相続財産

弁護士監修記事 2019年07月05日

貸し出しているマンションを相続する場合の評価方法

亡くなった家族が所有していたマンションを他人に貸し出していた場合、そのマンションも遺産として相続します。 相続税の支払いが発生するケースでは、亡くなった家族がマンションを自宅用に使っていた場合と異なる方法で計算するので、計算方法を確認しておきましょう。 この記事では、貸し出しているマンションの評価方法を詳しく解説します。

目次

  1. 貸し出しているマンションの価値を評価する場合
    1. 相続税を支払うかどうかを判断するためにも評価する
  2. 貸し出しているマンションの価値の評価方法
  3. 「貸し出しているマンション1戸分の建物」の相続税評価額を調べる
  4. 「貸し出しているマンション1戸分の土地」の相続税評価額を調べる
    1. 「自宅用マンション1戸分の土地の相続税評価額」の計算方法
    2. 借地権割合の確認方法
    3. 「貸し出しているマンション1戸分の土地」の相続税評価額を計算する
    4. 「貸し出しているマンション1戸分の建物」の相続税評価額を合計する
  5. 「小規模宅地特例」が適用されるか確認する

貸し出しているマンションの価値を評価する場合

亡くなった家族(被相続人)が分譲マンションを他人に貸し出していた場合、相続人はそのマンションも遺産として相続します。 遺産の分け方によっては、「貸し出しているマンションをどのように評価するか」が重要になってきます。 たとえば、父親が被相続人、長男と次男が相続人で、亡くなった父がマンションを貸し出していたケースを考えて見ましょう。 長男がそのマンションを相続し、引き続き貸し出したいと考えている場合、マンション自体は長男が受け継ぎ、次男はその住宅の価値の半分をお金の形で受け取るという形で決着をつけることができます(「代償分割(だいしょうぶんかつ)」といいます)。 このような分割の方法を取る場合、マンションをどのように評価するかによって、マンションを受け継がない子どもが受け取る金額が変わってきます。

相続税を支払うかどうかを判断するためにも評価する

遺産の総額が一定の基準を超えた場合「相続税」を支払う必要があります。 簡単に言えば、すべての遺産の価値の合計が、「基礎控除額(きそこうじょがく)」という基準を超えると、相続税を支払う必要があります。 相続税を支払う必要があるかどうかを判断するためにも、貸し出しているマンションの相続税評価額を計算して、その価値を把握しておく必要があります。 そのため、貸し出しているマンションをどのように相続するかについて、相続人同士で問題にならなくても、マンションの評価方法は理解しておいた方がよいでしょう。

貸し出しているマンションの価値の評価方法

貸し出しているマンションの価値を評価するとき、不動産業者や不動産鑑定士など、不動産の専門家に相談する方法があります。 不動産業者には無料で査定を行っている業者もあり、貸し出しているマンションの価値の目安を確認することができます。 より正確な価格を把握したい場合は、「不動産鑑定士」に査定を依頼することも可能です。ただし、数十万円、あるいはそれ以上の費用がかかる可能性があるので注意しましょう。 また、相続税を計算するときの評価方法で算出した価格(相続税評価額)を参考にしてもよいでしょう。 マンションを所有することは、「建物の一部を所有する」という感覚の方もいるかもしれませんが、正確には、土地と建物どちらも所有しているということになります。 そのため、貸し出しているマンションの相続税評価額は、「1戸分の建物の相続税評価額」と、「1戸分の土地の相続税評価額」を足して計算します。

マンションの土地の部分(底地(そこち)といいます)については、所有権ではなく、地上権や賃借権などが設定されている場合もあります。

「貸し出しているマンション1戸分の建物」の相続税評価額を調べる

「貸し出しているマンション1戸分の建物の相続税評価」は、マンションの住戸部分の「固定資産税評価額」から「借家権の価値」を引くことで算出します。 固定資産税評価額は所有者に年1回、市町村から送られてくる「固定資産税納税通知書」(課税明細書)で確認できます。 課税明細書の「家屋」や「建物」の項目にある「価格」や「評価額」と記載されている部分の価格が、固定資産税評価額にあたります。 借家権の価値は、固定資産税評価額に「借家権割合」という数値をかけることで算出できます。 借家権割合は国税庁により一律30%と定められています。 「貸し出しているマンション1戸分の建物の相続税評価」は、以下のように計算することになります。

貸し出しているマンション1戸分の建物の相続税評価固定資産税評価額 − (固定資産税評価額 × 30%) = 貸し出しているマンション1戸分の建物の相続税評価

この式をより簡単にすると以下のように整理できます。 固定資産税評価額 × 70% = 貸し出しているマンション1戸分の建物の相続税評価 ここでは、固定資産税評価額が3000万円だったとしましょう。相続税評価額は2100万円(3000万×0.7)となります。

「貸し出しているマンション1戸分の土地」の相続税評価額を調べる

「貸し出しているマンション1戸分の土地の相続税評価額」を計算するときは、まず、相続するマンションを、被相続人が自宅用にしていたと仮定して、「自宅用マンション1戸分の土地の相続税評価額」を先に算出する必要があります。 「自宅用マンション1戸分の土地の相続税評価額」を算出したら、次の2つの数値も使って「貸し出しているマンション1戸分の土地の相続税評価額」を計算します。

  • 借地権割合
  • 借家権割合(30%)

具体的な計算式は、次の通りです。

貸し出しているマンション1戸分の土地の相続税評価額自宅用マンション1戸分の土地の相続税評価額 - (自宅用マンション1戸分の土地の相続税評価額 × 借地権割合 × 借家権割合) = 貸し出しているマンション1戸分の土地の相続税評価額

まずは、「自宅用マンション1戸分の土地の相続税評価額」を計算する方法について説明します。

「自宅用マンション1戸分の土地の相続税評価額」の計算方法

自宅用マンション1戸分の土地の相続税評価額の計算するために、以下の点を確認しておきましょう。

  • マンションがある土地の1㎡あたりの価格(路線価)
  • 土地の形状などに応じた補正率
  • マンションの敷地全体の面積(地積)
  • マンションの全体の延べ床面積のうち、自分が専有している延べ床面積が占める割合(敷地権割合)

自宅用マンション1戸分の土地の相続税評価額は、これらの数値をかけることで算出できます。

自宅用マンション1戸分の土地の相続税評価額路線価 × 補正率 × 土地の面積 × 敷地権割合 = 自宅用マンション1戸分の土地の相続税評価額

「地積」と「敷地権割合」を確認する

「地積」「敷地権割合」「登記簿事項証明書(登記簿謄本)」で調べることができます。

「登記事項証明書」の取得方法

「登記事項証明書」は法務局に申請して取得します。申請書の雛形と記載例は法務局のホームページからダウンロードできます。 登記事項証明書の申請書の雛形と記載例は、この記事の一番下にある関連リンクから確認することができます。 申請は被相続人の不動産がある地域を担当する法務局だけでなく、全国の法務局で手続きが可能です。 オンラインで申請することもできます。オンラインでの申請方法については、この記事の一番下にある関連リンクから確認できます。 記事項証明書の申請には、以下の手数料がかかります。

窓口で申請して窓口で受け取る 600円
オンラインで申請して郵送してもらう 500円
オンラインで申請して窓口で受け取る 480円
「登記事項証明書」の見方

以下の画像は、法務省のホームページで紹介されている「登記事項証明書」の見本の一部です。 出典:法務省ホームページ(説明のために画像を加工しています) この画像では、地積が350.76㎡で、敷地権割合は4分の1となっています。

「路線価」の確認方法

路線価は、国税庁の 「路線価」に関するWebサイトで確認できます。「路線価」に関するWebサイトは、この記事の一番下にある関連リンクから確認することができます。 まず、国税庁の「路線価」に関するWebサイトのトップページから、相続するマンションがある都道府県を選択します。 ここでは例として「東京都」を選択します。 出典:国税庁ホームページ(説明のために画像を加工しています) 都道府県を選択すると、以下の画像のようなページが表示されるので、「路線価図」という項目をクリックします。 出典:国税庁ホームページ(説明のために画像を加工しています) 次に、市区町村の一覧が表示されるので、相続するマンションがある市区町村を選びます。 市区町村を選んでいくと、道路に数字が書かれた地図が表示されます。 この地図が「路線価図」です。道路に書かれた数字が、その道路に面する土地の1㎡あたりの価格(路線価)です。 路線価は千円単位で表示されているので、たとえば、道路に「300」と書かれていれば、その道路に面した土地の1㎡あたりの価格は、30万円(30×1000)ということになります。

「路線価」がない地域は「評価倍率」で計算する

相続するマンションがある地域に路線価がない場合があります。その場合は「評価倍率」という別の数値を使って計算します。 「評価倍率」を使った計算方法は、後ほど説明します。

「路線価」を使った計算例

国税庁のホームページで紹介されている次の例を使い、自宅用マンション1戸分の土地の相続税評価額を計算してみましょう。 出典:国税庁ホームページ これは、「商業」「工場」「住宅」など土地の用途に応じた区分のうち、「普通商業・併用住宅地区」という区分の土地の道路に面した700平方メートルの土地です。道路からの奥行きが35メートルあります。 この土地に、相続するマンションが建っているとします。 ◯で囲まれた「300」という数値が路線価です。このケースの路線価は、1㎡あたり30万円(300×1000)ということになります。 補正率は、土地の種類と奥行きの長さによって変わってきます。 補正率は、国税庁のホームページ上で、次のような詳細な対応表(奥行価格補正率表)が公開されています(該当する部分のみ抜粋)。

奥行きの長さ/土地の区分 普通商業・併用住宅地区 普通住宅地区
4m未満 0.9 0.9
4m以上6m未満 0.92 0.92
6m以上8m未満 0.95 0.95
8m以上10m未満 0.97 0.97
10m以上12m未満 0.99 1
12m以上14m未満 1 1
14m以上16m未満 1 1
16m以上20m未満 1 1
20m以上24m未満 1 1
24m以上28m未満 1 0.97
28m以上32m未満 1 0.95
32m以上36m未満 0.97 0.93
36m以上40m未満 0.95 0.92

奥行価格補正率表は、この記事の一番下にある関連リンクから確認することができます。 相続するマンションの土地は、奥行きが35メートルあり、「普通商業・併用住宅地区」なので、補正率は「0.97」になります。 相続するマンションの部屋に「10分の1」の敷地権割合が設定されている場合、以下のような計算になります。 30万 × 0.97 × 700㎡ × 1/10 = 2037万円 この数字に、マンション1戸分の建物の相続税評価額をプラスした数字が、分譲マンションの相続税評価額になります。

補正率は、この他土地の形状などさまざまな条件で変動する可能性があり、一般の方が自力で正確な補正率を算出することが困難なケースもあります。計算に不安を感じた場合は、弁護士などの専門家に依頼することを検討してもよいでしょう。

「評価倍率」を使って計算する

相続するマンションがある地域に路線価がない場合、「評価倍率」という数値を使って計算します。 具体的には、「マンションの敷地全体の固定資産税評価額」評価倍率敷地権割合をかけることで計算できます。

自宅用マンション1戸分の土地の相続税評価額マンションの敷地全体の固定資産税評価額 × 評価倍率 × 敷地権割合 = 自宅用マンション1戸分の土地の相続税評価額

マンションの敷地全体の固定資産税評価額は、課税明細書の「土地」の項目にある「価格」や「評価額」と記載されている部分の価格が該当します。

評価倍率の確認方法

評価倍率も国税庁の「路線価」に関するWebサイトで確認できます。 まず、路線価を確認するときと同様に、トップページから相続するマンションがある都道府県を選択します。 ここでは例として「東京都」を選択します。 出典:国税庁ホームページ(説明のために画像を加工しています) 次のページで「評価倍率表」という項目にある「一般の土地等用」をクリックします。 出典:国税庁ホームページ(説明のために画像を加工しています) 次に、市区町村を選択する画面になるので、相続するマンションがある市区町村を選択します。そうすると、その市区町村の「評価倍率表」が表示されます。 ここでは「八王子市」を選択します。 出典:国税庁ホームページ(説明のために画像を加工しています) 「評価倍率表」から相続するマンションがある地域を検索し、該当する地域の「宅地」の欄に書かれている数字を確認しましょう。その数字が評価倍率です(下の画像では「1.1」)。 出典:国税庁ホームページ(説明のために画像を加工しています) 該当する地域に、数字ではなく「路線」と書かれていれば路線価が設定されているはずなので、「路線価図」を確認してみましょう。

「評価倍率」を使った計算例

以下のマンションを例に、1戸分の土地の相続税評価額を計算してみましょう。

  • マンションの敷地全体の固定資産税評価額=8000万円
  • 評価倍率=1.1
  • 敷地権割合=4分の1

計算はマンションの敷地全体の固定資産税評価額に、評価倍率と敷地権割合をかけるので、以下のような式になります。 8000万 × 1.1 × 1/4 = 2200万円

借地権割合の確認方法

借地権割合は、国税庁の「路線価」に関するWebサイトで確認できます。「路線価図」にある路線価を示す数字の横のアルファベットが借地権割合を示しています。 アルファベットと借地権割合は以下の表のようになっています。

アルファベット 借地権割合
A 90%
B 80%
C 70%
D 60%
E 50%
F 40%
G 30%

「路線価」がない地域では、下の画像のように、評価倍率表にある「借地権割合」という項目に数値が記載されています。 出典:国税庁ホームページ(説明のために画像を加工しています)

「貸し出しているマンション1戸分の土地」の相続税評価額を計算する

路線価方式で1戸分の土地の評価額を算出した先程の例の土地に、賃貸中のマンションがあると仮定して、具体的に計算してみましょう(敷地権割合は10分の1)。 出典:国税庁ホームページ 「C」の借地権割合は70%です。前述のように、借家権割合は一律30%になります。 2037万 - (2037万 × 0.7 × 0.3) = 1609万2300円

「貸し出しているマンション1戸分の建物」の相続税評価額を合計する

最後に、先ほど算出した「貸し出しているマンション1戸分の建物」の相続税評価額(2100万円)と、「貸し出しているマンション1戸分の土地」の相続税評価額(1609万2300円)を合計します。 2100万円 + 1609万2300円 = 3709万2300円 これが、賃貸していたマンションの相続税評価額になります。

「小規模宅地特例」が適用されるか確認する

「小規模宅地特例」とは、一定の条件をクリアすると、マンションの相続税評価額のうち、「1戸分の土地の相続税評価額」を最大で80%減額してもらえる制度です。 遺産の合計額が基礎控除額を超えている場合でも、小規模宅地特例によりマンションの評価額が引き下げられ、その結果、遺産の合計額が基礎控除額を下回れば、相続税を支払う必要がありません 「小規模宅地特例」が適用されるか確認しましょう。 小規模宅地特例がどんな場合に利用できるかは、この記事の下にある関連記事で確認できます。

  • 関連リンク

法務局:「登記事項証明書」の申請書の雛形と記載例 国税庁:「路線価」に関するWebサイト 国税庁:奥行価格補正率表

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