相続財産

弁護士監修記事 2018年09月29日

被相続人が借りていた土地を相続するときの評価方法について

亡くなった家族が土地を借りていた場合、相続人は被相続人の「他人が所有する土地を利用する権利」(借地権)を相続することになります。 この記事では、借地権の価値を評価する方法を詳しく解説します。 相続税の支払いが発生する場合にもかかわってくるので、ポイントをおさえておきましょう。

目次

  1. 被相続人が土地を借りていた場合は「借地権」を相続する
  2. 借地権の価値を評価する場合
    1. 相続税を支払うかどうかを判断するためにも評価する
  3. 借地権の評価方法
    1. 「土地の評価額」を確認する
    2. 「借地権割合」を確認する
  4. 「小規模宅地特例」が適用されるか確認する

被相続人が土地を借りていた場合は「借地権」を相続する

alt 亡くなった家族(被相続人)が土地を借りていた場合、相続人は「他人が所有する土地を利用する権利」(借地権)を相続することになります。

借地権の価値を評価する場合

alt 借地権を相続する場合、遺産の分け方によっては、「借地権をどのように評価するか」が重要になってきます。 たとえば、借りている土地に住宅を建てて住んでいた父が亡くなり、長男と次男が相続人になるケースで考えてみましょう。 そのうち長男が住宅を受け継ぐことを望んでいるとします。この場合、長男が住宅と借地権を受け継ぎ、次男は住宅と借地権の価値の半分をお金で受け取るという形で決着をつけることができます(「代償分割(だいしょうぶんかつ)」といいます)。 このような分割の方法を取る場合、借地権をどのように評価するかによって、借地権を受け継がない次男が受け取る金額が変わってきます。

相続税を支払うかどうかを判断するためにも評価する

遺産の総額が一定の基準を超えた場合「相続税」を支払う必要があります。 簡単に言えば、すべての遺産の価値の合計が、「基礎控除額(きそこうじょがく)」という基準を超えると、相続税を支払う必要があります。 alt 相続税を支払う必要があるかどうかを判断するためにも、借地権を評価して、その価値を把握しておく必要があります。 そのため、借地権を相続人同士でどのように分けるかということが問題とならなくても、借地権の評価方法は理解しておいた方がよいでしょう。

借地権の評価方法

alt 借地権の評価方法としては、「土地の評価額」「借地権割合」という数値をかけることで算出することが一般的です。 まず、「土地の評価額」を確認する方法から説明します。

借地権は、お金を払って土地を借りた場合の権利のことで、無償で借りている場合(使用貸借)は含まれません。使用借権は原則として相続の対象になりません。

「土地の評価額」を確認する

「土地の評価額」は、以下のような、土地の価格を計算するための基準が参考になります。

  • 公示価格
  • 都道府県地価調査標準価格
  • 固定資産税評価額
  • 相続税評価額

いずれも国土交通省や都道府県などが定めた公的な基準で、基準によって評価の結果は異なってきます。

公示価格とは

「公示価格」は、国土交通省が毎年1月1日を基準として設定する土地の価格です。国土交通省が選定した「標準地」に設定される価格なので、全ての土地に公示価格があるわけではありません。 国土交通省のホームページにある「土地総合情報システム」から、価格を検索できます。 相続する土地の近くに設定されている標準地の価格を参考にして、土地の評価について、相続人同士で話し合っていくことになります。

都道府県地価調査標準価格とは

「都道府県地価調査標準価格」は、都道府県が毎年7月1日を基準として設定する土地の価格です。公示価格と同様に「標準地」が設定されているので、全ての土地をカバーするものではありません。 都道府県地価調査標準価格も「土地総合情報システム」から検索できます。 相続する土地の近くに設定されている標準地の価格を参考にして、土地の評価について、相続人同士で話し合っていくことになります。

同じ土地に公示価格と都道府県地価調査標準価格の両方の価格が設定されているケースもあります。どちらも同じ方法で評価してるので、1年の前半と後半で、価格の変化を把握できます。

固定資産税評価額とは

固定資産税評価額は所有者に年1回、市町村から送られてくる「固定資産税納税通知書」(課税明細書)で確認できます。「価格」や「評価額」と記載されている部分の価格が固定資産税評価額にあたります。 被相続人が土地を所有していたら、自宅などに納税通知書が保管されていないか探してみましょう。

相続税評価額とは

「相続税評価額」は、国税庁が定めた相続税を計算するための遺産の評価方法により算出する価格です。 評価方法は、「路線価方式」「倍率方式」という2つの方法があります。どちらの方法で計算するかは、地域によって異なります。 対象の土地がどちらの方法で計算すればよいのかは、国税庁の「路線価」に関するWebサイトで確認できます。

どちらの方法で計算すればよいのか

国税庁の「路線価」に関するWebサイトのトップページから、相続する土地がある都道府県を選択します。 ここでは例として「東京都」を選択します。 alt 出典:国税庁ホームページ(説明のために画像を加工しています) 次のページには、「評価倍率表」という項目があり、「一般の土地等用」「大規模工場用地用」「ゴルフ場用地等用」のどれかを選ぶ形になっているので、「一般の土地等用」という項目をクリックします。 alt 出典:国税庁ホームページ(説明のために画像を加工しています) 次に、市区町村を選択する画面になるので、相続する土地がある市区町村を選択します。そうすると、その市区町村の「評価倍率表」が表示されます。 ここでは「八王子市」を選択します。 alt 出典:国税庁ホームページ(説明のために画像を加工しています) 「評価倍率表」から相続する土地がある地域を検索し、該当する住所地の「宅地」の欄に何が書かれているかを確認しましょう。 「1.1」など数字が書かれているなら「評価倍率方式」で計算します。数字ではなく「路線」と書かれていれば「路線価方式」で計算します。 alt 出典:国税庁ホームページ(説明のために画像を加工しています) それぞれどのような計算方法なのか確認していきましょう。

「路線価方式」とは

「路線価方式」とは、土地の面積に「路線価」「補正率」という数値をかけることで、土地の評価額を算出する方法です。

路線価方式路線価 × 補正率 × 土地の面積 = 評価額

具体的な計算方法

国税庁のホームページで紹介されている、次の例をもとに具体的に土地の評価額を計算してみましょう。 alt 出典:国税庁ホームページ これは、「商業」「工場」「住宅」など土地の用途に応じた区分のうち、「普通商業・住宅併用地区」という区分の土地の道路に面した700㎡の土地です。道路からの奥行きが35メートルあります。 「路線価」は、毎年改定されるので、国税庁のホームページ上に公開されている「路線価図」で確認しましょう。 また、該当する土地の用途に応じた区分も路線価図で確認することができます。土地の種類を示す記号があるので、該当する土地がどの区分なのか確認しましょう。 ◯で囲まれた「300」という数値が路線価(千円単位)を表しています。このケースでは、路線価は、1平方メートルあたり30万円(300×1000)ということになります。 次に「補正率」は、土地の種類と奥行きの長さによって変わってきます。 補正率は、国税庁のホームページ上で、次のような詳細な対応表が公開されています(該当する部分のみ抜粋)。

奥行きの長さ/土地の区分 普通商業・併用住宅地区 普通住宅地区
4m未満 0.9 0.9
4m以上6m未満 0.92 0.92
6m以上8m未満 0.95 0.95
8m以上10m未満 0.97 0.97
10m以上12m未満 0.99 1
12m以上14m未満 1 1
14m以上16m未満 1 1
16m以上20m未満 1 1
20m以上24m未満 1 1
24m以上28m未満 1 0.97
28m以上32m未満 1 0.95
32m以上36m未満 0.97 0.93
36m以上40m未満 0.95 0.92

この土地は、奥行きが35メートルあり、「普通商業・住宅併用地区」なので、補正率は、0.97になります。 路線価と補正率に土地の面積をかけた数字が、路線価方式での土地の評価額になります。 30万 × 0.97 × 700 = 2億370万円

補正率は、この他土地の形状などさまざまな条件で変動する可能性があり、一般の方が自力で正確な補正率を算出することが困難なケースもあります。計算に不安を感じた場合は、弁護士などの専門家に依頼することを検討してもよいでしょう。

「倍率方式」とは

路線価が設定されていない場合、「倍率方式」により土地の評価額を算出します。 倍率方式は、固定資産税評価額に評価倍率をかけることで算出できます。 たとえば、固定資産税評価額が2000万円の土地の評価倍率が「1.1」の場合は、次のような計算になります。 2000万 × 1.1 = 2200万円

「借地権割合」を確認する

ここまでで、土地の評価額がわかりました。最後に、土地の評価額にかける借地権割合の求め方を確認しましょう。 借地権割合は、国税庁の「路線価」に関するWebサイトで確認できます。「路線価図」にある路線価を示す数字の横のアルファベットが借地権割合を示しています。 アルファベットと借地権割合は以下の表のようになっています。

アルファベット 借地権割合
A 90%
B 80%
C 70%
D 60%
E 50%
F 40%
G 30%

「路線価」がない地域では、下の画像のように、評価倍率表にある「借地権割合」という項目に数値が記載されています。 alt 出典:国税庁ホームページ(説明のために画像を加工しています)

「相続税評価額」に「借地権割合」をかけて計算した「借地権」の価格は、相続税を計算するための遺産の評価方法により算出する価格となります

路線価方式による「借地権」の評価具体例

ここれでは例示として、相続税評価額に借地権割合をかける方法で、借地権の評価額を算出します。 まずは、路線価方式で相続税評価額を算出した先程の土地を、被相続人が借りていたと仮定して、具体的に計算してみましょう。 alt 出典:国税庁ホームページ この土地の評価額は以下のように計算します。 30万 × 0.97 × 700 = 2億370万円 この土地の借地権割合は「C」(70%)です。借地権の評価額は以下のように計算します。 2億370万 × 0.7 = 1億4259万円

倍率方式による「借地権」の評価具体例

倍率方式で相続税評価額を算出した先程の土地(固定資産税評価額が2000万円、評価倍率が「1.1」)を、被相続人が借りていた場合の計算方法も確認しておきましょう。 まず、土地の評価額は以下のように計算します。 2000万 × 1.1 = 2200万円 借地権割合が60%の場合、借地権の評価額は次のように計算します。 2200万 × 0.6 = 1320万円

「小規模宅地特例」が適用されるか確認する

alt 「小規模宅地特例」とは、一定の条件をクリアすると、借地権の相続税評価額を50%または80%減額してもらえる制度です。 遺産の合計額が基礎控除額を超えている場合でも、小規模宅地特例により借地権の評価額が引き下げられ、その結果、遺産の合計額が基礎控除額を下回れば、相続税を支払う必要がありません。 「小規模宅地特例」が適用されるか確認しましょう。 小規模宅地特例がどんな場合に利用できるかは、次の記事で詳しく説明しています。

弁護士に見積り依頼をする

複数の弁護士にまとめて見積り依頼
費用対処方針比べて選ぶことができます。

  • 弁護士費用がいくらかかるか知りたい
  • 弁護士の選び方がわからない
  • 弁護士が何をしてくれるか知りたい
一括見積りをはじめる無料

依頼前に知っておきたい弁護士知識

遺産相続を扱う弁護士を探す

相続財産に関する法律相談

  • 遺言を書面で残していない場合の遺産相続

    母が亡くなりました。母は死別した前妻の子供のいる父と結婚しました。 父は数年前に亡くなっています。 母は実子である私にすべての財産を渡すと生前申しておりましたが 何も書面などは残し...

    4弁護士回答
  • 遺産相続について教えて下さい

    父か三年前に亡くなりました。 兄弟に遺産分与はいつまでにする決まりはありますでしょうか?

    3弁護士回答
  • 遺産相続する前に使われたお金

    亡くなったのは祖父です!遺産相続する前に、祖父と一緒に住んでいた叔父が亡くなった人のお金を銀行から引き出していたら、亡くなったその日やその後日の引き落としなどは相続するときに取...

    1弁護士回答
  • 義母の遺産相続について

    義母が他界し遺産があるとの事で旦那は一人っ子なのですが、今行方不明で連絡とれません。 今は国のほうが預かってるそうです。 そんなときはどうすればいいのですか? 旦那との子供は三人い...

    2弁護士回答
  • 疎遠の親の遺産相続について

    両親が離婚してから母に引き取られました。私自身は父とは疎遠で連絡先も知りません。その父が子供連れの方と再婚したと母から聞いています。その子供を養子縁組したとも聞いています。父に...

    1弁護士回答
1 2 3 4 5 ... 30

法律相談を検索する

相続財産の法律ガイド

関連カテゴリから解決方法を探す

弁護士に相談しようと思ったら…

弁護士に見積り依頼をする

複数の弁護士にまとめて見積り依頼

  • 最短3分で依頼完了
  • 依頼内容は非公開
  • 分野に詳しい弁護士から見積り依頼が届く
一括見積りをはじめる無料

依頼前に知っておきたい弁護士知識

相続のニュース

  1. 結婚式で起きた「祝儀空っぽ」事件 新郎激怒...
  2. 「ドン・ファン」全財産を田辺市に寄付と遺言...
  3. はあちゅうさんが「事実婚」発表、知っておき...
  4. 高級住宅街、高価な壺や布団を近所で預け合う...
  5. 富裕層に衝撃「相続税法改正」で節税の縛り強...
  6. 「預貯金」は遺産分割の対象…最高裁の初判断...
  7. 最高裁「預貯金は遺産分割の対象に」判例見直...