相続放棄手続き

弁護士監修記事 2018年09月28日

相続放棄l遺言書で指定された人が遺産を引き継ぐ権利を放棄をする方法

遺言書で指定されて遺産を引き継ぐことになったとしても、何らかの事情で遺産を相続したくないと考える人もいるでしょう。 そうした場合、遺産を引き継ぐ権利は放棄することができます。放棄の手続きは、「遺言書にどのように書かれているか」によって異なります。 この記事では遺言書により遺産を引き継ぐ人が、引き継ぐ権利を放棄するための手続きについて解説します。

目次

  1. 遺言書で指定された人は遺産を引き継ぐ権利を放棄できる
    1. 相続か遺贈かはどう判断するのか
  2. 遺贈の場合
    1. 特定遺贈の場合
    2. 包括遺贈の場合
  3. 相続の場合
    1. 特定の遺産だけを対象に相続放棄することはできない
  4. 「包括遺贈の放棄」「相続放棄」を行うための手続き
    1. 被相続人が亡くなってから3か月以内に手続きをする
    2. 放棄の手続きができる家庭裁判所と必要な書類

遺言書で指定された人は遺産を引き継ぐ権利を放棄できる

alt 被相続人は遺言書で、自分が指定した人に遺産を引き継がせることができます。 一方、遺言書で指定されても、何らかの事情でその遺産を引き継ぎたくないと考える人もいるでしょう。 このような場合、遺産を引き継ぐ権利を放棄することができます。 法定相続人に遺産を引き継がせることを「相続」といいますが、遺言書では、法定相続人以外の第三者にも遺産を「遺贈」という形で残すことができます。 遺言書で指定された遺産を引き継ぐ権利を放棄するための手続きは、遺言書に書かれている内容が、相続を意味するのか、遺贈を意味するのかということによって異なります。

相続か遺贈かはどう判断するのか

遺言書では、「●●に相続させる」「●●に遺贈させる」などといった文言の他にも、「残す」「わたす」「与える」などの文言で記載されていることもあります。 そのため、「相続させる」「遺贈させる」といった文言が明確に記載されていない場合、それが相続を意味するのか、それとも遺贈を意味するのか判断する必要があります。

  • 法定相続人に対して書かれている → 「相続」と解釈
  • 法定相続人以外の第三者に対して書かれている → 「遺贈」と解釈

一般的には、このように考えることができます。 ただし、法定相続人以外に対して「相続させる」と記載していたり、法定相続人に対して「遺贈する」と記載されていることがあります。 そうした場合は、遺言書の記載全体から、被相続人の意図を考える必要が出てきます。判断に迷う場合は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

遺贈の場合

alt 遺贈の場合、遺言書の内容が、特定の遺産を引き継がせる遺贈(特定遺贈)なのか、遺産の割合を示しているのか(包括遺贈)によって、放棄するための手続きが異なります。 たとえば、「自宅土地建物は甥の●●に残す」が特定遺贈で、「遺産の半分を内縁の妻の●●に残す」が包括遺贈です(「遺産はすべて●●に残す」といった遺贈の仕方もあります。「全部包括遺贈」といいます)。

特定遺贈の場合

法定相続人や遺言執行者に対して、引き継ぐ権利を放棄する意思を伝えます。 法定相続人などが複数いる場合には、そのうちの1人に意思を伝えれば足ります。 また、放棄の時期に制限はないので、いつでも放棄することができます。 一方、法定相続人などは受遺者に対して、一定期間内に放棄するかどうかを伝えるよう促すことができます。 この期間内に放棄する意思を伝えなければ、特定遺贈を承認したと扱われるので注意しましょう。

包括遺贈の場合

「包括遺贈の放棄」という手続きを家庭裁判所で行う必要があります。

包括遺贈の場合、遺産の一部だけを受け取るということはできません。指定された割合の遺産をすべて引き継ぐか、完全に放棄するか、どちらかを選ぶことになります。

相続の場合

alt 遺言書の内容が相続の場合は、「相続放棄」という手続きをする必要があります。

特定の遺産だけを対象に相続放棄することはできない

相続放棄は遺産を引き継ぐ権利を完全に放棄する手続きなので、特定の遺産だけを対象に相続放棄することはできないことに注意が必要です。 以下のようなケースで考えてみましょう。

  • 遺産は不動産と預貯金
  • 相続人は被相続人の息子3人
  • 遺言書には「不動産を長男に相続させる」と書かれている

このようなケースで、遺言書の内容に従って相続する場合、長男が不動産を引き継いだ上で、預貯金を3人で分け合うことになります。 もし、長男が「不動産はいらないが、預貯金は相続したい」と考えていても、相続放棄した場合は、預貯金を含め、全ての遺産を相続することができなくなります。 ただし、他の相続人全員(このケースでは次男と三男)から合意を得られれば、遺言を無視して、相続人同士の協議の形で、長男が希望するように遺産を引き継ぐことができます。 つまり、不動産を引き継がずに、預貯金の一部だけを引き継ぐということも可能です。

「包括遺贈の放棄」「相続放棄」を行うための手続き

alt 包括遺贈の放棄、相続放棄をするためには、家庭裁判所で手続きする必要があります。

被相続人が亡くなってから3か月以内に手続きをする

原則として、被相続人が亡くなり、自分が相続人になることを知った時点から3か月以内(熟慮期間)に手続きをする必要があります。 熟慮期間を過ぎてしまうと、自動的に「遺産を引き継ぐことを認めた」という扱いになってしまいます。

熟慮期間の間でも、一定の行為をしてしまうと、「遺産を引き継ぐことを認めた」と扱われるケースがあります(法定単純承認)。相続する遺産の一部を使ってしまったり、売ってしまったりするケースです。

放棄の手続きができる家庭裁判所と必要な書類

放棄の手続きは、被相続人の最後の住所地を担当する家庭裁判所で行います。その際、以下の書類を家庭裁判所に提出する必要があります。

  • 相続放棄の申述書
  • 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
  • 相続放棄する人の戸籍謄本
  • 800円分の収入印紙
  • 連絡用の郵便切手

相続放棄の申述書は裁判所のホームページで書式をダウンロードできます。 「包括遺贈の放棄」を行う場合も相続放棄の申述書を流用します。 郵便切手は、家庭裁判所によって必要な額が異なるので、家庭裁判所に確認しましょう。 上記以外にも必要な書類がある場合があるので、家庭裁判所に確認しましょう。

家庭裁判所に書類を提出した後の流れ

家庭裁判所に書類を提出した後、家庭裁判所から照会書が届きます。 照会書には「放棄は自分の意思で行うのか」「なぜ放棄を行うのか」といった質問が記載されていますので、回答して返送しましょう。 家庭裁判所は書類をチェックして、放棄の意思が確認できれば、通知書を送付します。 家庭裁判所から通知書が届けば、放棄の手続きは終了します。

3か月以内に決められない場合

熟慮期間内に遺産を引き継ぐかどうか決められない場合、家庭裁判所に申し立てることで、熟慮期間を伸ばしてもらえる可能性があります。 申し立てる裁判所は、被相続人の最後の住所地を担当する家庭裁判所です。 熟慮期間を延長するためには、主に以下の書類を家庭裁判所に提出する必要があります。

  • 申立書
  • 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
  • 延長を求める人の戸籍謄本
  • 800円分の収入印紙
  • 連絡用の郵便切手

申立書は裁判所のホームページで書式をダウンロードできます。 郵便切手は、家庭裁判所によって必要な額が異なるので、家庭裁判所に確認しましょう。 上記以外にも必要な書類がある場合があるので、家庭裁判所に確認しましょう。

熟慮期間の延長をせずに、熟慮期間が過ぎてしまった後でも、例外的に放棄が認められるケースがあります。熟慮期間が過ぎた後に借金が見つかった場合などは、放棄ができるかどうか、弁護士に相談することを検討してもよいでしょう。

他の相続人に放棄したことを連絡する

放棄の手続きが完了したら、遺言書で指定されなかった人が遺産を引き継ぐことになるなど、相続人の取り分などに影響がある場合も少なくありません。 放棄したことは、他の相続人には当然には通知されないので、放棄をしたら、少なくとも影響がありそうな相続人に連絡してあげるようにしましょう。

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