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相続放棄

2018年02月21日

亡くなった人の給料や退職金を受け取ると相続放棄できない?

相続放棄を行う場合に、亡くなった人の財産を売ったり使ったりすると、「相続することを認めた」(単純承認)と扱われて相続放棄ができなくなる場合があります。この他に、どんなことが単純承認になるのでしょうか。

  • 死亡保険金や、生前支払われる予定だった給料を受け取ってもよい?
  • 退職金を受け取ってもよい?
  • 亡くなった人の預金から葬儀費用を引き出すことも単純承認になる?

このような疑問について「みんなの法律相談」に寄せられた実際の相談事例と弁護士の回答を元に解説します。

目次

  1. 死亡保険金や給料を受け取ると相続放棄できない?
  2. 退職金を受け取ってもよいのか
  3. 亡くなった人の預金を引き出して葬儀費用にあててもよい?
  4. まとめ

死亡保険金や給料を受け取ると相続放棄できない?

alt 死亡保険金や、亡くなった人に生前支払われる予定だった給料を受け取ることは、単純承認にあたるのでしょうか。

相続放棄に於ける葬祭費


相談者の疑問
実の父が亡くなりました。相続放棄をするつもりです。生命共済約300万円は母が受け取りました。

生前アルバイトをしていた会社から連絡があり、アルバイト代2万円と会社への出資金10万円を支払いたい旨の連絡がありました。

この場合、葬祭費の一部に充てるということで受け取ることは可能でしょうか?相続放棄に影響はあるのでしょうか?


鈴木 克巳弁護士
◆ 共済の死亡保険金は、おそらく受取人が「配偶者」指定となっていたがためにお母様が受け取ったものと思われますが、このように、受取人が指定されている保険などのお金は、当該受取人固有の財産であり、遺産ではありません。したがって、これを受け取っても、相続を承認したことにはならないので、お母様は相続放棄が可能な状況にあります。
◆ これに対して、アルバイト代と出資金は「遺産」です。よって、この遺産を取得することは相続の承認(法定単純承認)に該当します。

確かに、12万円と少額なので、これを取得し、葬儀費用に充てたとしても、相続の承認にはあたらない(形式的には該当するけれども、放棄が許されないと評価するには及ばない)との判断も可能かもしれません。

しかし、この点を債権者に追及されて、後々、うまく家裁で相続放棄の申述が受理されたとしても(家裁は、相続放棄が明らかに無効と言えるような場合を除けば放棄の申述は受理し、有効か無効かという最終的判断は地裁で決着を付けよというスタンスです)、やれ訴訟(家裁ではなく地裁)で決着を図ろうと言われる可能性もなきにしもありません。

以上から、12万円のために、背負い込むかもしれないリスクを考えると、ここは、慎重を期して、「受け取らない」という選択をする方がベターです。

死亡保険金は、受取人に指定されている人の財産と考えられるため、受け取っても相続放棄はできるようです。 これに対して、亡くなった人に生前支払われる予定だった給料を受け取ることは単純承認となり、相続放棄ができなくなるようです。少額であっても、受け取らない方がよいでしょう。

退職金を受け取ってもよいのか

alt 給料を受け取ると単純承認とみなされるようですが、亡くなった人の退職金を受け取った場合はどうなのでしょうか。

相続放棄を考えている場合の給与や退職金の受け取りについて


相談者の疑問
先日、義父が亡くなり、生前の素行に問題があり、多額の負債が想定されるため相続放棄を考えています。現在相続放棄の準備中ですが、死亡日以降に給与が母の作った通帳に振り込まれ、まだ手をつけていません。

退職金請求のための申請書が会社から送られてきたのですが、どうすればよいのか困っています。

①母の通帳に義父の給与が振り込まれていますが、まだ何も手を付けていません。この場合でも単純承認となるのでしょうか。また、相続放棄のために、まだ手立てがあるならば教えていただいてよろしいでしょうか。

②退職金の請求はまだ放置しておいた方がよろしいでしょうか。死亡退職金の定めが会社の規定にあるかは不明です。


岡田 晃朝弁護士
①母の通帳に義父の給与が振り込まれていますが、まだ何も手を付けていません。この場合でも単純承認となるのでしょうか。

なりません。普通に管理しておけばよいです。

②退職金の請求はまだ放置しておいた方がよろしいでしょうか。死亡退職金の定めが会社の規定にあるかは申し訳ありませんが、不明です。

規定は確認しましょう。

特に規定がなければ無理ですが、本人死亡時の受取人が「相続人」でなく、「配偶者」や「子」が受取人になっているときがあります。その時は相続財産ではなく、受け取れる可能性があります。

会社の規定で、退職金の受取人が「相続人」ではなく、「配偶者」や「子」になっていれば、相続財産にはならないため、受け取っても単純承認にあたらない可能性があるようです。

亡くなった人の預金を引き出して葬儀費用にあててもよい?

alt 亡くなった人の預金から葬儀費用を引き出した場合、単純承認とみなされて相続放棄ができなくなるのでしょうか。

相続放棄、預金を葬儀費用に。


相談者の疑問
父が亡くなり、翌日に父の預金からお金を引き出し、葬儀費用に充てました。母に負担を掛けぬよう、長女が引き出しました。

お金を使ったのは母ですが、引き出したのは長女です。共に相続放棄できないのでしょうか。


鈴木 克巳弁護士
大阪高等裁判所平成14年7月3日の決定は、

「葬儀は人生最後の儀式として執り行われるものであり社会的儀式として必要性が高いものである。・・・葬儀を執り行うためには必ず相当額の支出を伴うものである。

・・・被相続人に相続財産があるときは、それをもって被相続人の葬儀費用に充当しても社会的見地から不当なものとはいえない。また、相続財産があるにもかかわらず、これを使用することが許されず、相続人らに資力がないため被相続人の葬儀を執り行うことができないとすれば、むしろ非常識な結果といわざるを得ない・・・。

したがって、相続財産から葬儀費用を支出する行為は、法定単純承認たる「相続財産の処分」(民法921条1号)には当たらないというべきである」

と判示しており、これが通説・多数説と言っていいでしょう。

しかし、使った葬儀費用が、社会的に相当な葬儀費用の額を超えているような場合は、相続放棄はできないとの結論が取られるリスクはあります。

前述した裁判所の決定も、「相続人に資力がないと葬儀が行えないとなると、死者が気の毒だ。相当額の支出なら、遺産から出しても致し方ない」という価値判断があってのことです。

したがって、おろしたご長女にしても、使ったお母さまにしても、葬儀費用が社会的に見て妥当な金額(これがいくらかは何とも言えませんが、ちなみに、前述した裁判所の事例では「273万5045円」でした)であれば、相続放棄は有効と判断される可能性が高いでしょう。

過去の裁判例によれば、葬儀費用が社会的に見て妥当な金額であれば、亡くなった人の遺産から支払っても、相続放棄ができる可能性が高いようです。

まとめ

亡くなった人が生前受け取る予定だった給料は相続財産にあたるため、受け取ると単純承認になるようです。相続放棄ができなくなる可能性があるので、少額でも受け取らないようにしましょう。 一方、死亡保険金は「受取人」に指定された人の財産と考えられるため、受け取っても単純承認にはならないようです。退職金は、会社の規定次第では受け取っても単純承認にならない場合があります。 亡くなった人の預金の一部を葬儀費用にあてる場合、葬儀費用が社会的にみて妥当な金額であれば、単純承認にはならず、相続放棄に差し支えることはないでしょう。

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