てを「即時抗告」といい、異議申立てがないと審判が確定します。

成年後見等登記

審判が確定すると、その後見等がどのような内容であるか公示するために、家庭裁判所の書記官から法務局に対して、審判内容が通知され、法務局で登記されます。 これを「成年後見登記制度」といいます。登記された内容は、請求に応じて発行される登記事項証明書に記載されます。 保佐人の権限に代理権を加える代理権付与の審判や、保佐人の同意権の範囲についての審判を行った場合にも、同じ手続きで登記されます。 法定後見の内容に変更があった場合に、家庭裁判所が法務局に通知するわけではありませんので、本人や関係者が、その変更内容を法務局に通知する必要があります。これを変更の登記申請といいます。 終了の登記申請手続が行われると、登記の記録は、閉鎖登記ファイルに記録されます。

本人が死亡したときも、法務局に対して後見等終了の登記申請を行わなければなりません。この後見等終了の登記申請は、成年後見人等や成年後見監督人等が行わなければなりません。

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