相続

弁護士監修記事 2019年01月10日

遺言の代わりに養子縁組する意味と養子縁組が相続税対策になるケース

法律で決められた相続人(法定相続人)ではない人に自分の財産を渡すための手段として、遺言書を残す以外にも、「養子縁組」という方法があります。 養子縁組は、あなたの財産を相続する人に相続税が生じそうな場合、節税としての意味を持つこともあります。 この記事では、養子縁組をする意味や、手続きについて、詳しく解説します。

目次

  1. 養子縁組の効果
    1. 相続税を節税できる場合がある
  2. 他の相続人の理解を得ておく
  3. 節税効果がある養子は2人まで
    1. 養子でも実の子どもとして数えられる場合
  4. 節税のみを目的にした養子縁組に注意
  5. 養子縁組の種類
  6. 普通養子縁組の条件と手続き
    1. 普通養子縁組の条件
    2. 普通養子縁組の手続き

養子縁組の効果

法律で決められた相続人(法定相続人)ではない人に自分の財産を渡すための手段として、遺言書を残す以外にも、「養子縁組」という方法があります。 養子縁組をすると、今まで法律上の親子関係になかった人同士に、法的な親子関係が生じることになります。 法的な親子関係が生じると、養親が亡くなった際、養子は実の子と同じように、相続人となります。

相続税を節税できる場合がある

養子縁組をすることで、相続税を節税できることもあります。 相続税は、財産の総額が「基礎控除額(きそこうじょがく)」という基準を下回っている場合には発生しません。 基礎控除の金額は「3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」です。 つまり、養子縁組により法定相続人が増えると、基礎控除の金額も増えるので、相続税を節税できる場合があるのです。

基礎控除のほかに、生命保険金や死亡退職金にも非課税枠があり、法定相続人の数に応じて非課税となる額が増えます。

他の相続人の理解を得ておく

養子縁組をする場合は、他の法定相続人に説明して理解を得るようにしましょう。 他の相続人から見れば、養子縁組をすることは、法定相続人が増えて自分の相続分が減ることを意味します。 亡くなった後に養子の存在が判明すると、相続人が受け入れることができず、相続をめぐってトラブルになる可能性があります。 養子縁組をする場合は、養子縁組をする意図や財産の分け方について、相続人によく伝えておくようにしましょう。 生前に家族に伝えたくないような場合は、遺言書に残しておいてもよいでしょう。

節税効果がある養子は2人まで

相続税の計算をする上で、法定相続人として数えられる養子の数には限りがあります。 あなたに実の子どもが一人でもいる場合には、法定相続人として数えられる養子は1人までです。 実の子どもがいない場合には、2人まで養子を法定相続人として数えられます。

養子でも実の子どもとして数えられる場合

以下のようなケースに当てはまる人は、相続税の計算上、養子であっても実の子どもとして扱われます。 つまり、法定相続人にカウントできる養子の数に関する制限の対象外となります。

  • 特別養子縁組により養子となっている人
  • 配偶者(夫・妻)の実の子どもで、あなたの養子となっている人(配偶者の連れ子など)
  • 配偶者(夫・妻)との結婚前に、特別養子縁組により配偶者の養子となっていた人で、配偶者と結婚した後にあなたの養子となった人
  • 養子としてだけでなく、代襲相続により孫としても法定相続人となった人(祖父母と孫が養子縁組をしている場合など)

「養子としてだけでなく、代襲相続により孫としても法定相続人となった人」は、養子としての相続分と、孫としての相続分の両方を相続することができます。

節税のみを目的にした養子縁組に注意

これまで、養子縁組することで相続税の節税効果があることを説明してきましたが、節税のみを目的に養子縁組を考えている場合には注意が必要です。 節税のみを目的にした養子縁組は、「養子縁組の意思がない」という理由で裁判所が無効と判断する可能性があるからです。 たとえば、平成29年には、養子となった人が、相続人として財産を相続した後、数年後に養子縁組の離縁を家庭裁判所に申し立てたという事例があります。 家庭裁判所は、養子縁組が「相続税の負担軽減を図るため」にすぎないという理由で養子縁組を無効と判断しました(離縁の求めは却下しました)。 一方で、平成29年には、最高裁が「相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、ただちに『当事者間に縁組をする意思がないとき』に当たるとすることはできない」として、節税目的があっても、養子縁組はただちに無効にならないという判断を示しています。 しかし、もっぱら節税のみを目的とした養子縁組については、無効と判断される可能性はゼロとは言い切れないので注意しましょう。 また、相続税法には、養子縁組により相続税の負担を不当に減少させたと税務署が判断した場合には、養子を相続人としてカウントせずに相続税を計算するルールがあります。 実際に適用されるケースはあまりないようですが、こうしたルールがあることからも、もっぱら節税のみを目的にした養子縁組には注意が必要といえるでしょう。

養子縁組の種類

養子縁組には「普通養子縁組」「特別養子縁組」の2種類があります。 それぞれ、以下のような違いがあります。

普通養子縁組 特別養子縁組
養子縁組の成立 養親と養子の同意で成立 養親の請求に対し、家庭裁判所の決定により成立
(原則として実親の同意が必要)
養子の年齢制限 なし(養親より年下であること) 原則として6歳未満
養親の条件 成年であること 25歳以上で配偶者がいること
(配偶者が25歳以上の場合は20歳以上)
養子と実親の関係 継続する
(養子は実親の相続人になれる)
終了する
(養子は実親の相続人になれない)
手続きする場所 養親・養子の本籍地・住所地の市区町村役場 家庭裁判所
戸籍上の
表記
「養子」「養女」と記載される
(実親の名前も記載される)
「長男」「長女」などと記載される
(実親の名前は記載されない)

「特別養子縁組」は、実親では養育が難しいようなケースに、子どもの利益を守るために養子縁組が必要だと家庭裁判所が認めた場合に認められる制度です。 特別養子縁組が認められるためには、養子となる子どもと6か月以上暮らして生活状況のチェックを受けるなど、様々な要件があります。 特別養子縁組にはさまざまなハードルがあるため、相続のことも見据えながら養子を検討する場合、普通養子縁組をすることが一般的でしょう 以下では、普通養子縁組の条件と手続きについて解説します。

普通養子縁組の条件と手続き

普通養子縁組の条件

普通養子縁組の手続きを行うためには、以下のような条件を満たしている必要があります。

  • 養親が20歳以上であること
  • 養親より養子が年下であること(ただし、年下の叔父・叔母は、養子にはできません)
  • 配偶者の同意を得ている(結婚している人が養親・養子になる場合)
  • 養子が未成年の場合は、配偶者も養親になる(結婚している人が養親になる場合)
  • 養子が未成年の場合は、家庭裁判所の許可を得る(自分の孫や配偶者の連れ子を養子にする場合は不要)
  • 養子が15歳未満の場合は、法定代理人(親など)が養子縁組に承諾している

これらの条件を満たした上で、下記のような手続きを市町村役場で行います。

普通養子縁組の手続き

普通養子縁組の手続きは、市区町村役場で行います。 届出は養親と養子が行いますが、養子が15歳未満の場合は、養子の法定代理人(親など)が代わりに行います。 届出には以下のような書類が必要です。

  • 養子縁組の届出用紙(20歳以上の証人2人の署名・押印が必要)
  • 養親と養子の戸籍謄本
  • 養子と養親の印鑑(養子が15歳未満の場合は代理人の印鑑)
  • 本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)

届出用紙は市区町村役場で入手できます。 上記以外の書類が必要となる場合があるので、届け出る市区町村役場に確認しましょう。 また、自分の孫や配偶者の子供以外の未成年者と養子縁組をする場合は、家庭裁判所の許可が必要です。 許可を得る手続きについては、市区町村役場や家庭裁判所に問い合わせましょう。

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