相続税

弁護士監修記事 2018年12月04日

相続税評価額を最大80%減額する「小規模宅地特例」を利用できる場合とは

土地を相続するとき「高額な相続税を支払うことになるのではないか」と不安に感じる方もいるでしょう。 「小規模宅地特例」という制度を利用することで、土地の相続税評価額を最大80%減額することができます。

  • 小規模宅地特例はどのような制度か
  • 小規模宅地特例を利用できる条件

この記事では、これらの点について解説します。

目次

  1. 小規模宅地特例とは
    1. 80%減額される土地とは
    2. 2018年4月1日からルールの一部が変わった
  2. 小規模宅地特例を利用できる条件
    1. 特定居住用の土地を引き継ぐ場合
    2. 特定事業用・貸付事業用を引き継ぐ場合

小規模宅地特例とは

亡くなった家族(被相続人)が残した土地に住み続けたいと考えていても、相続税を支払うためのお金がなければ、土地や住宅を売却するということになりかねません。 相続税を支払うかどうかは、遺産の総額が「基礎控除額(きそこうじょがく)」を上回るかどうかで決まります。 そして、遺産の総額が高額になればなるほど、支払う相続税も高額になります。 そのため、遺産の評価額が減額されれば、そもそも相続税を支払わないですんだり、支払う相続税の額を低くおさえたりすることができます。 土地などの不動産は、他の遺産に比べて高額なことが一般的ですが、「小規模宅地特例」という制度を利用できれば、土地の相続税評価額を最大80%減額してもらうことができます。 小規模宅地特例を利用するためには、いくつかの条件をクリアする必要があります。詳しく確認していきましょう。

分譲マンションや被相続人が貸している土地を相続する場合も、特例を利用できます。被相続人が土地を借りていて、「借地権」を相続するときも特例の対象になります。

80%減額される土地とは

減額される割合は「居住用」や「事業用」など、「土地をどのように利用しているか」(土地の区分)によって異なります。 また、減額を受けられる土地の広さには上限があり、土地の区分に応じて異なる上限が定められています。

土地の区分 面積の上限 減額される割合
特定居住用(自宅の敷地) 330㎡まで 80%
特定事業用(商売用の敷地) 400㎡まで 80%
貸付事業用(賃貸用の敷地) 200㎡まで 50%

被相続人の自宅が建っている広さ400㎡の土地(相続税評価額5000万円)を相続するケースで考えてみましょう。 自宅が建っている土地なので、400㎡のうち、330㎡まで80%の減額を受けることができます(特定居住用)。計算式は次のようになります。 5000万円 × 330/400 × 0.8 = 3300万円 5000万円 - 3300万円 = 1700万円 小規模宅地特例適用後の相続税評価額:1700万円

2018年4月1日からルールの一部が変わった

「貸付事業用」の土地に関しては、2018年4月1日から、ルールの一部が変わりました。 被相続人が亡くなった日からさかのぼって3年以内に賃貸事業を開始した土地は特例を利用できないことになりました。 ただし、2021年3月31日までは暫定的なルール(経過措置)が設けられていて、2018年3月31日時点で賃貸事業が行われていれば、3年以内であっても特例の対象となるということになっています。

小規模宅地特例を利用できる条件

特例を利用するためには、満たさなければならない条件があります。条件は土地の区分によって異なりますので、確認しておきましょう。

特定居住用の土地を引き継ぐ場合

特定居住用の土地を相続する場合、特例を利用できる人は次の3種類に分けられます。

  • 被相続人の配偶者
  • 被相続人と同居していた親族(配偶者は除く)
  • 被相続人と別居していた親族(配偶者は除く)

ここでの「親族」というのは、法律でその範囲が定められています。被相続人からみて「配偶者・6親等内の血族・3親等内の姻族」が法律上の親族にあたります。

被相続人が養護老人ホームや障害者支援施設に入所していたなどの理由から、被相続人自身が自分の土地に居住していなかった場合でも、特例を利用できる可能性があります。特例を利用するための条件の詳細は、税務署などに確認しましょう。

6親等内の血族とは

「血族」とは、血縁関係のある人を意味します。 親等は少し特殊な数え方をします。まず、「子→親」の関係を「1親等」という単位で数えます。 たとえば、兄と妹の関係は「2親等」です。いったん親を経由し、兄→親(1親等)→妹(2親等)となるためです。つまり、兄弟姉妹・祖父母は2親等、おじ、おば、めい、おいは3親等です

3親等内の姻族とは

姻族配偶者の血族を意味します。 「被相続人→配偶者」の関係は親等にカウントしません。そのため、配偶者の親は、被相続人からみて、1親等の姻族ということになります。 配偶者の、祖父母と兄弟・姉妹は2親等の姻族、曽祖父母とおじ・おば、おい・めいは3親等の姻族です。 自分と配偶者との子どもや孫は血族にあたりますが、自分と血が繋がっていない配偶者の子どもや孫も姻族となります。

血族の配偶者も、同じ親等の姻族となります。たとえば、子どもの配偶者は1親等の姻族です。同様に、兄弟・姉妹の配偶者は2親等の姻族、おじ・おばの配偶者は3親等の姻族にあたります。

被相続人の配偶者には条件がない

被相続人の配偶者が特定居住用の土地を引き継ぐ場合、特例を利用するための条件はありません。

被相続人と同居していた親族が満たす必要がある条件

被相続人と同居していた親族が、特定居住用の土地を引き継ぐ場合、相続税の申告期限までその土地を所有し続け、家屋に住み続けることが条件となります。 申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月です。

特例により減額された相続税を納めた後、申告期限内に土地を手放してしまうと、特例で減額された分の税金を追加で納めなければならなくなるので注意しましょう。

被相続人と別居していた親族が満たす必要がある条件

被相続人と別居している親族(配偶者以外)は、必要な条件をすべて満たせば特例を利用することができます。 特例の利用に関しては、以下のように、被相続人が死亡したタイミングで条件が変わります。

2018年3月31日以前に被相続人が死亡した場合

次の1〜4の条件を満たす必要があります。

  • 別居している親族が、相続税の申告期限までその土地を所有すること【条件1】
  • 別居している親族が、日本国籍を持っており、国内に住所があること【条件2】
  • 被相続人に配偶者や「被相続人と同居していた親族」に該当する人がいない【条件3】
  • 別居している親族は、自分または配偶者が所有する国内の住宅に、被相続人が亡くなった日からさかのぼって3年間は住んでいない【条件4】
被相続人が死亡したのが2018年4月1日以降の場合

2018年4月1日から条件が追加されました。被相続人が死亡する前に住宅の名義を親戚に変更するなど、自分や配偶者が所有する家に住んでいない状況を意図的に作り、特例を利用しようとするケースを防止するためです。 具体的には、1〜4に加えて、次の2つの条件も満たす必要があります。

  • 別居している親族は、「3親等内の親族」や「特別の関係のある法人」が所有する国内の住宅に、被相続人が亡くなった日からさかのぼって3年間は住んでいない【条件5】
  • 別居している親族は、被相続人が亡くなった時点で、自分が住んでいる住宅を過去に所有したことがない【条件6】

ただし、追加された5〜6の条件には、2020年3月31日まで暫定的なルールが設けられています。2018年3月31日時点で1〜4の条件を満たしていれば、5と6の条件を満たす必要はありません。 条件が複雑なので、どのような場合に利用できないのか、いくつか具体例を以下にあげておきます。

相続税の申告期限内に相続した土地を売却した【条件1】

相続税の申告期限が終わるまでに、相続した土地の売却などを行った場合、1の条件を満たさないため、特例を利用できません。 相続税を納める段階では、特例により減額をされた額を支払うことができますが、減額された分の支払いを、税務署から改めて請求されることになります。

外国籍・外国に住所がある【条件2】

土地を相続する人が外国籍を有している、または外国に住所がある場合は、2の条件を満たしていないことになります。

被相続人の妻(夫)が健在、同居している親族がいる【条件3】

被相続人の配偶者が健在の場合や、他に同居している親族がいる場合は、3の条件を満たしません。 被相続人の配偶者や、同居している親族は、その土地を相続していれば、特例を利用できるはずだった人たちです。 こうした人達がいる場合、別居している親族が土地を相続する場合、特例を利用できません。

所有する家に現在も住んでいる【条件4】

土地を相続する人が、国内にある自分名義(配偶者名義)の住宅に相続の時点でも住んでいる場合、4の条件を満たさないことになります。

1年前から兄が所有する住宅に住んでいる【条件5】

たとえば、1年前から兄が所有する国内の住宅に住んでいる場合、「3親等内の親族が所有する国内の住宅に、被相続人が亡くなった日からさかのぼって3年間は住んでいない」という条件を満たさないことになります。

このほか、「特別の関係がある一定の法人」として、過半数の株式を保有している会社などがあたります。自分で判断できない場合は、税務署などに相談しましょう。

被相続人が亡くなる半年前に自宅を親族名義にし、その親族から借りる形で居住【条件6】

被相続人が亡くなる前に、住んでいた自宅を親族名義にし、その親族から借りる形で自宅に住み続けていたような場合、条件6を満たさないことになります。

特定事業用・貸付事業用を引き継ぐ場合

利用できる人

  • 配偶者
  • 6親等内の血族
  • 3親等内の姻族

利用するための条件

相続税の申告期限までその土地を所有し続け、事業を続ける必要があります。

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