相続人

弁護士監修記事 2018年09月29日

認知症の相続人がいる場合の相続手続きと後見人・保佐人・補助人の選任方法

遺産の分け方を決める話合い(遺産分割協議)は、相続人全員の参加が必要ですが、認知症などにより、自分の財産を管理するための判断能力が不十分な相続人がいる場合、その相続人に代わって協議に参加する人が必要です。

  • 後見人・保佐人・補助人とは
  • 選任するための手続きの流れ
  • すで後見人などになっている人が相続人の場合の対処法

この記事では、これらについて詳しく解説します。

目次

  1. 認知症などの相続人が話し合いをするには後見人が必要
  2. 後見人等を選任するための手続き
    1. 審判の申立てに必要な書類
    2. 後見人等になれる人
    3. 申立て後の流れ
    4. 後見人等は本人が死亡するまで務める
  3. すでに本人に後見人等がいて、その後見人等も相続人となる場合
  4. 特別後見人等を選任する手続き
    1. 遺産分割協議書の案を作成する際の注意点
    2. 特別後見人等になれる人
    3. 申立てに必要な書類
    4. 申立て後の流れ
  5. 正式な遺産分割協議書を作成する

認知症などの相続人が話し合いをするには後見人が必要

遺産の分け方は、相続人全員で話し合って決める必要があります(遺産分割協議)。相続人が一人でも加わらずに話し合われた協議は、やり直すことになる可能性があります。 一方で、認知症などにより、自分の財産を管理するための判断能力が不十分な人は、契約などの法的な行為をすることが制限されているため、遺産分割の話合いに参加できません。 そのため、相続人の中に認知症などの人がいる場合、その人に代わって協議に参加する人が必要になります。 具体的には、相続人の判断能力の程度に応じて、成年後見人、保佐人、補助人(以下、後見人等)のいずれかを選任することになります。 認知症などの相続人(この記事では本人と言います)の親族などが、家庭裁判所に選任の審判を申し立てることになります。

相続人(本人)の状態 成年後見制度の種類 申し立てる審判
判断能力を欠いている 成年後見人 後見開始の審判
判断能力が著しく不十分 保佐人 保佐開始の審判
判断能力が不十分 補助人 補助開始の審判

どの審判を申し立てるかについては、医師の診断書などを参考に、申し立てる人が決めることができます。 ただし、申立てをした後に、家庭裁判所が本人の判断能力について鑑定を行い、別の制度の方が適切であるとして別の審判を申し立てるよう指示する場合があります。

3種類の審判のうち、「補助開始の審判」については、本人以外の人(配偶者や親族など)が申し立てる場合、申立てについて本人の同意を得ることが必要です。

後見人等を選任するための手続き

成年後見制度を利用するための審判には、長くて2か月ほどの時間がかかることがあります。 相続人の中に認知症などの人がいることがわかったら、なるべく早めに家庭裁判所に審判を申し立てましょう。 申し立てる裁判所は、本人が住んでいる地域を担当する家庭裁判所です。 申立てをすることができる人は、本人や本人の配偶者、本人の父母や祖父母、子ども、きょうだいなどです。

審判の申立てに必要な書類

審判の申し立てには、以下のような書類が必要です。

  • 申立書
  • 本人の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 本人の住民票または戸籍附票
  • 後見人等の候補者の住民票または戸籍附票
  • 本人の診断書
  • 800円分の収入印紙(申立手数料)
  • 2600円分の収入印紙(登記手数料)
  • 連絡用の郵便切手

申立書」と「本人の診断書」は裁判所のホームページで書式をダウンロードできます。 診断書は、書式をダウンロードして、医師に渡して書いてもらいます。ただし、家庭裁判所によっては、内容が異なる書式を使用している場合があります。 詳しくは申し立てる家庭裁判所にお問い合わせください。 郵便切手は、家庭裁判所によって必要な額が異なるので、申し立てる家庭裁判所に確認しましょう。 上記以外の書類や費用が必要になる可能性もありますので、申し立てる裁判所に確認しましょう。

後見人等を選任するための手続きや必要書類などに関して、全国の「弁護士会」や、「地域包括支援センター」「社会福祉協議会」などに相談することができます。

後見人等になれる人

後見人等になる人は家庭裁判所が選んでくれるわけではありません。申し立てる人が後見人等の候補者を選ぶ必要があります。 申し立てる人が選んだ候補者について、家庭裁判所が適切だと認めれば、その候補者が後見人等に選任されます。 後見人等には、本人の親族(相続人を除く)だけでなく、弁護士などの専門家なども後見人等になることができます。 一方で、次のような人は後見人等になれません。

  • 未成年者
  • 成年後見人、保佐人、補助人になったことがある人で、解任されたことがある人(本人以外の後見人等になったことがある人も含む)
  • 破産手続開始決定を受けた人(免責された人は除く)
  • 本人を裁判で訴えたり、本人から訴えられたりしたことがある人、またはその配偶者や親子にあたる人
  • 行方不明の人

申立て後の流れ

家庭裁判所は提出された書類をチェックします。申立てに関する事情を聞くため、申立人や候補者に面接が行われる場合もあります。 また、本人の状態を踏まえて、申立てた審判の種類が適切かを確認するため、本人の判断能力について裁判所が鑑定を行う場合があります。 書類や鑑定の結果に問題がなければ、後見人等が選任されます。 申立書に記載した候補者がそのまま選任されることが一般的ですが、裁判所の判断によって、弁護士などの専門家が選任されるケースもあります。 これらの手続きがすべて終わると、候補者が後見人等となったことを示す「審判書謄本」が、申立人と後見人等になった候補者に届きます。 審判書謄本が届いたら、後見人等となった人が本人の代わりとして、遺産分割協議を行いましょう。

後見人等は本人が死亡するまで務める

後見人等としての仕事は、遺産分割協議の代理だけではないことに注意しましょう。 後見人等は本人の判断能力が回復するか、本人が死亡するまで務める必要があり、相続人の財産管理など、様々な業務を継続して行う必要があります。 長期間にわたって後見人等を務める可能性もあるので、誰を後見人等に選ぶかについては、慎重に判断しましょう。

後見人等となった人には、本人の財産から毎月数万円の報酬を支払われます。報酬額は家庭裁判所が決定します。

経済的に後見人等に報酬を支払うことが難しい方に向けて、各市区町村で支援制度が設けられています。詳しく知りたい方は、住んでいる市区町村役場に問い合わせてみましょう。

すでに本人に後見人等がいて、その後見人等も相続人となる場合

遺産分割協議が始まる前から、本人に認知症などがあって、すでに後見人等が選任されている場合があります。 その後見人等も相続人になっているケースでは、お互いの利益が両立しない可能性があるため、別の後見人等(特別後見人等)を選任しなければなりません。 特別後見人等を選任するためには、特別後見人等の候補者を選んで、認知症などの相続人の住所を管轄する家庭裁判所に選任を申し立てます。 申立ては他の相続人などの「利害関係人」が行います。

特別後見人等を選任する手続き

家庭裁判所に特別後見人等の選任を申し立てる場合、申立ての前に遺産分割協議を行う必要があるので、注意しましょう。 具体的には、以下のような流れになっています。

  1. 特別後見人等の候補者を決める
  2. 候補者を交えて協議をして遺産の分け方を決め、遺産分割協議書の案としてまとめておく
  3. 遺産分割協議書の案を、その他の必要書類とともに、家庭裁判所に提出して、特別後見人等の選任を申し立てる
  4. 家庭裁判所が遺産分割協議書の案をチェックし、問題ないと判断すれば、選任の審判をして審判書を申立人と候補者に送付する

遺産分割協議のために特別後見人等が必要となるのに、なぜ選任の前に、候補者の段階で実質的な遺産分割協議をまとめておかなければならないかというと、選任の必要書類として、遺産分割協議書の案の提出が求められるからです。 家庭裁判所は、遺産分割協議書の案をチェックして、本人の利益が害されていないかチェックします。 家庭裁判所が、問題がないと判断すれば、選任の審判をして、審判書を申立人と候補者に送付します。 つまり、実質的には、選任は、遺産分割協議が認知症などの人の利益を害していないと「お墨付き」を与えるような意味があるのです。

遺産分割協議書の案を作成する際の注意点

申立てを行う前に、遺産の分け方をあらかじめ決めておく必要があることに注意しましょう。 裁判所は協議書案をもとに、「本人の相続分が法定相続分よりも少ないなど、不利益になっていないか」「本人以外の相続人が法定相続分よりも多く相続する場合、合理的な理由があるか」などをチェックします。 寄与分などを理由に本人以外の相続人の相続分を増やすような場合は、相続分が増える理由を協議書案に記載するようにしましょう。

特別後見人等になれる人

基本的に、本人と利害関係がなければ誰でもなることができます。親族ではなく、弁護士などの専門家に頼むこともできます。

申立てに必要な書類

申し立てるには、主に以下のような書類が必要です。

  • 申立書
  • 本人や申立人、後見人等候補者の戸籍謄本・住民票
  • 800円分の収入印紙
  • 連絡用の郵便切手
  • 遺産分割協議書案

申立書は裁判所のホームページで書式をダウンロードできます。 郵便切手は、家庭裁判所によって必要な額が異なるので、申し立てる家庭裁判所に確認しましょう。 上記以外にも必要になる書類がある場合があるので、申し立てる家庭裁判所に確認しましょう。

申立て後の流れ

家庭裁判所に必要な書類を提出し、提出した書類に不備がなければ、裁判所から特別後見人等の候補者に「照会書」が届きます。 「自分が特別後見人等となることの申立てが行われたことを知っているか」などの質問が記載されているので、候補者は回答して返送します。 回答した内容にも問題がないことが裁判所に認められると、候補者が特別後見人等に選任されたことを示す「審判書謄本」が、申立人と後見人等になった候補者に届きます。

正式な遺産分割協議書を作成する

候補者が特別後見人等に専任されたら、遺産分割協議書の案を、特別後見人等の署名を入れるなどして、正式な遺産分割協議書としてまとめましょう。

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