「先日、自宅のパソコンから主人の浮気の証拠が出てきました。ラブホテルでの二人の写真やデート中の女性の写真です」。そんな告白が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられている。相談主の女性は夫に愛想をつかして離婚したいと考えているようだ。
一方、女性には離婚に踏み出すのをためらう理由もある。それは、当面の生活費がないことだ。「専業主婦で、自分の貯金もありません」「家のお金は主人が管理しています」。そう告白する女性。離婚を切り出せば別居に至る夫婦も多いが、別居してからの生活費はどうすればいいのだろう。
もしこのようなケースで別居した場合、離婚成立までの間、夫から生活費をもらい続けることはできるのだろうか。それとも別居している以上、生活費を稼ぐために働くしかないのだろうか。離婚問題にくわしい大和幸四郎弁護士に聞いた。
●夫婦生活の費用分担義務は別居しても続く
「夫婦生活をしていくうえで必要な費用を『婚姻費用』と呼びます。夫婦には、それぞれの収入などに応じて婚姻費用を分担する法律上の義務があります」
――分担義務があるということは、生活費も払ってもらえる?
「結論としては、そうですね。離婚していない以上は夫婦ですので、夫は婚姻費用を分担する……つまり専業主婦の妻に対して、生活費を支払う義務があります。
婚姻費用については、同居の場合にはあまり問題となりませんが、特に夫婦が上手くいかずに別居した場合などには大問題になり得ます。私も、よくこういった相談を受けますよ」
●支払ってもらえない場合は「調停」や「審判」を申し立てることになる
――「支払ってくれない」ケースもままある?
「そうですね。この婚姻費用を夫に請求して、支払ってくれれば問題はありません。ところが、夫が支払ってくれないケースもあります。
その場合は、家庭裁判所に婚姻費用分担の調停を申し立てることになるでしょう。
調停でも話がまとまらない場合は、家庭裁判所の審判を求めることになります。審判では、裁判所が調査のうえ、適当と思われる婚姻費用の支払いを命令することになります」
――夫が調停や審判の内容に従わない場合は?
「もし、夫が調停や審判で決められた婚姻費用を支払わなかった場合には、裁判所に申し立てて、夫の財産に強制執行をかけることも可能です。
なお、一刻も早く支払いが必要な場合、応急処置として、婚姻費用分担の審判を申し立て、『審判前の保全処分』を申し立てる方法もあります」
――認められる金額は?
「ケースバイケースですが、本件のように夫の浮気が離婚のきっかけになっている場合には、相当とされる生活費全額の請求が認められやすくなるでしょう。
ただし、貯金や仕事がない場合に別居・離婚へと進むのは、それらがある場合に比べてかなりの困難が伴う……というのが相談を受けていての実感です」