遺言の効力

弁護士監修記事 2019年06月19日

自筆証書遺言が有効か無効かを確認する8つのポイント

遺言書の検認が終わったら、遺言書が有効か無効かを確認しましょう。自筆証書遺言は自宅で手軽に作れる反面、偽造できてしまうリスクがあることから、有効な遺言書となるために様々な条件があります。

  • 手書きで書かれているか?
  • 署名押印があるか?
  • 遺言作成時に認知症だった場合は?

この記事では、このようなポイントについて詳しく解説します。

目次

  1. 検認をした遺言書でも無効となる可能性がある
  2. 自筆証書遺言が有効となるための条件
    1. 遺言書により財産を引き継ぐ人が亡くなっていないこと
    2. 被相続人が自分で遺言書の全文を書いたこと
    3. 日付があること
    4. 氏名があること
    5. 押印があること
    6. 訂正がある場合には訂正印などがあること
    7. 1つの遺言書に2人以上の遺言が書かれていないこと
    8. 被相続人が15歳以上で「遺言能力」があること
    9. 公序良俗に反していないこと
  3. 遺言書が無効かもしれないと思った場合の対処法
    1. 明らかに無効だとわかる場合
    2. 明らかに無効だとわからない場合
  4. 遺言書が有効な場合には遺産の調査をしましょう
    1. 遺産の分け前が少ないと思ったら、遺留分を確認しましょう
    2. 遺言執行者が指定されている場合には、遺言執行者の手続きを確認しましょう

検認をした遺言書でも無効となる可能性がある

alt 亡くなった方(「被相続人」といいます)が遺言書の全文を自分で書いた遺言書のことを「自筆証書遺言」といいます。 自筆証書遺言は自宅で手軽に作れる反面、偽造のリスクがあることから、有効な遺言書となるために様々な条件があります。 条件を満たしていない遺言書は、無効となります。 検認の手続きでは、遺言書が有効か無効かのチェックまではしていないため、検認を済ませている場合でも、遺言書が無効となる場合があります。 遺言書が無効な場合、遺産の分け方を他の相続人と話し合って決める必要があります。 また、遺言書が有効かどうか他の相続人と意見が異なる場合には、裁判をしなければならない可能性もあります。 手元にある遺言書が有効かどうか、確認していきましょう。 遺言書が公正証書遺言の場合には、こちらの記事で詳しく解説しています。

検認を済ませていない場合には、先に検認を済ませましょう。検認の方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

自筆証書遺言が有効となるための条件

alt 自筆証書遺言が有効となるための主な条件は、次のとおりです。

  • 遺言書により財産を引き継ぐ人が亡くなっていないこと
  • 被相続人が自分で遺言書の全文を書いたこと
  • 日付があること
  • 氏名があること
  • 押印があること
  • 訂正がある場合には訂正印などがあること
  • 1つの遺言書に2人以上の遺言が書かれていないこと
  • 被相続人が15歳以上で「遺言能力」があること
  • 公序良俗に反していないこと

遺言書により財産を引き継ぐ人が亡くなっていないこと

遺言書により財産を引き継ぐはずの人が被相続人よりも先に亡くなっているケースがあります。 このような場合、亡くなった人に遺産を引き継がせるという遺言書の内容は無効となり、法律で決められた相続人(法定相続人)が引き継ぎます。亡くなった人に関する部分以外の遺言書は有効です。

被相続人が自分で遺言書の全文を書いたこと

自筆証書遺言が有効となるには、被相続人が自分で遺言書の全文を書くことが必要です。 パソコンで作成されたり、コピーされたり、点字などで書かれたりした遺言書は、無効となります。 ただし、カーボン紙で複写された遺言書の場合は、筆跡鑑定で被相続人の筆跡を確認することができるので、有効です。

遺言書が2019年1月13日以降に作成された場合、財産目録については、手書きではなく、パソコンで作成する・通帳のコピー添付するなどの方法も認められます。その場合、財産目録の全ページに被相続人の署名と押印があることが必要です。

目の見えない人が他人の力を借りて書いた遺言書は有効か

目の見えない人が、他人に手を添えてもらいながら遺言書を書いた場合は、自分で書いたと言えるでしょうか? このような遺言書の有効無効が争われた裁判で、最高裁は次のような判断をしています。 まず、被相続人が自分で遺言書を書くためには、前提として、文字を知っていて、かつ、自分で文字を書く能力(自筆能力)があることが必要です。 目が全く見えない場合でも、文字を知っていて、かつ、自分で文字を書くことができる場合には、自筆能力はあるというべきだと最高裁は判断しました。 逆に、目が見える場合でも、文字を知らない場合には自筆能力はないということになります。 裁判の事例では、被相続人はもともと読み書きができたけれど、病気により視力を失い、後遺症のために手が震えるなどして、文字を書くために他人の補助が必要な状態でした。 最高裁は、このような場合でも、自筆能力が失われるわけではないと判断しました。 次に、最高裁は、病気や事故などにより他人に手を添えてもらいながら書いた自筆証書遺言が有効となるためには、次の条件が必要だと判断しました。

  1. 被相続人が遺言書を作成した時に自筆能力を有していること
  2. 他人が手を添えるという状態が、単に書き始めや改行の際、もしくは字の間隔をあけたり行間を整えたりするために、被相続人の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、被相続人が単に筆記を容易にするための支えを借りただけで、手の動きが被相続人の望みに任されている状態であること
  3. 手を添えた他人の意思が介入した形跡のないことが筆跡で判定できること

最高裁は、次のような事情を認定して、上記2の条件に当てはまらないため遺言書は無効であるとした原審を正当な判断だと認めました。

  • この事案で問題となった遺言書には、書き直した字や歪んだ字もあるが、一部には草書風の達筆な字もみられ、本文がおおむね整った字で便箋4枚、22行にわたり整然と書かれていること
  • 被相続人の手の震えを止めるため、背後から手の甲を握って支えただけでは、本件遺言書のような字を書くことは到底できないこと
  • 被相続人も手を動かしたにせよ、手を添えた者が被相続人の声を聞きながら積極的に手を誘導し、整然と字を書こうとする意思に基づいて本件遺言書が作成されたこと

日付があること

日付は、年月日まで特定できるように書かれていることが必要です。 「◯年◯月◯日」という書き方でなくても、他の情報と照らし合わせれば日付を特定できるような場合には有効です。 「◯年◯月吉日」という書き方は、具体的な日付がわからないので無効です。

日付の書き方の例 有効 / 無効
自分の80歳の誕生日 有効
自分の定年退職の日 有効
◯年◯月吉日 無効

実際に遺言書を書いた日と、遺言書に書かれた日付が異なる場合、その日付が誤記であることと、実際に遺言書を書いた日が他の資料から容易に判断できる場合には、遺言書は有効とされています。

6月は30日までしかないのに、日付が「6月31日」と書かれているような場合、大した欠点ではないとして(軽微な瑕疵)、遺言書は有効として扱われます。

氏名があること

氏名は、必ずしも戸籍上の氏名である必要はありません。通称、雅号、ペンネームでもよいとされています。

押印があること

押印は、必ずしも実印である必要はなく、認印でも構いません。 指に朱肉をつけて用紙に指型を押す「指印」も有効です。 署名を絵のようにデザインした「花押」が押印の代わりに書かれた遺言書は、最高裁により無効と判断されています。 押印の場所は、必ずしも署名の近くにされている必要はありません。遺言書の本文には押印がなく、遺言書が入っていた封筒の封じ目に押印がされていた場合でも、最高裁により有効と判断されています。 遺言書が数枚にわたる場合でも、そのうちの1通に押印がなされていれば有効です。見開きページの間に押す契印(割印)も必ずしも必要ではありません。

訂正がある場合には訂正印などがあること

遺言書に訂正箇所がある場合には、訂正のために次のことがなされている必要があります。

  1. 訂正箇所が二重線で消されている
  2. 訂正箇所に押印がされている
  3. 訂正後の正しい言葉が書かれている
  4. 余白に訂正した箇所と字数が書かれている
  5. 訂正した字数の近くに署名がある

alt

いくつかの訂正箇所にはきちんと押印などがされているのに、1箇所だけ押印がされていない場合には、大した欠点ではないとして(軽微な瑕疵)、遺言書は有効として扱われます。

1つの遺言書に2人以上の遺言が書かれていないこと

1つの遺言書に2人以上の遺言が書かれている場合、その遺言書は無効となります。 ただし、遺言書の書かれ方から、容易に切り離すことができるような場合には、有効とされる場合があります。

被相続人が15歳以上で「遺言能力」があること

遺言書が有効となるには、遺言書を書いた時点で被相続人が15歳以上であることと、「遺言能力」があることが必要です。 遺言能力とは、遺言がどのような意味をもち、どのような法律上の効力があるかを理解できる能力のことです。 たとえば、被相続人が亡くなる前に認知症だったような場合には、遺言能力があったかが問題になる場合があります。

成年後見人が選任されている被相続人が遺言書を書いた場合

被相続人に成年後見人が選任されていた場合でも、次の条件を満たせば遺言書を作成することができます。

  • 被相続人が遺産を管理・処分できる判断能力が一時的に回復していること
  • 医師2人以上の立会いがあること
  • 立ち会った医師により、「被相続人の判断能力が一時的に回復していた」という内容の記載と、署名押印がなされていること

ただし、遺言書の内容が成年後見人や成年後見人の家族の利益になる内容だった場合、その遺言書は無効となります。成年後見人が被相続人の親・子などの直系血族、夫・妻、兄弟姉妹だった場合には、このような内容の遺言書も有効です。

公序良俗に反していないこと

遺言書の内容が公序良俗に反している場合には、遺言書は無効となります。 たとえば、被相続人の不倫相手に遺産を受け継がせるという内容の遺言書は、不倫関係の維持を目的として書かれた場合には、無効となります。 ただし、不倫関係の維持が目的ではなく、不倫相手の生活を保障する目的で書かれた場合には、無効とならない場合もあります。

遺言書が無効かもしれないと思った場合の対処法

alt 遺言書が無効かもしれない思った場合、遺言書を見て明らかに無効だとわかる場合と、そうでない場合によって対処法が異なります。

明らかに無効だとわかる場合

遺言書の内容を確認して、署名がない場合など、明らかに無効だとわかる場合には、裁判などの手続きをしなくても遺言書は無効です。 このような場合、他の相続人と遺産の分け方について話し合うことになります。また、どのような遺産があるかを確認する必要があります。どのような流れになるのか、次の記事で詳しく解説しています。

明らかに無効だとわからない場合

筆跡が他人のものだと思われる場合や、被相続人が認知症などで遺言能力がなかったと思われる場合など、無効かどうか明らかではない場合、まずは他の相続人の意見を確認してみましょう。 他の相続人も遺言書が無効だと思っている場合、相続人全員の合意があれば、裁判などの手続きをしなくても、遺言書を無効として扱うことができます。その場合には、他の相続人と遺産の分け方について話し合いをすることになります。 どのような流れになるか、次の記事で詳しく解説しています。

他の相続人と意見が対立する場合

遺言書の有効無効について他の相続人と意見が対立し、話をしても結論が出ない場合には、裁判を起こすことになります。このような裁判を「遺言無効確認訴訟」といいます。 裁判を起こすには費用がかかります。 また、筆跡鑑定や、認知症の診断書などの証拠を集める必要があります。 自分の主張(遺言書は無効だと思う/有効だと思う)を効果的に裁判所に伝えるための専門知識も必要です。 このような場合には、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。他の相続人から裁判を起こされた場合にも同様に、弁護士などの専門家に相談してみましょう。

遺言書が有効な場合には遺産の調査をしましょう

alt 遺言書が有効な場合、どのような遺産があるのかを調べていくことになります。 詳しくはこちらの記事で解説しています。

遺産の分け前が少ないと思ったら、遺留分を確認しましょう

遺産の分け前が少ない場合、法律で決められている最低限の取り分を主張することができます。この最低限の取り分のことを「遺留分」といいます。 遺産の分け前が少ないと思ったら、自分の遺留分を確認しましょう。 遺留分については、こちらの記事で詳しく解説しています。

遺言執行者が指定されている場合には、遺言執行者の手続きを確認しましょう

遺言書の中で遺言執行者が指定されている場合があります。 遺言執行者とは何をする人なのでしょうか? 詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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