相続財産

弁護士監修記事 2018年09月29日

遺産分割調停や審判の最中に被相続人の預金を引き出すための手続き

相続について、相続人同士の話合いでは解決できず、調停や審判の手続きを行うと、遺産の分け方が決まるまで、長いケースでは年単位の時間が可能性があります。 そうした場合、被相続人の収入で生計を立てるなどしていた相続人は、生活が苦しくなるケースもあるでしょう。 この記事では、調停・審判中に被相続人の預貯金を緊急的に引き出すことができる「仮分割の仮処分」について解説します。

目次

  1. 遺産分割がまとまるまでには長い時間がかかる場合がある
  2. 緊急的に被相続人の預貯金を引き出せる「仮分割の仮処分」とは
    1. 仮分割の仮処分が使えるケース
  3. 仮分割の仮処分を申し立てる手続き
    1. 申立てに必要な書類
    2. 申立て後の流れ
    3. 緊急的に引き出せる預貯金の額

遺産分割がまとまるまでには長い時間がかかる場合がある

alt 遺産分割協議がまとまらず、調停や審判に移行すると、遺産の分け方が決まるまでに数か月、場合によっては数年かかるケースもあります。 被相続人が亡くなったことを銀行が把握すると、被相続人の口座が凍結されるため、遺産の分け方が決まるまで、原則として被相続人の預貯金を引き出すことができなくなります。 そのため、被相続人の収入で生活していたような相続人は、生活が苦しくなる可能性があります。 このような状況に対応するため、「仮分割の仮処分」という手続きがあります。

緊急的に被相続人の預貯金を引き出せる「仮分割の仮処分」とは

alt 「仮分割の仮処分」とは、遺産分割調停や審判が行われている間でも利用できる手続きです。 遺産分割調停・審判の決着がついていない状態でも、裁判所に申し立てることで、被相続人の預貯金を緊急的に引き出すことができます。 預貯金はこれまで、遺産分割の対象ではなく、被相続人が亡くなることで、各相続人の法定相続分に応じて分割されるというのが判例(裁判所の判断)の考え方でした。 この考え方は、平成28年の最高裁判所の判断で、預貯金も遺産分割の対象であり、遺産の分け方が決まるまで相続人全員で共有ことになるという考え方に変更されました。 つまり、遺産の分け方が決まるまでは、各相続人はその預貯金を単独で使うことができなくなるということを明確に示したのです。 そのため、被相続人の収入で生活していたような相続人は、被相続人が残した預貯金を使えないと、生活が苦しくなってしまうという問題が生じる可能性があります。 このような問題に対応するため、平成28年の最高裁判所の判断では、「仮分割の仮処分」という手続きを活用することで、遺産分割前でも預貯金を引き出せる場合があることについても言及しました。

仮分割の仮処分が使えるケース

仮分割の仮処分は、主に以下のような場合に認められる可能性があります。

  • 被相続人から扶養を受けていた相続人の生活費のため
  • 葬儀費用や相続税など、相続に伴う費用を支払うため
  • 被相続人の債務を弁済するため

仮分割の仮処分は、被相続人の預貯金を引き出さなければ、相続人の生活が困難になる場合など、あくまでも緊急的に被相続人の預貯金を引き出せるようにするための措置です。相続人にある程度の貯蓄がある場合には、仮分割の仮処分を申し立てても認められない可能性があります。

仮分割の仮処分を申し立てる手続き

alt 仮処分の仮分割は、遺産分割調停・審判が行われている家庭裁判所に申し立てます。 申立てができるのは、遺産分割調停や審判を申し立てた人のほか、他の相続人や遺言書で「3分の1の遺産を与える」など割合で遺産を与えられた人(包括受遺者)なども申し立てることができます。

申立てに必要な書類

  • 申立書
  • 1000円分の収入印紙
  • 連絡用の郵便切手
  • 被相続人の生まれてから死亡するまでの戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票または戸籍附票
  • 遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書や固定資産評価証明書、預貯金通帳の写し、残高証明書、有価証券写しなど)

郵便切手は裁判所によって必要な額が異なる場合があるので、申し立てる裁判所に確認しましょう。

戸籍謄本や住民票、遺産に関する証明書は、調停・審判を申し立てた時に裁判所に提出した書類の写しを流用できる場合があるので、裁判所に確認しましょう。

このほか、仮分割の仮処分を申し立てる目的に応じた書類が必要です。 たとえば、相続人の生活費のためであれば、申立人や同居家族の収入と支出を示す資料(源泉徴収票、給与明細、確定申告書、家計収支表など)が該当します。 また、相続に伴う支払いや被相続人の債務の弁済が目的の場合は、申立人・同居家族の収入・支出に関する資料に加え、支払いや債務を証明する資料が必要になります。 このほかの資料も必要になる場合があるので、申し立てる裁判所に確認しましょう。

申立て後の流れ

裁判所は必要書類を確認すると、仮分割の仮処分を求める人などに対して意見聴取します。 意見聴取は裁判所が「審問期日」を開いて直接意見を聞くこともあれば、照会書などの書面を通じて尋ねることもあります。 審問期日のタイミングは大きく以下の3パターンがあります。

  • 調停・審判が行われる日と同じ日・同じ時間に開催し、調停・審判と同時進行で進める
  • 調停・審判が行われる日と同じ日に開催し、調停・審判とは別の時間帯に開く
  • 調停・審判とは別の日に開催する

緊急的に引き出せる預貯金の額

仮分割の仮処分によって取得できる財産の額は、その人の生活費が目的の場合は、数か月分から1年分ほどの額と考えらえています。ただし、仮分割の仮処分を利用したい人の法定相続分が上限となります。

仮分割の仮処分は平成28年の判例によって考え方が示されたばかりなので、今後の家庭裁判所による運用によって、手続きや取得額など、制度の仕組みが変わっていく可能性があります。

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