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特別受益

2017年06月20日

相続の不公平を調整する「特別受益」のルール・相続分の計算方法

亡くなった方(被相続人)の生前、特定の相続人だけが多額の援助を受けていたーー。 このようなケースで形式的に相続のルールをあてはめると「特定の相続人だけが多くの財産を受け取った」といった不公平が生じることになります。 こうした不公平を調整するための仕組みが「特別受益」というルールです。この記事では「特別受益」がどういう仕組みなのか、詳しく紹介します。

  • 特別受益にあたる財産
  • 特別受益の計算方法
  • 特別受益を主張する方法

目次

  1. どんな財産が特別受益にあたるのか
  2. 特別受益の計算方法
  3. 特別受益を主張する方法

どんな財産が特別受益にあたるのか

特別受益をざっくり説明すると、「生前の被相続人から多額の金銭などを譲り受けた」「遺言でひとりだけ高価な不動産を譲り受けた」など、他の相続人に比べて特別な利益を受けた相続人の取り分を減らして、相続人間の公平を図るルールです。 特別受益の対象となるのは、被相続人の生前に譲り受けた財産(生前贈与)と、遺言で引き継いだ財産(遺贈)です。 どんなケースが対象となるのか、具体的に確認していきましょう。

遺贈は常に対象、生前贈与はケース・バイ・ケース

「遺贈」、すなわち遺言によって引き継いだ財産は、常に「特別受益」にあたります。 一方、生前贈与の場合、特別受益の対象となるかどうかは、「相続財産の前渡し」とみられる贈与であるかどうかを基準として判断されます。 一般的には、次のようなポイントを吟味して、実質的に判断します。

  • 被相続人の家庭の生活水準に照らして、標準的な出費といえるか
  • 他の相続人との関係で不公平かどうか

たとえば、「結婚式費用や結納金」「扶養の範囲内の小遣いや生活費」などは、原則として特別受益の対象となりません。 親から子への「新築祝い・入学祝い」なども、親として通常の援助の範囲内でなされたお祝いであれば、特別受益にはあたりません。 「大学などの学費」は、被相続人の経済状況や社会的地位から考えて、相続人を大学などへ通わせるのが親として扶養の範囲内と考えられる場合や、他の相続人全員が同じくらいの教育を受けている場合には、原則として特別受益にあたりません。 一方、相続人のうち1人だけが大学に進学し、学費の援助を受けたような場合には、その援助は特別受益にあたる可能性があります。

特別受益の計算方法

生前贈与が特別受益となる場合、全ての相続財産の額にプラスして、それぞれの相続分を計算することになります。これを「特別受益の持戻し」といいます。特別受益分をプラスした財産を「みなし相続財産」といいます。

遺贈の額を戻す必要はありません。相続開始の時点では、遺贈の分は相続財産の中にあるため、相続財産から流出していないからです。

1. 遺産総額 + 生前贈与の額 = みなし相続財産額
2. みなし相続財産額 × 各人の法定相続分の割合 = 各相続人の本来の相続分
3. 本来の相続分 - 生前贈与または遺贈の額 = 各相続人の実際の相続分

「父・母・長男・長女の4人家族で父が亡くなった」というケースで、実際にどう計算するのか確認しましょう。父が亡くなった時、財産は次のような状況でした。

  • 父が遺した遺産は5000万円
  • 長男は、住宅資金として1000万円を父から生前に贈与された
  • 父は、遺言で長女に500万円の預貯金を遺贈した
  • 遺言で財産の分け方は指定されていなかった

特別受益のルールを無視して計算すると、それぞれの取り分は次のようになります。 父の遺言には財産の分け方は指定されていないので、法律のルールにしたがって、母が1/2、長男が1/4(1/2×1/2)、長女が1/4(1/2×1/2)ずつ財産を受け継ぎます(法定相続分)。

それぞれの取り分(特別受益のルールを無視した場合)* 妻:5000万円 × 1/2 = 2500万円
* 長男:5000万円 × 1/2 × 1/2 = 1250万円(+1000万円・生前贈与の分)
* 長女:5000万円 × 1/2 × 1/2= 1250万円(+ 500万円 ・遺贈の分)

次に、特別受益のルールをあてはめて計算してみましょう。 まず、「みなし相続財産額」を計算します。

みなし相続財産額5000万円 + 1000万円(生前贈与の額) = 6000万円

ここから、妻・長男・長女がそれぞれ受け取れる相続分を計算すると、次のようになります。

それぞれの取り分(特別受益のルールをあてはめた場合)* 妻:6000万円 × 1/2 = 3000万円
* 長男:6000万円 × 1/2 × 1/2 - 1000万円(生前贈与の額)= 500万円(+1000万円・生前贈与)
* 長女:6000万円 × 1/2 × 1/2 - 500万円 (遺贈の額)= 1000万円 (+ 遺贈分の500万円)

では、特別受益にあたる遺贈や生前贈与の額が、相続分の額と同じか、または超える場合は、どう計算すればいいのか、少しややこしいですが紹介しておきます(超過特別受益)。 先ほどのケースで長男が生前に受けた贈与を3000万円に変更して考えてみましょう。 まず、「みなし相続財産額」は次のように変わります。

みなし相続財産額5000万円 + 3000万円(生前贈与の額) = 8000万円

ここから、妻・長男・長女がそれぞれ受け取れる相続分を計算すると、次のようになり、長男の相続分がマイナスになります。

* 妻:8000万円 × 1/2 = 4000万円
* 長男:8000万円 × 1/2 × 1/2 - 3000万円(生前贈与の額)= ー1000万円(+3000万円・生前贈与)
* 長女:8000万円 × 1/2 × 1/2 ー500万円= 1500万円

このような場合、長男の相続分は「ゼロ」ということになります。 そのうえで、マイナス分の1000万円を、他の相続人がどのように負担するのかが問題になります。実務的な考え方は2つあります。 一つは、具体的相続分の割合で、長男以外の相続人(妻・長女)が不足分を負担するという考え方(具体的相続分基準説)。 もう一つは、本来的な相続分の割合で、長男以外の相続人(妻・長女)が不足分を負担するという考え方(本来的相続分基準説)。 専門的な部分なので、詳しい説明は省略して、計算式を紹介する程度にとどめておきます。

具体的相続分基準説* 妻:4000万円 ー {1000万円(不足分)×4000万円 / (4000万円+1500万円)} = 3272.72…万円
* 長男:ゼロ
* 長女:1500万円 ー {1000万円(不足分)×1500万円 / (4000万円+1500万円}= 1227.27…万円 (+遺贈分の500万円)

本来的相続分基準説* 妻:4000万円 ー{1000万円(不足分)×2 / (2+1)) = 3333.33…万円
* 長男:ゼロ
* 長女:1500万円 ー {1000万円(不足分)×1 / (2+1)}= 1166.66…万円 (+ 遺贈分の500万円)

「持ち戻しの免除」とは?

特別受益にあたる財産があっても、被相続人が遺言などで「特別受益の持ち戻しを免除する」との意思表示をしている場合は、特別受益のルールをあてはめずに相続分を計算することになります。 ただし、他の相続人の遺留分を侵害するような持ち戻しの免除は認められません。

特別受益を主張する方法

特別受益を主張したいと考えた場合、「何が特別受益なのか」ということやその内容(贈与の時期、贈与額など)を裏付ける資料を用意する必要があります。 相続人どうしでの話し合いがスムーズに進めば、特別受益があった者の相続分から「どのくらいの額をマイナスするか」を計算し、遺産を分けます。 話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てて、調停の中で特別受益を主張することになります。調停でも解決できない場合は、審判で裁判所に判断してもらうことになります。

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