遺言の効力

弁護士監修記事 2018年09月29日

遺言書の内容に不満があるときにとれる手段l遺言の無効や遺留分の主張する方法

「自分の取り分が少なすぎる」など、遺言書が内容がおかしいと考えている場合、そもそも遺言書は無効であると主張することや、遺言は有効だったとしても自分には最低限の取り分(遺留分)があるなどと主張することが考えられます。 この記事では、遺言がどのような場合に無効になるかといった点や、遺留分の計算方法など、遺言書の内容に不満がある場合の対処法について詳しく解説します。

目次

  1. 相続人全員の合意を得る
    1. 相続人全員と相続人以外の受遺者が同意している
    2. 遺言執行者から同意を得ている
    3. 合意が得られた場合の遺産の分け方
  2. 遺言が無効であると主張する
    1. 自筆証書遺言の有効性を確認するポイント
    2. 公正証書遺言が無効になる場合
  3. 公序良俗に反する遺言
  4. 遺言書の有効性に争いがある場合の手続きの流れ
    1. 家事調停を申し立てる手続き
    2. 調停の前に遺産の取り分(遺留分)を確認する
  5. 調停が不成立となった場合

相続人全員の合意を得る

遺言書で遺産の分け方が指定されていても、相続人全員や遺言執行者から合意を得られていれば、遺言書と異なる形で遺産を分けることができます。 たとえば、遺言書で「不動産は妻に、株式は長男に、預貯金は次男に与える」と書かれているケースで、次男が株式を引き継ぎたいと考えているような場合です。 遺言書と異なる方法で遺産を分けることができるのは、以下のような条件を満たしている場合です。

  • 相続人全員と相続人以外で遺産を譲り受ける人(受遺者)の合意がある
  • 遺言執行者の合意がある

それぞれの条件について解説します。

相続人全員と相続人以外の受遺者が同意している

合意を得る必要がある相続人は、遺言書に書かれている相続人ではなく、法律で決められた相続人(法定相続人)です。 相続人以外に遺産を譲ると遺言書に書かれている場合には、その譲り受ける人(受遺者)からも合意を得ることが必要です。

遺言執行者から同意を得ている

遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要なことを行う権限があります。 そのため、遺言執行者がいる場合、相続人や受遺者だけでなく、遺言執行者の同意も得る必要があります。

合意が得られた場合の遺産の分け方

遺言書の内容と異なる形で遺産を分けることについて、相続人全員と受遺者の合意が得られたら、どのように遺産を分けるのかを相続人全員と話し合うことになります(遺産分割協議)

遺産分割協議の方法については、この記事の下の「次に読みたい記事」で詳しく説明しています。

遺言が無効であると主張する

遺言の有効性そのものに疑問を感じている場合は、遺言が無効であると主張する方法が考えられます。

自筆証書遺言の有効性を確認するポイント

自筆証書遺言が有効かどうかは次の点をチェックしましょう

  • 被相続人が遺言書の全文を自分で書いている(自書)
  • 被相続人が自書した日付がある
  • 被相続人が自書した氏名がある
  • 押印がある
  • 訂正がある場合には、被相続人がその箇所を変更したことが書かれていて、署名・押印がある
  • 1つの遺言書に2人以上の遺言が書かれていない
  • 遺言書を作成した時、被相続人が15歳以上(遺言能力があった)
  • 公序良俗に反していない

この他、遺言書を作成した時、認知症などの疾患にかかっていたことが明らかになった場合、遺言能力がなかったことを理由に、遺言が無効になる可能性があります。

公正証書遺言が無効になる場合

公正証書遺言は公証人という専門家が作成するため、形式的な要件をみたしていないということは、ほとんど考えられないので、形式面を理由に無効になる可能性は少ないといえるでしょう。 ただし、被相続人が遺言を作成時に認知症などの疾患にかかっていたことが明らかになった場合、遺言能力がなかったことを理由に無効になる可能性があります。

公序良俗に反する遺言

遺言書の有効であることの条件のひとつに、「公序良俗に反していないこと」があります。 「公序良俗に反する」とは、簡単に説明すると、社会的・道徳的に認められないことなどを意味します。 そのため、たとえば、遺言書の中で、不倫相手への遺贈を内容とした部分は、公序良俗に反しているとして、無効になる可能性があります。

不倫相手への遺贈が問題となった裁判について、この記事の下の「次に読みたい記事」で詳しく説明しています。

遺言書の有効性に争いがある場合の手続きの流れ

遺言書を無効だと考えていても、他の相続人の中に有効だと主張する人がいて、話し合いをしても折り合いがつかない場合には、裁判所で手続きを進めます。 まず、家庭裁判所に「家事調停」を申し立て、調停委員に間に入ってもらいながら当事者間の話合いで解決を目指すことになります。 調停での話合いがまとまらなければ、遺言書が無効であることの確認を求める訴訟を提起します。

家事調停を申し立てる手続き

家事調停は、調停委員会が当事者の間に入り、遺言書の有効性について話合いで解決を目指す手続きです。 調停委員会は、裁判官1人と2人の調停委員の計3人で構成されています。調停委員は、弁護士や大学教授、公認会計士、不動産鑑定士などの専門家が任命されます。 調停委員会は、各当事者から意見や事情を聞き、遺言書の有効性について助言をしてくれます。 調停委員会の助言には必ずしも従う必要はありません。助言を受けても合意できない場合は、訴訟を提起することになります。

調停を申し立てる裁判所

調停の相手となる相続人のうち1人の住所地を担当する家庭裁判所に申し立てます。自分の住所地を担当する家庭裁判所には申し立てることはできません。 たとえば、横浜市に住む人が、大阪市に住む人と名古屋市に住む人を相手に調停を行う場合、大阪家庭裁判所か名古屋家庭裁判所に申し立てることができますが、横浜家庭裁判所に申し立てることはできません。 ただし、全員の合意で、申し立てる家庭裁判所を住所地以外の地域に決めることもできます。 先ほどの例で言えば、全員の合意で、横浜家庭裁判所や、東京家庭裁判所などに決めることができます。

申立てに必要な書類

申立てには、主に以下の書類を提出します。

  • 申立書(申立人を除く当事者の人数分の写しも必要です)
  • 1200円分の収入印紙
  • 連絡用の郵便切手
  • 被相続人の生まれてから死亡するまでの戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本)
  • 申立人の戸籍謄本
  • 相手方の戸籍謄本

申立書は裁判所のホームページで書式をダウンロードできます。 郵便切手は、家庭裁判所によって必要な額が異なるので、申し立てる家庭裁判所に確認しましょう。 上記以外の書類が必要となる場合があります。申し立てる家庭裁判所に確認しましょう。

家事調停が受理されたあとの流れ

申立てが受理されると、家庭裁判所が調停を行う日(調停期日)を決めて、当事者全員に期日を連絡します。 1回目の調停は、申立てから2か月ほどで開催されることが一般的です。 調停は平日の昼間に行われます。1回の所用時間は2時間ほどです。 調停委員会は、遺言の有効性に関する意見を申立人と相手方から聞き、合意に向けた助言を行います。 1回目の調停で合意がまとまらない場合には、約1〜2か月後に2回目の調停期日が設定されます。 何回か調停を行っても合意に至らないと調停委員会が判断した場合、調停は不成立となります。

調停は原則として、調停期日に家庭裁判所に出席しなければなりません。ただし、裁判所が遠方にあるなどの理由から、期日に出席できない場合、裁判所が認めれば、テレビ会議を利用して話し合いを行うことができます。

調停の前に遺産の取り分(遺留分)を確認する

遺言書が無効だと主張して調停などの手続きに進んだ場合でも、最終的に、無効だという主張が認められずに、遺言書が有効だと判断されることがあります。 遺言書のとおりに遺産を分けると遺産の取り分が少なくなる場合がありますが、相続人には最低限の取り分として「遺留分」が認められています。 遺言書のとおりに遺産を分けると遺留分に満たない場合、遺産を多く引き継ぐ相続人などに対し、遺留分に満たない分の遺産を分けるよう請求することができます。「遺留分減殺(げんさい)請求」といいます。 ただし、遺留分減殺請求には期限があります。「被相続人が亡くなったこと」と「減殺すべき贈与や遺贈があること」を知ったときから1年以内です。 調停や訴訟をしていると、結論が得られるまでに1年以上かかる可能性があります。このため、調停や訴訟の結論が出たあとに遺留分減殺請求をするのでは、遺留分減殺請求ができる期限を過ぎてしまう場合があります。 このような事態を避けるため、遺言の無効を主張する場合には、他の相続人などに対して文書などにより、「まず遺言の無効を主張するが、仮に遺言が有効だった場合は遺留分減殺を請求する」という意思表示をしておきましょう。 意思表示をしておくことで、調停や訴訟が1年を過ぎたとしても、遺留分減殺請求をすることができます。 文書を送るときは、「どのような内容の文書が誰から誰あてに差し出されたか」や、文書が配達されたことを郵便局が証明してくれる「配達証明付きの内容証明郵便」を利用することをおすすめします。

遺留分を計算する方法については、この記事の下の「次に読みたい記事」で詳しく説明しています。

調停が不成立となった場合

調停が不成立となった場合には、裁判所で、遺言が有効かどうか判断してもらう裁判を起こす必要があります(遺言無効確認訴訟)。 訴訟を提起することとなった場合には、自分の主張を裁判官に認めてもらうために、法的に正しい主張を適切に組み立てて、証拠で証明する必要があります。 一般の人が、そうした主張を組み立てて、証拠を集めることは容易ではありません。遺言書の有効性について訴訟で争うことになった場合には、弁護士に依頼することをおすすめします。

相続の手続きを弁護士に依頼することのメリットについては、この記事の下の「次に読みたい記事」で詳しく説明しています。

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