相続税

弁護士監修記事 2018年10月01日

延納と物納とはl相続税を支払うお金がない場合の対処法

相続税は、申告期限までに現金で一括で支払うのが原則です。しかし、様々な理由により現金での一括払いが難しいケースもあるでしょう。

  • 年払い(分割払い)にできる「延納」
  • 現金ではなく物を納める「物納」

この記事では、これらの手続きについて解説します。

目次

  1. 延納や物納を検討する
  2. 延納を利用できる条件
  3. 全額を年払いにできるわけではない
  4. 年払いにすると利子税がかかる
  5. 年払いにできる期間は原則5年以内
    1. 担保にできる財産
  6. 延納の申請方法
    1. 必要書類
    2. 期限までに提出できない場合
  7. 年払いでも支払いが難しい場合に物納を検討する
  8. 全額を物納できるわけではない
  9. 納める財産を自由に選べるわけではない
    1. 物納できない財産(管理処分不適格財産)
    2. 他に適当な財産がない場合に限り物納できる財産(物納劣後財産)
  10. 物納の申請方法
    1. 必要書類
    2. 期限までに提出できない場合
  11. 弁護士や税理士に相談する

延納や物納を検討する

alt 相続税の支払いが難しい場合に利用できる制度として、「延納」と「物納」があります。 延納とは、相続税の支払いを年払いにすることができる制度です。 物納は、延納により年払いにしても現金で支払いをすることが難しい場合に、現金ではなく遺産そのものを納めることができる制度です。 物納が利用できるのは延納が利用できる場合に限られるので、まずは延納を利用できるかどうかを検討しましょう。

延納を利用できる条件

alt 延納が利用できる条件は、次のとおりです。

  • 相続税額が10万円を超えること。
  • 現金での一括払いが難しい理由があること。
  • 担保を用意すること(ただし、延納の税額が100万円以下で、延納期間が3年以下の場合には、担保は不要です)
  • 相続税の納付期限までに、「延納申請書」など必要書類を税務署に提出すること。

全額を年払いにできるわけではない

延納が認められても、納めるべき相続税の全額を年払いにできるわけではありません。 alt alt 延納が認められる場合でも、期限までに現金で一括納付しなければならない部分があります。 期限までに現金で一括払いしなければならない部分は、相続税を支払う人が納付期限に有している現金や預貯金などから、家族を含めた3か月分の生活費と、事業を営んでいる場合には当面の運転資金を差し引いた残りの金額です。 延納が認められるのは、期限までに現金で一括払いをした残りの金額になります。

年払いにすると利子税がかかる

alt 延納が認められると、その期間中は、利息に相当する利子税を納める必要があります。 利子税の割合は、遺産に不動産がどの程度含まれているかによって決まります。

延納が認められた後でも、現金を用意できた場合には、残額を一括払いすることができます。一括払いをすれば、残りの期間の利子税を払う必要がなくなります。

年払いにできる期間は原則5年以内

alt 延納することができる期間は、原則として5年以内です。 遺産に含まれる不動産の割合が50%以上の場合には、最長で10年〜20年となる場合もあります。 延納できる期間には、上限があります。延納できる金額によって、次の年数を超えることはできません。

延納税額 上限年数
10万円 1年
20万円 2年
30万円 3年
40万円 4年
50万円 5年
60万円 6年
70万円 7年
80万円 8年
90万円 9年
100万円 10年
110万円 11年
120万円 12年
130万円 13年
140万円 14年
150万円 15年
160万円 16年
170万円 17年
180万円 18年
190万円 19年
200万円 20年

担保にできる財産

担保にできる財産には、次のようなものがあります。遺産だけでなく、相続人がもともと持っている財産や、他の相続人が持っている財産も担保とすることができます。

  • 国債、地方債
  • 社債その他の有価証券で税務署長が確実と認めるもの
  • 土地
  • 建物、立木、登記された船舶など(保険に加入しているもの)
  • 税務署長が確実と認める保証人の保証

ただし、次のような財産は担保とすることができません。

  • 法令上担保権の設定または処分が禁止されているもの
  • 違法建築、土地の違法利用のため建物除去命令などがされているもの
  • 共同相続人間で所有権を争っている場合など、係争中のもの
  • 売却できる見込みのないもの
  • 共有財産の持分(共有者全員が持分全部を提供する場合を除く。)
  • 担保に係る国税の附帯税を含む全額を担保としていないもの
  • 担保の存続期間が延納期間より短いもの
  • 第三者また法定代理人などの同意が必要な場合に、その同意が得られないもの

延納の申請方法

alt 延納をするには、相続税の申告期限までに、必要書類を税務署に提出します。提出先は、被相続人の住所地を担当する税務署です。 税務署により、延納の条件を満たしていると判断された場合には、延納が許可されます。反対に、延納の条件を満たしていないと判断された場合には、却下されたり、担保を変更するよう求められることがあります。

必要書類の提出が期限に遅れた場合、延納申請は却下されます。

必要書類

主な必要書類は、次のとおりです。

  • 相続税延納申請書
  • 金銭納付を困難とする理由書(相続税延納・物納申請用)
  • 担保目録及び担保提供書(財産の種類により用紙が異なります)
  • 不動産等の財産の明細書
  • 担保提供関係書類

これらの書類は国税庁のホームページからダウンロードすることができます。

延納の許可または却下は、原則として提出期限から3か月以内に行われます。担保などの状況によっては、最長で6か月かかる場合があります。

期限までに提出できない場合

期限までに担保提供関係書類を提出できない場合には、期限の延長を申請することができます。 期限の延長を申請するには、期限までに、延納申請書と一緒に「担保提供関係書類提出期限延長届出書」を提出します。 期限を延長できるのは、3か月までです。延長した期限までに書類を提出できない場合には、さらに「担保提供関係書類提出期限延長届出書」を提出することにより、最長で6か月まで延長することができます。

年払いでも支払いが難しい場合に物納を検討する

alt 延納をしても、現金での支払いが難しい場合には、物納を検討しましょう。 物納を利用できる条件は、次のとおりです。

  • 延納によっても現金での支払いが難しい理由があること。
  • 相続税の申告期限までに、「物納申請書」など必要書類を税務署に提出すること。
  • 現金の代わりに納めることのできる財産があること。

物納により財産を納付するまでの期間には、利子税がかかります。

全額を物納できるわけではない

物納が認められても、納めるべき相続税の全額を物納できるわけではありません。 alt まず、納めるべき相続税のうち、期限までに現金で一括払いをしなければならない部分があります。 期限までに現金で一括払いをしなければならない部分の残りが、延納が認められる部分です。 延納が認められる部分のうち、必ず延納(現金で年払い)をしなければならない部分があります。 物納が認められるのは、延納をしなければならない部分の残りです。 alt 延納(現金で年払い)しなければならない部分は、次のように計算します。

  • 1年間の収入見込額から、1年間の生活費と事業の運転資金を差し引いた額(1年間で納付できる資力)を計算する。
  • 1年間で納付できる資力に延納の年数を掛ける。さらに1年間の臨時収入を足す。…(a)
  • 1年間の臨時支出、3ヶ月分の生活費、3ヶ月分の事業の運転資金を足す。…(b)
  • (a)から(b)を引く。

納める財産を自由に選べるわけではない

alt 物納で納める財産は、相続税額の計算の基礎となった遺産の中から選びます。 遺産を選ぶ際には、次のような優先順位が決まっており、まず第1順位の財産の中から物納できる遺産がないかを検討します。 第1順位の財産がない場合や、特別の事情があると税務署長に認められた場合にのみ、第2順位の財産を選ぶことができます。

  1. 不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式など
  2. 非上場株式など
  3. 動産

これらの財産は日本国内に存在している必要があります。

遺産を国が引き取るときの価額は、原則として相続税の計算をした時にその遺産の評価をして決まった価額です。小規模宅地等の特例などの特例の適用を受けた遺産を物納する場合には、国が引き取る価額は、特例を適用した後の価額となります。 ただし、物納できない財産(管理処分不適格財産)や、他に適当な財産がない場合に限り物納できる財産(物納劣後財産)があり、このような財産は物納することができません。

物納できない財産(管理処分不適格財産)

物納できない財産(管理処分不適格財産)は、次のようなものです。

不動産

  • すでに抵当権などの担保権が設定されている不動産
  • 所有権などに争いがある不動産
  • 境界が明らかでない土地
  • 隣接する不動産の所有者などと訴訟で争わなければ通常の使用ができないと見込まれる不動産
  • 他の土地に囲まれて公道に通じない土地で、周りの土地を通る権利(囲繞地通行権)の内容が明確でないもの
  • 借地権が設定されている土地で、借地権の権利者が不明などの事情がある場合
  • 他の不動産と一体として利用されている(利用されるべき)不動産
  • 2人以上の共有となっている不動産
  • 耐用年数(所得税法の規定に基づいて定められている耐用年数をいいます。)を経過している建物(通常の使用ができる建物を除く)
  • 敷金返還などの債務を国が負担することとなる不動産
  • 国が引き取る価額に比べて、管理費や処分費が過大になると見込まれる不動産
  • 公序良俗を害するおそれのある目的や、社会通念上適切でないと認められる目的に使用されている不動産
  • 引渡しに際して通常必要とされる行為がされていない不動産
  • 地上権、永小作権、賃借権などが設定されている不動産で、その権利者が暴力団関係者などの場合

相続税の申告期限までに遺産分割が終わらない場合や、遺留分減殺請求が行われている場合には、遺産の所有権が誰にあるのかが確定していないので、そのような遺産は管理処分不適格財産となり、物納することができません。

株式

  • 譲渡に関して金融商品取引法その他の法令の規定により一定の手続が定められている株式で、その手続がとられていないもの
  • 譲渡制限株式
  • 質権その他の担保権の目的となっている株式
  • 権利の帰属について争いがある株式
  • 共有に属する株式(共有者全員がその株式について物納の許可を申請する場合を除く)
  • 暴力団員等によりその事業活動を支配されている株式会社又は暴力団員等を役員(取締役、会計参与、監査役及び執行役をいう。)とする株式会社が発行した株式

他に適当な財産がない場合に限り物納できる財産(物納劣後財産)

他に適当な財産がない場合に限り物納できる財産(物納劣後財産)には、次のようなものがあります。

  • 地上権、永小作権、耕作を目的とする賃借権、地役権、入会権が設定されている土地
  • 違反建築物とその敷地
  • 土地区画整理事業などが施行されている土地で、仮換地または一時利用地の指定がされていない土地
  • 相続税を支払う人が住んでいる、または事業に使っている建物とその敷地
  • 劇場、工場、浴場など、維持や管理に特殊技能を要する建物とその敷地
  • 建築基準法上の道路に2メートル以上接していない土地
  • 都市計画法の規定による都道府県知事の許可を受けなければならない開発行為の基準に適合しないときにおける開発行為にかかる土地
  • 都市計画法に規定する市街化区域以外の区域にある土地(宅地として造成することができるものを除く)
  • 農業振興地域の整備に関する法律の農業振興地域整備計画において農用地区域として定められた区域内の土地
  • 森林法の規定により保安林として指定された区域内の土地
  • 法令の規定により建物の建築をすることができない土地(建物の建築をすることができる面積が著しく狭くなる土地を含む)
  • 過去に生じた事件または事故などの事情により、正常な取引が行われないおそれがある不動産と、そのような不動産に隣接する不動産
  • 事業の休止をしている法人の株式(一時的な休止を除く)

物納の申請方法

alt 物納をするには、相続税の申告期限までに、必要書類を税務署に提出します。提出先は、被相続人の住所地を担当する税務署です。 税務署により、物納の条件を満たしていると判断された場合には、物納が許可されます。反対に、物納の条件を満たしていないと判断された場合には、条件付きで許可されたり、申請が却下される場合があります。

必要書類

主な必要書類は、次のとおりです。

  • 物納申請書
  • 金銭納付を困難とする理由書(相続税延納・物納申請用)
  • 物納財産目録(財産の種類により用紙が異なります)

これらの書類は国税庁のホームページからダウンロードすることができます。

物納の許可または却下は、原則として提出期限から3か月以内に行われます。物納申請財産が多数ある場合や、積雪などの気象条件により財産の確認ができない場合などには、最長で9か月かかる場合があります。

期限までに提出できない場合

期限までに物納財産目録を提出できない場合には、期限の延長を申請することができます。 期限の延長を申請するには、期限までに、物納申請書と一緒に「物納手続関係書類提出期限延長届出書」を提出します。 期限を延長できるのは、3か月までです。延長した期限までに書類を提出できない場合には、さらに「担保提供関係書類提出期限延長届出書」を提出することにより、最長で1年間延長することができます。

ただし、必要書類の中の「物納財産目録」については、提出期限を延長することができません。

期限を延長する場合、その期間の利子税がかかります。

弁護士や税理士に相談する

延納や物納の手続きを自身で進めていくことは難しい場合が少なくありません。 わからないことがある場合には、税務署だけではなく、弁護士や税理士などの専門家に相談して、アドバイスをもらうとよいでしょう。

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