生前贈与が「特別受益」となるのはどんな場合なのか【弁護士Q&A】

兄妹のうち一人だけ生前に多額のお金を親から贈与されていたりした場合、親が亡くなって相続財産を分けるとき「不公平だ」と感じる相続人もいるでしょう。 そうした不公平感を解消するために、生前贈与された財産も加味して相続財産の分け方を考える仕組みがあります。「特別受益」といいます。 この記事では、どのような場合が特別受益にあたるのか、「みんなの法律相談」に寄せられた実際の相談事例と弁護士の回答を元に解説します。

目次

  1. 特別受益とは
  2. どんな場合に特別受益になるのか
  3. お金の贈与以外で特別受益にあたるケース
  4. まとめ

特別受益とは

alt 特別受益とはどのような仕組みなのでしょうか。

不公平すぎる相続。なんとかならないでしょうか?

相談者の疑問 遠方に住む母親が、近居の長男(兄)に土地・預金などで約2000万円を贈与していることが分かりました。

母親が亡くなったら兄と私には同額の生命保険金が入ることになっているようですが、私はそれだけしかもらえないのでしょうか?

贈与以外にも、孫の世話や生活費補助(別居なのに食費4万円/月を母が負担×20年)、家電や冠婚葬祭にかかる費用、生命保険の一時金が入った時に50万円ずつ数回のお小遣い、
災害被害で住宅ローンが滞った際に40万円ほど援助してもらっているようです。

こんなにも受け取る額が違うと、どうしても不公平感が拭えません。

木野 達夫の写真 弁護士の回答木野 達夫弁護士 民法903条1項は「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする」と規定しています。

これは、いわゆる「特別受益」と呼ばれるものです。

「特別受益」とは、たとえば、結婚の時にまとまったお金を持参金として持たせてあげたとか、住宅購入資金として相当の資金援助をしたなど、通常の生活の援助を超えるような特別の贈与をしていた場合に、相続人間の公平のために調整する制度です。

「特別受益」がある場合、まず、その分を遺産に加えて相続分の計算をします(「みなし相続財産」といいます)。

次に、「特別受益」をもらった人は、その計算で出た金額から「特別受益」分を控除します。それが「特別受益」をもらった人の取り分となります。

たとえば、2000万円が兄の「特別受益」として認められたとして、母親の死亡時の遺産が3000万円あったとすれば、3000万円+2000万円=5000万円が「みなし相続財産」となります。

これを法定相続分で分けると(仮に法定相続人がご相談者と兄だけであれば2分の1ずつですので)、1人2500万円となります。

次に、兄に関して、兄がもらった「特別受益」分2000万円を控除しますので、兄の取り分は2500万円−2000万円=500万円となります。

結果として、ご相談者の取り分は3000万円(死亡時に存在する遺産)−500万円=2500万円となります。

上記のケースのように、「兄弟の中で1人だけ親から多額のお金や土地を譲り受けた」など、他の相続人に比べて特別な利益を受けた相続人の取り分を減らして、相続人間の公平を図る仕組みが、特別受益です。 亡くなった人からお金などを贈与された相続人がおり、その贈与が特別受益と考えられる場合は、贈与として受け取った分を全ての相続財産の額にプラスして、相続分を計算することになります(持戻し)。

どんな場合に特別受益になるのか

alt 生前贈与されたお金がすべて特別受益にあたるわけではありません。では、どのような場合に特別受益になるといえるのでしょうか。

特別受益について教えてください

相談者の疑問 子ども3人のうち、同居中の1人に対してのみ行われた場合、以下の項目は特別受益と認められますか?

・同居中の家の建替え費用の援助(建替え後の建物名義は子)
・生活費の負担10年間(月15万から20万)、その後8年間(月12万)
・生命保険金500万(受取人は同居中の子を指定)

中井 陽一の写真 弁護士の回答中井 陽一弁護士 同居中の家の建替え費用の援助(建替え後の建物名義は子)
→特別受益にあたる可能性があります。

生活費の負担10年間(月15万から20万)、その後8年間(月12万)
→特別受益にあたる可能性があります。

ただし、同居していて子に面倒をみてもらっていることの対価だと判断されれば、特別受益にあたらない可能性もあり、ケースバイケースでしょう。

生命保険金500万(受取人は同居中の子を指定)
→生命保険金の額が、遺産総額の半分を超えるような場合でない限り、原則として生命保険金は特別受益にはあたりません。

家の建替え費用としてお金を贈与された場合は、特別受益にあたると考えられるでしょう。一方、親から生活費を受け取っていた場合は、必ずしも特別受益にあたるとは言い切れないようです。生命保険金は原則として特別受益にはあたりません。

お金の贈与以外で特別受益にあたるケース

alt お金はもらっていなくても、親が所有する不動産にタダで住まわせてもらっていたような場合は特別受益にあたるのでしょうか。

母名義の財産相続に関して

相談者の疑問 母、兄、私の親子3人です。私は母が亡くなった場合 母名義のアパートを売却して兄と私で折半できると思っていましたが、兄が私に、「母親のアパートを無料で貸してもらっているから、その分は生前贈与で差し引く」と言ってきました。

私が離婚し、生活に困っていることを知った亡き父が、「苦しいならアパートに住みなさい」と言ってくれたので、現在も住んでいます。父親の財産は兄がほとんど独り占めしています。

今までアパートに住んでいた家賃分を、相続分から引かれてしまうのでしょうか?

新保 英毅の写真 弁護士の回答新保 英毅弁護士 被相続人名義の建物に無償居住させてもらっていた場合、使用借権相当額の特別受益と評価される可能性はあります。

この場合、受益額を相続財産に持ち戻すことになります。

ただし、被相続人による持戻し免除の意思表示があったと評価される場合は、持ち戻しはしません。

この点については、母(ないし父)が相談者に無償居住を許諾した趣旨によるでしょう。父の相続に際し兄弟間に不公平があったことを踏まえこれを是正する趣旨を含んでいたのであれば、持ち戻し免除の黙示の意思表示があったと評価される場合もあるでしょう。

亡くなった親名義のアパートに無償で住んでいたことは、特別受益にあたる可能性があるようです。 特別受益にあたる場合、アパートの家賃に相当する分を持ち戻して相続分を計算することになります。 ただし、「持戻しをしなくてもよい」という意思を親が生前に示していたと考えられる場合には、アパートに無償で住んでいたことが特別受益にあたる場合でも、財産の取り分から差し引く必要はありません。 持戻しをしなくてもよいという意思を親が示していたかどうかは、アパートに無償で住まわせた理由などから判断されることになるでしょう。

まとめ

亡くなった親から生前受けていたお金の贈与が特別受益にあたると考えられる場合、贈与された分を全ての相続財産の額にプラスして、それぞれの相続人の相続分を計算することになります(持戻し)。 亡くなった親の名義の建物に無償で住まわせてもらっていたという場合も、特別受益にあたる可能性があります。この場合、家賃に相当する金額を持ち戻して相続分を計算します。 生命保険金は原則として特別受益にはあたりません。生活費も、親が、同居して面倒をみてくれている子どもにその対価として渡したと考えられる場合は、特別受益にはあたらないでしょう。

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