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遺言書の書き方

2017年06月20日

「自筆証書」と「公正証書」2つの遺言それぞれのメリット・デメリット

自分の死後、親族が相続でもめないように、今のうちに遺言書を書き残しておきたいーー。そう考える人は少なくないと思いますが、遺言書には、法律で決められたいくつかの「形式」があることを知っていますか? この記事では、一般的によく利用されている「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」という2つの形式について紹介します。

  • 自筆証書遺言とは
  • 公正証書遺言とは
  • 作成の流れ・ポイント

遺言書はルールにしたがって作成しないと、後で「無効」になってしまうことがあります。遺言書の書き方に不安がある方は、ぜひこの記事を参考にしてください。

目次

  1. 遺言の形式
  2. 遺言の作り方

遺言の形式

遺言にはいくつかの形式がありますが、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」という形式が多く使われています。 ざっくり説明すると、自筆証書遺言とは、文字通り手書きで作成する遺言書です。公正証書遺言とは、遺言を残したい人(遺言者)が、公証人(元裁判官・弁護士など法律の専門家)に遺言の内容を伝えて、それをもとに公証人がまとめたものです。

自筆証書遺言の特徴

自筆証書遺言は、全文を手書きし、日付・署名・押印をしてつくる遺言です。全て本人が手書きする必要があります。ワープロやパソコンで本文を打ち込んで署名だけ手書きしたものや、他人が代筆したものは無効です。 日付は、「年月日」まで書かなければなりません。「年月日が書いていない」「年と月しか書いていない」「『○年×月吉日』などと書いていて日付が特定できない」などの記載だと、やはり遺言は無効になります。 手軽に作成できることが自筆証書遺言のメリットですが、書き方や形式に細かいルールがあり、少しでも間違いがあると無効になるリスクがあります。 また、自筆証書遺言の場合、相続人が遺言書を発見した段階で、家庭裁判所で「検認」という手続きを受ける必要があります。 遺言が封印(封筒がのり付けされ、印鑑が押された状態)されている場合は「検認」の手続きが終わるまで開封することができません。 これらのルールにしたがわないと、「5万円以下の過料」というペナルティーを受ける可能性があります。 こうしたペナルティーがあることに加えて、相続人が遺言にしたがって遺産を処分する場合に、検認を受けたということの証明書が必要になる場合があります。 たとえば、預金口座の名義変更や不動産の相続登記、自動車の名義変更などは、検認を受けた証明書がないと手続きを進めることができません。

検認を受けずに開封しても、そのことを理由に遺言が無効になるわけではありません。

検認の手続きについて詳しく知りたい方は、次の記事をご覧ください。

公正証書遺言の特徴

公正証書遺言は、遺言者が、証人2名以上の立ち会いのもとで、公証人に遺言の趣旨を口頭で伝え、それを公証人が筆記することで作成されます。 作成された遺言書の原本は公証役場に保管されるため、自筆証書遺言のように、内容を書き換えられる、破棄される、隠されるといった心配がありません。 検認も不要なので、相続人が遺言書を発見した場合、すみやかに相続の手続きをはじめることができます。 また、公正証書遺言は、公証役場で検索できるため、遺言書の有無をすぐに確認することができます。 さらに、専門家である公証人がチェックして作成するため、無効になる可能性は自筆証書遺言よりかなり低いといえるでしょう。 一方で、公正証書遺言は、作成に手間や費用がかかるなど、自筆証書ほど手軽につくることはできません。 また、公正証書遺言は、一般的に無効になるリスクは少ないですが、その可能性がまったくないわけではありません。 遺言者が認知症にかかっていたケースで、公正証書遺言が無効と判断された裁判例があります。 また、公正証書遺言を作成する際は、2人以上の証人が立ち会うことが必要ですが、証人の資格がない人が立ち会った場合も遺言は無効になります。 立ち会う資格がない(欠格事由がある)のは次のような人たちです。

  • 未成年者
  • 推定相続人(遺言を書いた人の死後、遺産を受け継ぐ可能性がある人)、その配偶者と直系血族(父母、祖父母、子、孫など)
  • 受遺者(遺言によって遺産を受け取る者)、その配偶者と直系血族
  • 公証人の配偶者、4親等内の親族、書記、雇人

それぞれの特徴

自筆証書遺言 公正証書遺言
長所 ・手軽に作成できる
・内容を他人に知られない
・形式の不備などで無効になるリスクが低い
・変造や隠匿されるリスクが低い
・検認が不要
・病気などで自書できない人でも作成できる。
短所 ・形式の不備で無効になるリスクがある
・変造や隠匿のリスクがある
・検認が必要
・自書できない人は作成できない。
・費用、証人を選任するなどの手間がかかる。
・遺言の内容が証人ら他人に知られる
作り方の流れ 本人が全て自筆する (1)証人(2人以上)の立会いのもと、遺言者が内容を口授(くじゅ・口頭で伝える)。
(2)口授の内容を公証人が筆記
(3)筆記したものを公証人が遺言者と証人に読み聞かせる
(4)公証人、遺言者、証人がそれぞれ署名押印する。
保管場所 ・タンスや銀行の貸金庫など、死後に相続人が発見しやすい場所に保管する。
・遺言執行人など信頼できる第三者に預けると変造や隠匿のおそれが小さい。
・公証役場で原本が保管される。
・同内容の正本が遺言者に交付されるため、相続人が見つけやすい場所に保管するか、遺言執行人などの第三者に預けておく。
・法定相続人等は、全国の公証役場で、被相続人の公正証書遺言が存在するか検索することが可能。

遺言の作り方

自筆証書遺言の作り方

自筆証書遺言 まず、自筆証書遺言を作るときには、「全て遺言者が手書きする必要がある」という点に注意しましょう。 筆記用具に指定はありませんが、書き換えられるリスクや、消えて読めなくなってしまうのを防ぐために、消せるインクのボールペンや鉛筆などは避けましょう。 用紙の指定もありませんが、なるべく耐久性の高い紙が望ましいです。縦書き・横書きどちらでもOKです。 具体的には、以下のような内容を記載します。

書く内容 備考
タイトル 「遺言書」など
※遺産分割の方法 誰に遺産を与えるのか・遺産の内容・それぞれの相続人の取り分
遺言執行者 指定する場合は記載(任意記載事項)
付言事項 遺産の分け方の理由、相続人への感謝など(任意記載事項)
遺言を書いた日の正確な日付 必ず「年月日」まで自筆する。「年と月しか書いていない」「2017年6月吉日」などの書き方は無効。
遺言者の名前と住所、押印 名前・住所ともに自筆する。印鑑は実印か認印を使う。

※遺言書には、遺産分割の方法の他にも、遺言の内容を誰に実行してもらうか(遺言執行者)といったことや、生命保険金の受取人の指定・変更などさまざまなことを定めておくことができます。ここでは、シンプルに説明するために、遺産分割の方法のみのケースとして紹介します。

遺言を書いたら封筒に

作成した遺言は封筒に入れておきましょう。封筒の表には「遺言書」と記載します。のりづけして封印する場合は、遺言の本文を書くときに使った印鑑と同じもので押印します。 封筒の裏には「開封せずに家庭裁判所に提出すること(封印した遺言書を開封する際は検認が必要)」と書きます。そして、本文と同じように、「作成した日の正確な日付」を書き、「署名と押印」をします。

公正証書遺言の作り方

公正証書遺言は、遺言者が口頭で伝えた内容を公証人が文書にまとめて作りますが、内容の原案を考えるのは遺言者です。まずは、誰にどの財産を相続させるのか、具体的に検討しましょう。 作成には、2名以上の証人の立ち会いが必要なので、証人を依頼する人を決めます。未成年者や推定相続人、受遺者などは証人になることができません。 自分で適切な人を選べない場合は、公証役場に、信頼できる証人を手配してもらうこともできます。費用は一人につき数千円から1万円程度です。 内容の原案を考え、証人を選定したら、公証役場で、遺言者、公証人、2名以上の証人がそろったうえで公正証書遺言を作成します。

公証役場での手続きの流れ

作成時に必ず用意しておきたいのは、以下の書類です。この他にも、財産の内容に応じて必要になる書類があります。公証役場から追加で書類を提出するよう求められる場合もあります。

  • 遺言書の原案
  • 遺言者の印鑑登録証明書(作成日から3か月以内に発行されたもの)
  • 遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本(作成日から3か月以内に発行されたもの)

公証役場では、まず内容についての打ち合わせが行われます。 公証人が、遺言者から財産の分配について話を聞き、その意向に沿って公正証書遺言の正式な原案を作成します。遺言者が考えた原案の細かい内容を詰めることも、この時に行います。 遺言作成は、通常は公証役場で行います。病気などを理由に別の場所で作成することも可能ですが、別途費用がかかります。 作成日当日の所要時間は、通常の場合、30分ほどです。遺言者と証人2名の前で公証人が遺言の内容を読み上げ、最終確認を行います。 遺言者と証人が証書に署名・押印して、完成です。身体的な理由で遺言者が署名できない場合は、公証人の代筆も可能です。 作成した原本は公証役場で長期間保管され、同一内容の正本と謄本を遺言者が持ち帰ります。

公正証書遺言の手数料

公正証書遺言を作成する手数料は、財産額に応じて変わります。

                                        
遺言書に書く財産額 公正証書作成手数料
100万円まで 5,000円
200万円まで 7,000円
500万円まで 1万1,000円
1,000万円まで 1万7,000円
3,000万円まで 2万3,000円
5,000万円まで 2万9,000円
1億円まで 4万3,000円
3億円まで 4万3,000円に、5,000万円までごとに1万3,000円を加算
10億円まで 9万5,000円に、5,000万円までごとに1万1,000円を加算
10億円以上 24万9,000円に、5,000万円までごとに8,000円を加算

手数料令19条では「遺言加算」という特別の手数料を別途定めています。1通の遺言公正証書における財産の総額が1億円未満の場合は、1万1,000円が加算されますので注意してください。

具体的に計算した例を紹介しておきます。それぞれ「財産は4000万円、相続人は妻と子」「財産は4000万円、相続人は妻のみ」「財産は1億2000万円、相続人は妻のみ」というケースです。 alt

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