遺言書の書き方

弁護士監修記事 2019年01月08日

自筆証書遺言の作成を詳しく解説l遺言が無効にならないための作成のポイント

「自筆証書遺言」は、自分の手書きにより作成する遺言書です。「時間や場所を選ばずに気軽に作成できる」「無料で作成できる」といったメリットがありますが、作成方法に誤りがあると無効になる可能性があります。

  • 自筆証書遺言のメリット・デメリット
  • 遺言書を無効にしないためのポイント
  • 遺言書の内容を考えるときのポイント

この記事では、これらの点について解説しています。

目次

  1. 自筆証書遺言とは
    1. 自筆証書遺言のメリット
    2. 自筆証書遺言のデメリット
  2. 自筆証書遺言の作成ルール
    1. 自分で遺言書の全文を書いている
    2. 日付がある
    3. 氏名がある
    4. 押印がある
    5. 1つの遺言書に2人以上の遺言が書かれていない
    6. 公序良俗に反していない
  3. 遺言書の内容を考えるときのポイント
    1. 財産の分け方はできるだけ「法定相続」の配分になるよう配慮する
    2. 法定相続分と異なる割合にする場合は「遺留分」に配慮する
    3. 全ての財産について分け方を指定する
    4. 「遺言執行者」を指定する
  4. 自筆証書遺言のイメージ
    1. 遺言書に訂正する部分がある場合
    2. 財産目録を作成する
    3. 作成した遺言書は作り直しができる

自筆証書遺言とは

遺言書にはいくつかの種類がありますが、一般的によく作られるのが、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類です。 このうち、「自筆証書遺言」は、自身が手書きで作成する遺言書です。 法律の専門家である「公証人」に依頼して作成する「公正証書遺言」に比べ、「時間や場所を選ばずに気軽に作成できる」「無料で作成できる」といったメリットがあります。 一方で、自筆証書遺言は、書式や作成方法などが厳しく決められているため、内容にもれがあったり、形式が間違っていると無効になってしまいます。 財産をどのように分けてほしいといった希望を書いていたとしても、そのとおりに実現することができなくなるということです。 遺言書が無効になった場合は、法律のルールに従って、あなたの財産を「誰が(法定相続人)」「どの程度(法定相続分)」相続するかという点が自動的に決められます。

自筆証書遺言のメリット

自筆証書遺言には以下のようなメリットがあります。

  • 場所や時間に制限なく、いつでも作成できる(公正証書遺言は公証役場で作成する)
  • 遺言書の内容を秘密にできる(公正証書遺言は証人が必要)
  • 作成費用がかからない(公正証書遺言は費用がかかる)

自筆証書遺言のデメリット

一方で、自筆証書遺言には、以下のようなデメリットがあります。

  • 法律の専門家(公証人)ではなく、自分で作成するため、無効になるリスクが高い
  • 自分で手書きしなければならないので、内容が多い場合は作成に手間がかかる
  • 遺言書を自宅に保管する場合は、紛失・偽造のリスクがある

自筆証書遺言の作成ルール

自筆証書遺言を作成する際は、以下の点を押さえましょう。

  • 自分で遺言書の全文を書いている
  • 日付がある
  • 氏名がある
  • 押印がある
  • 1つの遺言書に2人以上の遺言を書いていない
  • 公序良俗に反していない

それぞれのルールについて、解説していきます。

自分で遺言書の全文を書いている

自筆証書遺言が有効となるには、自分で遺言書の全文を書くことが必要です。 パソコンで作成したり、コピーしたり、点字などで書いたりしたような遺言書は、無効となります。 ただし、手書きの遺言書をカーボン紙で複写した場合は、筆跡鑑定であなたの筆跡を確認できるので、有効な遺言書となります。

日付がある

日付は、年月日まで特定できるように書くことが必要です。 「◯年◯月◯日」という書き方でなくても、他の情報と照らし合わせれば日付を特定できるような場合には有効です。 一方で、「◯年◯月吉日」という書き方は、具体的な日付がわからないので無効です。

日付の書き方の例 有効 / 無効
自分の80歳の誕生日 有効
自分の定年退職の日 有効
◯年◯月吉日 無効

氏名がある

氏名は、必ずしも戸籍上の氏名を書く必要はありません。通称や雅号、ペンネームでもよいとされています。

押印がある

押印は、必ずしも実印である必要はなく、認印でも構いません。指に朱肉をつけて用紙に指型を押す「指印」も有効です。 署名を絵のようにデザインした「花押」を、押印の代わりにした遺言書は、最高裁により無効と判断されています。 最高裁では、遺言書の本文には押印がなく、遺言書が入っていた封筒の封じ目に押印がされていた場合でも、有効と判断しています。 遺言書が数枚にわたる場合でも、そのうちの1通に押印していれば有効です。見開きページの間に押す契印(割印)も必ずしも必要ではありません。

1つの遺言書に2人以上の遺言が書かれていない

1つの遺言書に2人以上の遺言が書かれている場合、その遺言書は無効となります。 たとえば、夫婦が一緒に一つの遺言書を作成するようなケースです。

公序良俗に反していない

遺言書の内容が公序良俗に反している場合、その遺言書は無効となります。 簡単に言えば、社会常識的にみておかしな内容の遺言は無効ということです。 たとえば、不倫相手に財産を受け継がせるような内容の遺言書は、公序良俗に反するとして、無効となる可能性があります。

遺言書の内容が有効かどうか不安な場合は、弁護士などの専門家に相談するか、「公正証書遺言」の作成を検討してもよいでしょう。「公正証書遺言」は、法律の専門家である「公証人」が内容をチェックしながら作成してくれます。

遺言書の内容を考えるときのポイント

自筆証書遺言を作成するときのルールが理解できたら、次は、「どのような内容の遺言書にするか」を考えてみましょう。 具体的には、「誰に」「どの財産を」「どの程度」相続させたいかを考えます。 遺言書の内容を考えるとき、あなたが亡くなった後に、遺言書を読んだ家族が遺言書の内容に納得できるよう、以下のようなポイントに注意しましょう。

  • 相続させる割合は、できるだけ「法定相続分」に従う
  • 法定相続分と異なる割合にする場合は「遺留分」に配慮する
  • 全ての財産について分け方を指定する
  • 「遺言執行者」を指定する

財産の分け方はできるだけ「法定相続」の配分になるよう配慮する

遺言書では、財産の分け方を自由に決められますが、不公平な分け方だと、「自分は好かれていなかったのかもしれない」と思うなど、遺言書を読んだ家族が不満に感じるかもしれません。 家族が納得できる財産の分け方にしたい場合、できるだけ「法定相続」の配分になるよう配慮にすることを検討してもよいでしょう。 法定相続とは、遺言書を残さなかった場合に、「誰が」「どの程度の」財産を相続するかについて定めた法律のルールです。 法定相続のルールにより、財産を相続する人を「法定相続人」、相続できる割合を「法定相続分」といいます。 法定相続人以外の人に財産を残す場合や、法定相続分と大きく異なる割合にしたいと希望している場合は、そのような分け方にした理由を遺言書に書くことをおすすめします。 たとえば、「〇〇は身の回りの世話をしてくれたので、財産を多く残すが、周りのみんなは理解して欲しい」などと書いてあげるとよいでしょう。 法定相続のルールについては、この記事の一番下にある関連リンクから確認できます。

法定相続分と異なる割合にする場合は「遺留分」に配慮する

法定相続分と異なる割合で財産を残す場合は、「遺留分」に注意しましょう。遺留分とは、法定相続人の最低限の取り分です。 たとえば、法定相続人が妻と子どもの2人だとします。この場合、妻と子どもの遺留分はそれぞれ4分の1ずつです。 あなたが「妻にすべての財産を残す」という遺言書を作ったとしても、子どもは財産の4分の1については権利を主張できます。 このような事態を避けるために、あらかじめ遺留分に配慮した内容の遺言書を作るように気をつけましょう。 遺留分の具体的な計算方法については、この記事の一番下にある関連リンクから確認できます。

全ての財産について分け方を指定する

遺言書の内容を巡り、家族がトラブルにならないよう、全ての財産について、分け方を記載するようにしましょう。 たとえば、貯金と不動産、株式の財産があるにもかかわらず、遺言書で不動産の分け方だけを指定した場合です。 このような場合、指定されていない貯金と株式の分け方について、家族が考えなければならないので、家族同士でトラブルになるかもしれません。 また、相続させる割合を指定する場合も、合計が100%になるように指定しましょう。 たとえば、遺言書に「財産の60%を長男に相続させる」とだけ書いた場合、残りの40%の分け方をめぐり、家族が揉める可能性があるのです。 どうしてもこのような表現をしたい場合には、「その他の財産については、子どもたちで平等に分けてほしい」などと一言書いておくようにしましょう。

「遺言執行者」を指定する

遺言書では、その遺言書の内容のとおりに手続きをする人(遺言執行者)を指定できます。 遺言執行者を指定しない場合、以下のような手続きを、相続人が行なわなければなりません。

  • どのような財産があるかを確認し、一覧(目録)としてまとめる
  • 相続人は誰かを確定するため、相続人の戸籍謄本などを集める

遺言執行者は必ずしも指定する必要はありませんが、指定しておくことで、遺言執行者が相続に必要な手続きを行ってくれるため、相続人の負担を軽くすることができます。 遺言執行者には、相続人の中で財産を1番多くもらう人や、弁護士などの専門家を指定することが考えられます。

自筆証書遺言のイメージ

以下は、これまでの説明をもとに作成した自筆証書遺言のイメージです。 自分自身で遺言書を作成するときの参考にしてください。

遺言書に訂正する部分がある場合

書き間違いをししまったため、遺言書の一部に訂正したい部分がある場合には、次のことをする必要があります。

  1. 訂正箇所を二重線で消す
  2. 訂正箇所に押印する
  3. 訂正後の正しい言葉を書く
  4. 余白に訂正した箇所と字数を書く
  5. 余白に書いた字数の近くに署名する

これらのことをしていなければ、遺言書が無効になってしまう可能性があります。

財産目録を作成する

遺言書を作成するときに、「財産目録」も一緒に作ることを検討しましょう。財産目録とは、自分が現在、所有している財産の一覧表のことです。 財産目録を作っておくことで、どのような財産があるか、自分自身や、遺言書を読んだ人が簡単に把握できます。 また、下記の財産目録のイメージのように、財産ごとに番号をつけることで、遺言書に財産の詳細を書く必要がありません。 たとえば、「別紙財産目録の第2土地を〇〇に相続させる」と書くことができます。 しかし、財産目録を遺言書に添付する場合は、その財産目録も全文を自分で手書きし、署名・押印がなければ、遺言書が無効になってしまうので注意しましょう。

2019年1月13日以降は、財産目録を手書きする必要がなく、ワープロやパソコンなどで作成することが可能です。しかし、ワープロやパソコンなどで財産目録を作成した場合も、手書きの署名と押印が必要なことに注意しましょう。

作成した遺言書は作り直しができる

遺言書を作成した後に、遺言書の内容を変更したくなった場合は、すでに作成した遺言書を破棄して、新たに遺言書を作成することができます。

相続分の調整は、遺言書を書き直さなくても可能な場合がある

遺言書を作成した後に、各相続人に相続させる財産の割合を変更する可能性がある場合、財産となる銀行口座の数を、相続人の数に合わせておくことをおすすめします。 各口座の残高を調整することで、遺言書を書き直さずに、各相続人の相続分を変更できるからです。 たとえば、以下のような内容の遺言書を残したケースで考えてみましょう。

遺言書の記載例・A銀行の口座は妻〇〇に相続させる。
・B銀行の口座は長男〇〇に相続させる。
・C銀行の口座は次男〇〇に相続させる。

このような内容の遺言書を書いた後に、次男に相続させる財産の割合を減らし、長男の割合を増やしたいと考えたとしましょう。 次男に相続させる口座(C銀行)のお金を、長男に相続させる口座(B銀行)に移すことで、各相続人の相続分を変えることができます。 この方法であれば、遺言書を書き直す必要がありません。

遺言書を書いてから、新たな口座を開設した場合、亡くなった後に、その口座も財産として扱われます。新たな口座の分け方をめぐり、相続人がトラブルになる可能性もあるので、注意しましょう。

  • 関連リンク

あわせて読みたい関連記事

公正証書遺言を作成したいときはどのような手順を踏めばよいのか

公正証書遺言とは、法律の専門家である公証人に作成してもらう遺言書です。 * 公正証書遺言を作るメリット・デメリットは? * 公正証書遺言を作成するた...

解決までの流れ

解決までの全記事

弁護士に見積り依頼をする

複数の弁護士にまとめて見積り依頼
費用対処方針比べて選ぶことができます。

  • 弁護士費用がいくらかかるか知りたい
  • 弁護士の選び方がわからない
  • 弁護士が何をしてくれるか知りたい
一括見積りをはじめる無料

依頼前に知っておきたい弁護士知識

遺言を扱う弁護士を探す

遺言書の書き方に関する法律相談

  • 兄弟間での相続トラブル

    独身姉が両親の相続のやり直しを知人と税理士を連れ要求してきました。 弁護士にも相談している様子。 同居していた弟夫婦が両親を虐げ、預金を私物化、私達兄弟から自分は長年冷遇されてき...

    1弁護士回答
  • 土地の相続についてのご相談

    父と長女と長女の旦那(養子縁組済み) が同居しています 土地は父名義 家は同居の長女の旦那の名義です 父に対する日々の行いと長女の旦那の父へのDV未遂と盗撮と盗聴のため 長女と長女の旦...

    4弁護士回答
  • 親族間での家の賃貸について

    現在、父方の祖父母が共有で所有している部屋に、妻と2人で1年程前から住んでいます。 分譲マンションの一室で、私が入居する前は月12万円(同条件の賃貸の相場価格と思われます)で貸していま...

    1弁護士回答
  • 遺言書はどこまで記入するのてすか

    私は再婚した妻がおり子供がいません。 前妻との間には子供がおりますが連絡はとっておりません。 私の死後、妻が相続に困らないように、財産をすべて妻に残すように遺言書を作成しようかと...

    1弁護士回答
  • 不動産の相続と名義変更

    先日一人身の叔母が亡くなり、その叔母の財産を相続をした者です。私は甥にあたります。叔母の親、兄弟、子がすべて亡くなり、身寄りがなかったため甥の私がしばらく世話をしておりました。2...

    2弁護士回答

相談を絞り込む

遺言書の書き方の法律ガイド

関連カテゴリから解決方法を探す

弁護士に相談しようと思ったら…

弁護士に見積り依頼をする

複数の弁護士にまとめて見積り依頼

  • 最短3分で依頼完了
  • 依頼内容は非公開
  • 分野に詳しい弁護士から見積り依頼が届く
一括見積りをはじめる無料

依頼前に知っておきたい弁護士知識

相続のニュース

  1. 結婚式で起きた「祝儀空っぽ」事件 新郎激怒...
  2. 「ドン・ファン」全財産を田辺市に寄付と遺言...
  3. はあちゅうさんが「事実婚」発表、知っておき...
  4. 高級住宅街、高価な壺や布団を近所で預け合う...
  5. 富裕層に衝撃「相続税法改正」で節税の縛り強...
  6. 「預貯金」は遺産分割の対象…最高裁の初判断...
  7. 最高裁「預貯金は遺産分割の対象に」判例見直...