遺産分割調停

弁護士監修記事 2018年09月30日

遺産分割がまとまらなかった場合の手続きl遺産分割調停の手続きと進め方を解説

遺産分割協議がまとまらなかった場合、「遺産分割調停」を家庭裁判所に申し立てることになります。 遺産分割調停では、裁判官と調停委員に間に入ってもらう形で相続人同士が合意できる着地点を探っていくことになります。 この記事では、遺産分割調停の進め方について詳しく解説します。

目次

  1. 遺産分割調停のおおまかな流れ
  2. 遺産分割調停を申し立てる方法
    1. 申立てる家庭裁判所
    2. 必要な書類
  3. 遺産分割調停が受理されたあとの流れ
  4. 遺産分割調停で話し合う内容
    1. 相続人の範囲
    2. 遺産の範囲
    3. 遺産の評価
    4. 各相続人の相続分
    5. 遺産の分割方法
  5. 遺産分割調停で合意できなければ審判に移行する
    1. 審判による決定に不服がある場合
  6. 遺産分割調停や審判を行う際は弁護士に依頼することを検討する
  7. 遺産分割調停・審判の途中に被相続人の預貯金を引き出したい場合

遺産分割調停のおおまかな流れ

遺産の分け方について相続人同士で話し合っても、全員の合意にいたらない場合があります。その場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。 遺産分割調停は、調停委員会に相続人の間に入ってもらい、遺産の分け方について話合いで合意を目指す手続きです。 調停委員会は、裁判官1人と2人の調停委員の計3人で構成されています。調停委員は、弁護士や大学教授、公認会計士、不動産鑑定士などの専門家が任命されます。 調停委員会は、各相続人から意見や事情を聞き、遺産の分け方について助言をしてくれます。 調停委員会の助言には必ずしも従う必要はありません。助言を受けても合意できない場合は、審判に移行します。 審判では、遺産の分け方について、当事者の合意ではなく、裁判所に判断してもらうことになります。

いきなり遺産分割の審判を申し立てることもできますが、裁判所の判断により、調停を経なければならないことがあります。

遺産分割調停を申し立てる方法

申立てる家庭裁判所

相手方となる相続人いずれか一人の住所地を担当する家庭裁判所に申し立てます。自分の住所地を担当する家庭裁判所には申し立てることはできません。 たとえば、横浜市に住む相続人が、大阪市に住む相続人と名古屋市に住む相続人を相手に調停を行う場合、大阪家庭裁判所か名古屋家庭裁判所に申し立てることができますが、横浜家庭裁判所に申し立てることはできません。 ただし、全員の合意で申し立てる家庭裁判所を決めることもできます。

必要な書類

申立てには、主に以下の書類を提出します。

  • 申立書(申立人を除く相続人の人数分の写しも)
  • 1200円分の収入印紙
  • 連絡用の郵便切手
  • 被相続人の生まれてから死亡するまでの戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票または戸籍附票
  • 遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書や固定資産評価証明書、預貯金通帳の写し、残高証明書、有価証券写しなど)

申立書は裁判所のホームページ書式をダウンロードできます。 郵便切手は、家庭裁判所によって必要な額が異なるので、申し立てる家庭裁判所に確認しましょう。 上記以外の書類が必要となる場合があります。申し立てる家庭裁判所に確認しましょう。

遺産分割調停が受理されたあとの流れ

申立てが受理されると、家庭裁判所が調停を行う日(調停期日)を決めて、相続人全員に期日を連絡します。 1回目の調停は、申立てから2か月ほどで開催されることが一般的です。 調停は平日の昼間に行われ、1回の所用時間は2時間ほどです。 調停委員会は、遺産の分け方や割合などに関する意見を申立人と相手方から聞き、合意に向けた助言を行います。 1回目の調停で合意がまとまらない場合、約1〜2か月後に2回目の調停期日が設定されます。 何回か調停を行っても合意に至らないと調停委員会が判断した場合、調停は不成立となり、審判に移行します。

調停は原則として、調停期日に家庭裁判所に出席しなければなりません。ただし、裁判所が遠方にあるなどの理由から、期日に出席できない場合、裁判所が認めれば、テレビ会議を利用して話し合いを行うことができます。

遺産分割調停で話し合う内容

遺産分割調停では、主に以下のような流れで、話し合いを進めます。

相続人の範囲

「相続人は誰か」を確認します。 相続人の中に、養子縁組や婚姻関係の無効を主張するような人がいる場合、その争いを先に決着をつけておく必要があります。そのためには、別途裁判で確定させる必要があるので弁護士に相談することをおすすめします。

遺産の範囲

「どのような遺産があるか」を確認します。

遺産の評価

「遺産にどの程度の価値があるか」を決めます。 たとえば、不動産に関しては、固定資産税評価額や相続税評価額などを参考に、評価額を話し合います。 相続人全員の意見が一致しない場合、裁判所が選任した鑑定人が価格を評価します(鑑定)。鑑定の費用は、相続人が負担することになります。 全員が鑑定人の評価に納得すれば、それが遺産の評価として決まります。

各相続人の相続分

「誰がどの程度、遺産を引き継ぐか」を話し合います。 基本的には、法定相続分が各相続人の相続分になります。

被相続人の面倒を見ていた相続人や、逆に、被相続人から生前特別な援助を得ていた相続人は、「寄与分」や「特別受益」という形で、相続分が調整される可能性があります。

遺産の分割方法

「遺産をどのような方法で分けるか」を話し合います。 遺産の分け方は主に以下の3種類です。

現物分割 「妻が不動産は相続し、子ども達が預金を分け合う」など、
遺産をそのままの形で分け合う
代償分割 特定の相続人が遺産を取得し、他の相続人に現金で支払う
換価分割 遺産を売却し、売却した代金を相続人同士で分け合う

この他、1つの財産を複数の相続人が共有する形で引き継ぐ「共有分割」という方法もあります。

遺産分割調停で合意できなければ審判に移行する

話合いでは合意に至らないと調停委員会が判断した場合、次の手続きである審判に移行することになります。 移行は自動的に行われるので、改めて審判の申立てを行う必要はありません。 審判に移行すると、家庭裁判所が審判を行う日(審判期日)を設定します。 審判では、遺産の分け方について裁判所に判断してもらうことになります。裁判官は、遺産の分け方について、あくまで法律に基づく判断を示します。 そのため、必ずしも、相続人が納得する判断をするとは限らないということに注意しましょう。 審判に移行した後でも、遺産の分け方を話し合うことができます。相続人全員が合意すれば、調停が成立したものとして、審判を終わらせることも可能です。

審判による決定に不服がある場合

審判で決められたことは、内容に不服があっても、そのままにしておいたら、強制的に実現されることになります。 審判に不服がある場合、審判の告知を受けた日の翌日から2週間以内に「即時抗告(そくじこうこく)」の手続きをとる必要があります。 即時抗告すると、審判をした家庭裁判所がある地域を担当する高等裁判所が、遺産の分け方について、改めて判断してくれます。

即時抗告に必要な書類

即時抗告する場合、審判をした家庭裁判所に以下のような書類を提出します。

  • 抗告状
  • 1800円分の収入印紙

抗告状裁判所のホームページからダウンロードすることができます。

即時抗告の理由を証明するための証拠となる書類など、必要となる書類がある可能性があるので、家庭裁判所に確認しましょう。

高裁が出す結論は3つ

高等裁判所が出してくれる結論は、次の3つのどれかです。

  • 即時抗告した相続人の主張を認めない判断を下す(棄却)。
  • 審判した家庭裁判所に判断するよう、差し戻す。
  • 家庭裁判所の審判を取り消し、高等裁判所が遺産の分け方決める。

遺産分割調停や審判を行う際は弁護士に依頼することを検討する

遺産分割調停を行うとき、弁護士に依頼することで、弁護士が代理人として話合いに参加してくれます。 弁護士は法律の専門家という立場から、適切な相続分や分け方を主張してくれます。 また、家庭裁判所の審判や、即時抗告審では、自分の主張を認めてもらうために、法的に正しい主張を適切に組み立てて、それを証拠で証明する必要があります。 一般の人に、そうした主張を構成し、証拠を集めることは容易ではありません。審判以降で遺産分割を争うことになった場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。

遺産分割調停・審判の途中に被相続人の預貯金を引き出したい場合

遺産分割協議がまとまらず、調停や審判に移行すると、遺産の分け方が決まるまでに数か月、場合によっては数年かかるケースもあります。 遺産の分け方が決まるまでは、被相続人の預貯金を引き出すことができないため、被相続人の収入で生活していたような相続人は、生活が苦しくなる可能性があります。 このような場合、「仮分割の仮処分」という制度を利用することで、緊急的に被相続人の預貯金を引き出すことができる場合があります。

「仮分割の仮処分」を利用するための手続きについて、この記事の下の「次に読みたい記事」で詳しく説明しています。

次に読みたい記事

遺産分割調停や審判の最中に被相続人の預金を引き出すための手続き

相続について、相続人同士の話合いでは解決できず、調停や審判の手続きを行うと、遺産の分け方が決まるまで、長いケースでは年単位の時間が可能性があります...

あわせて読みたい関連記事

未成年の相続人がいる場合の相続手続きの進め方と代理人の選任方法

遺産の分け方を決める話合い(遺産分割協議)は、相続人全員の参加が必要ですが、未成年者は、協議に参加することができません。 そのため、相続人の中に...

認知症の相続人がいる場合の相続手続きと後見人・保佐人・補助人の選任方法

遺産の分け方を決める話合い(遺産分割協議)は、相続人全員の参加が必要ですが、認知症などにより、自分の財産を管理するための判断能力が不十分な相続人が...

相続税の申告期限までに遺産分割が終わらない場合の対処法

相続税は、「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」に申告する必要があります。しかし、申告期限までに遺産分割が終わらない場合もある...

遺産分割の3つの方法を詳しく解説 | 現物分割・代償分割・換価分割について

遺産の分け方には、大きく「現物分割」「代償分割」「換価分割」という3種類の方法があります。 * それぞれの分割方法がどのような仕組みなのか * 遺産に...

相続で遺産の割合に納得できないときの対処法まとめ

「自分の遺産の取り分はもっと多いはず」「他の相続人がもらいすぎではないか」「そもそも財産の相続したくない」。 こうした悩みがあるとき、自分の貢献...

「遺産分割協議書」を作成するときの注意点まとめ

相続の際、遺産をどのように分けるかの話合い(遺産分割協議)がまとまったら、その内容を遺産分割協議書という書面の形にしておきましょう。 書面にして...

遺産相続の手続きを弁護士に依頼するメリットと費用の目安

遺産相続は、様々な事柄を調査し、相続人同士で話し合って決める必要があります。 手続きに時間がかかったり、相続人同士で話合いがまとまらずにトラブル...

解決までの流れ

解決までの全記事

弁護士に見積り依頼をする

複数の弁護士にまとめて見積り依頼
費用対処方針比べて選ぶことができます。

  • 弁護士費用がいくらかかるか知りたい
  • 弁護士の選び方がわからない
  • 弁護士が何をしてくれるか知りたい
一括見積りをはじめる無料

依頼前に知っておきたい弁護士知識

遺産分割を扱う弁護士を探す

遺産分割調停に関する法律相談

相談を絞り込む

遺産分割調停の法律ガイド

関連カテゴリから解決方法を探す

弁護士に相談しようと思ったら…

弁護士に見積り依頼をする

複数の弁護士にまとめて見積り依頼

  • 最短3分で依頼完了
  • 依頼内容は非公開
  • 分野に詳しい弁護士から見積り依頼が届く
一括見積りをはじめる無料

依頼前に知っておきたい弁護士知識

相続のニュース

  1. 結婚式で起きた「祝儀空っぽ」事件 新郎激怒...
  2. 「ドン・ファン」全財産を田辺市に寄付と遺言...
  3. はあちゅうさんが「事実婚」発表、知っておき...
  4. 高級住宅街、高価な壺や布団を近所で預け合う...
  5. 富裕層に衝撃「相続税法改正」で節税の縛り強...
  6. 「預貯金」は遺産分割の対象…最高裁の初判断...
  7. 最高裁「預貯金は遺産分割の対象に」判例見直...