
離婚後も同居はおかしい?彼氏ができたら不貞行為になる?母子手当や世帯分離など離婚後も同居する場合に知っておくべき4つのこと
離婚した後も、引越先が決まらなかったり、経済的な理由だったり、子どもの環境を考えたりして、元配偶者と同居を続けたいと思う人もいるでしょう。この記事では、離婚後の同居は可能なのか、同居した場合の手当や世帯分離などの手続き、同居中に新たなパートナーを作った場合の法的問題について、弁護士ドットコムの「みんなの法律相談」に寄せられた実際の相談事例と弁護士の回答を元に解説します。
目次
離婚後も同居は可能?おかしいことなのか?
そもそも、離婚後に同居を続けることは可能なのでしょうか。
相談者の質問
この度、協議離婚が成立しました。離婚後は経済的な事情もあり、しばらくは同居となります。
この状態でも離婚は成立しているという認識でよろしいでしょうか?
弁護士の回答早坂 英雄弁護士
離婚届が提出され、受理されていれば、法的には離婚していることになります。同居が継続しているかどうかは無関係です。ただ、法的に離婚していても、これまでと同じように実質上夫婦としての実態があるとみられる場合、対外的には、「事実婚状態」や「内縁状態」と見做される可能性があります。
離婚後に同居を続けることは、法的にはおかしいことではないようです。 内縁状態とは、どのような状態のことをいうのでしょうか。
相談者の質問
彼と内縁関係にあると認められますか?
半年間、一緒に暮らしています。性的関係を持ち、子どもを妊娠しました。
家賃・光熱費は彼が、食費は私が負担しています。
周りには関係を隠していましたが、私は職場に妊娠を報告しました。
弁護士の回答吉田 英樹弁護士
内縁関係とは、婚姻届を提出していないものの、婚姻の意思を持ち、夫婦同然の生活をしている男女関係のことをいいます。単に同居しているのみではこれにあたりません。今回のケースでは、お互いに婚姻の意思を持ちつつ、財産状況も含め、夫婦同然の生活をしていたとすれば、これにあたると考えられます。内縁関係が認められれば、不貞行為などに対する慰謝料請求、内縁関係について正当な理由なく解消した場合には、慰謝料請求が認められる例があります。また出産した場合には、内縁関係の有無に関わらず、認知、養育費の請求をすることも考えられます。内縁関係をもとに、何らかの請求を考えておられるとすれば、一度弁護士に面談相談をされておかれた方が無難です。
離婚後に同居しても母子手当はもらえる?
離婚後に同居を続けた場合、児童扶養手当(母子手当)は受給できるのでしょうか。
相談者の質問
離婚を考えて協議中です。子どもたちが小さく、養育費の支払いを考えると別々に暮らしていくことは金銭的に厳しいので、離婚後も何年かは住宅ローンの支払いをしながら同居したいと思っています。
同居といっても、家事や家計は完全に別とし、どちらが親権者になったとしても、親権者側に算定表通りの養育費を支払うつもりです。
離婚後に同居しますが、世帯分離をし、生計が完全に別であると証明でき、住宅ローンの名義人である夫と賃貸借契約を結んで家賃を支払う形にした場合、児童扶養手当は受け取れますか?それとも同居している場合はどうあっても児童扶養手当は受け取れませんか?
弁護士の回答川崎 政宏弁護士
児童扶養手当は、ひとり親支援のための制度なので、籍だけ抜いて外形上ともに同じ屋根の下で暮らしていると、行政側からは内縁関係と認定される可能性が高いです。特に共同監護の合意をしていれば尚更です。
離婚後同居中に彼氏・彼女をつくったら不貞行為になる?
離婚後、同居中に新しいパートナーを作った場合、不貞行為として元配偶者から慰謝料を請求される可能性はあるのでしょうか。
相談者の質問
離婚後同居をしています。お互い嫌いになったわけではなく、生活費を折半にし、普通の家族として生活していました。親や子供や世間には公表していません。いずれまた、籍を戻す話も出ており、お互いの関係は良好だと思っていました。ですが元夫が他の女性と同棲しているらしく、先日突然音信不通になりました。
離婚しているとはいえ、事実上内縁関係としての生活をしているため、相手の女性に慰謝料請求を考えていますが可能でしょうか?
弁護士の回答内藤 幸徳弁護士
内縁関係が認められ、かつ、相手方が内縁について故意・過失があれば、請求し得ます。
元配偶者との関係が内縁関係にある場合で、新たなパートナーが内縁関係であることを知っているようなケースでは、慰謝料を請求できる可能性があるようです。
離婚後同居中に彼氏・彼女を作っても慰謝料請求されないためには?
離婚後、同居中に新たなパートナーを作ったときに、慰謝料請求されないためには、どのような対策をすればよいのでしょうか。
相談者の質問
現在、離婚後同居をしています。同居理由は子どもの環境を変えないためです。
離婚後同居の場合は内縁(事実婚)となる可能性が高いと聞きました。新しいパートナーを年齢的にも子育てに支障がないように探したいのですが、内縁となると慰謝料などの請求をされるのでは?と思いました。
元妻とどのような話し合いをしたり、書類を作成したりしておけば問題ないのでしょうか。
弁護士の回答齋藤 裕弁護士
心配であれば、お子様のためだけに同居をしているため双方とも相手方が異性と交際することについて異議はない旨書面を作成して今の状態をはっきりさせてはどうでしょうか。
双方署名、実印を押印すればよいと思います。公正証書まで作る必要はないと思います。
離婚後に同居するなら世帯分離すべき?
世帯分離とは、同居している家族の住民票の世帯を分けることです。離婚したとしても、住民票を変更していなければ、同一世帯のままです。 同一世帯のままでも、離婚していれば戸籍上は他人なので、税金は別々に計算されます。ただし、社会保険料(健康保険料や介護保険料)は、事実婚(内縁関係)が認められる場合には、扶養に入って片方が保険料を負担することができます。また、保育料の計算で、世帯年収が基準になる場合があります。 世帯分離をすると、あなたが世帯主となる新たな世帯でできます。住民票には世帯主から見た続柄が記載されるので、前の世帯の続柄と新しい世帯の続柄が変わります。具体的には、離婚後に同居して同一世帯のままの住民票では、「夫」や「妻」だった続柄は「同居人」と記載されます。世帯分離をした場合には、あなたは「世帯主」と記載されます。 また、世帯分離をした場合、住民票の写しを取り寄せることができる人が変わります。元配偶者の世帯の住民票の写しを取り寄せる場合には、その世帯に入っている人からの委任状が必要になります。 住民票上も異なる世帯であることを示したい場合や、住民票の続柄の表記が気になる場合には、世帯分離の手続きを検討するとよいでしょう。
まとめ
離婚後に元配偶者と同居を続けることは可能です。いずれ同じ相手と復縁して再婚するなど、婚姻の意思がお互いにあり、夫婦同然の生活をしている場合には、内縁関係(事実婚)にあると認められます。内縁関係が認められる場合には、新たなパートナーを作った場合、慰謝料請求される可能性があります。また、児童扶養手当などのひとり親支援が受けられない可能性があります。 離婚後に同居するかどうかは、メリットとデメリットを理解して決めるようにしましょう。