財産分与

弁護士監修記事 2016年05月26日

財産を隠されたとき・隠されないための対処法

離婚の協議に入り、財産分与について考える中で、相手に財産を隠されていないか不安になることもあるでしょう。ここでは、財産隠しによく用いられる方法を紹介します。財産隠しを未然に防ぐための対策や、隠された財産を探す方法についても合わせて確認しましょう。

目次

  1. 財産隠しに用いられる手口
  2. 隠される前の対策が重要
  3. 財産隠しを防ぐための手段
  4. 仮差押
  5. 仮差押の手続きに必要な書類
    1. 取得が必要な証明書
    2. 作成が必要な書類
    3. 申立に必要な費用
  6. 仮差押の流れ
    1. 書類の提出
    2. 裁判官との面接
    3. 担保金供託・仮差押決定
  7. もし財産を隠されたら
    1. 弁護士会照会

財産隠しに用いられる手口

結婚後に築き上げてきた財産は、現金、預金はもちろんのこと、不動産や自動車に至るまで、幅広く財産分与の対象となります。分与の取り決めをする際には、夫婦が共通で認識している財産を分割することになるため、それに先立って一方が管理している財産を、相手の目の届かないところに移転してしまうケースが考えられます。 よくある例は現金、預金です。いわゆる「へそくり」「タンス預金」として、配偶者の目に触れない場所に現金を保管することもあれば、密かに口座を作って、預金を移転する手法もあります。 他には、貴金属や株券といったかたちで、一方の実家など、相手の目につきにくい場所に置いておくこともあります。不動産の場合には、登記されている名義を兄弟姉妹、親などに変更して実態をごまかす、あるいは売却して得た代金をどこかの口座に隠す、などといったケースが多くなっています。

隠される前の対策が重要

仮に配偶者が離婚前に財産を隠した場合、その所在を突き止めることには困難を伴います。 配偶者があなたの知らない預金口座に財産を移したとすると、まずその口座を見つけ出さなければなりません。取扱銀行や支店名、口座番号が判明したとしても、口座の名義人本人の申し出がない限り、銀行は口座残高や入出金の履歴を公開することはありません。また、裁判所が財産の捜索を行うこともありません。調停では、当事者の提示した財産をもとに判断が下されるためです。 こうした事情から、財産分与では、離婚を考えた段階から相手の財産を知り、移動される可能性があるものについては、あらかじめ対策を取ることが重要になります。

財産隠しを防ぐための手段

まずは配偶者の資産状況を詳しく把握するために、相手が預金通帳、株券、不動産の権利書などを持っているかどうかを確認し、可能ならコピーを取っておきましょう。 当然ながら、相手が見せたくない情報を探っていくことになるので、離婚を現実的に考えている状況とはいえ、パートナーとの信頼関係に影響が及ぶこともあります。慎重に確認を進めていきましょう。 もしまとまった財産を管理しているという見当がついたら、隠されてしまう前に手を打つことが重要となります。その場合には「仮差押」が有効です。

仮差押

仮差押とは、今後生じうる債務が十分に履行されるように、相手の財産の処分に制限を加えるための手段です。例えば銀行口座を凍結する、不動産の登記変更を不可能にして売却を防ぐ、などの効果があります。対象となる財産を指定して裁判所に許可を求め、仮差押が認められると、裁判所から各財産を管理する機関に通達が届きます。 以下では、相手の銀行口座を対象とした手続きを例に取って流れを説明します。不動産の仮差押は手続きが複雑なので、検討する場合には弁護士に相談しましょう。

仮差押の手続きに必要な書類

取得が必要な証明書

仮差押の申立を行うには、まず以下の証明書を取得します。

戸籍謄本・商業登記簿謄本(当事者の資格証明書)

夫婦それぞれの戸籍謄本を添付します。銀行口座を差し押さえる場合は、銀行の商業登記簿謄本(現在事項証明書)も併せて提出します。

債務者の住所の不動産登記事項証明書

仮差押を検討する際には、まずは不動産を差し押さえることが優先されます。しかし、賃貸マンションに住んでいる場合など、不動産を持っていないケースでは、銀行口座を差し押さえたいでしょう。 そのような場合に、不動産を仮差押できないことを示すためにこの書類を添付します。所管の法務局で取得するほかに、「法務省のホームページ」からも請求できます。

作成が必要な書類

続いて、以下の書類を作成します。書き方が複雑であると感じたら、弁護士に作成を依頼するとよいでしょう。

申立書

申立てに必要な書面です。詳しい書き方は裁判所のホームページに示されています。保全を受ける権利としては、自身が離婚時の財産分与について協議していること、保全を求める理由としては、夫婦が共同で築いてきた財産を一方的に隠されるおそれがあるため、という内容を記します。

保全の必要性を明らかにするための資料

相手が財産隠しを図っていることを示します。相手が不自然に銀行口座を複数持っているのであれば、それぞれの通帳のコピーを添付するなど、証拠となる資料があると有効です。 また、ここでは自身の体験、状況を具体的に説明するために、「陳述書」という書面を作成するのが一般的です。離婚や財産分与について相手と話し合っている内容や、相手が財産を隠そうとしていると考えられる理由・背景について、詳しく書きましょう。

第三債務者に対する陳述催告の申立書

銀行口座や家賃のように、仮差押しようとしている財産が、他者からお金を得る債権である場合に、その債務を負う者を「第三債務者」と呼びます。銀行口座では銀行、家賃では借主が第三債務者となります。 この書類を裁判所に送付することで、差し押さえる債権の存在や金額について、第三債務者から通達が届くようになります。

申立に必要な費用

  • 収入印紙:2000円(第三債務者がいる場合は+2000円)
  • 郵便切手:3000円前後(裁判所によって異なる)

申立の際は上記のものが必要となるほか、証明書の取得にも費用がかかります。合計金額は6000〜8000円程度になります。

仮差押の流れ

書類の提出

必要なものが準備ができたら、所管の裁判所に提出します。各書類の確認に30分から1時間を要するため、時間に余裕を持って行くようにしましょう。

裁判官との面接

通常は決定前に裁判官との面接が行われます。裁判所によっては面接日時を予約できないところや、面接の時に証拠の原本を持参するよう求めるところもあるので、事前に問い合わせましょう。

担保金供託・仮差押決定

仮差押が認められた際は、法務局に担保金を納める必要があります。財産分与をめぐる仮差押であれば、差し押さえる財産価値の10〜15%程度が一般的です。申立人が専業主婦で収入がない、といった状況では、担保金を納めなくても申立てができる場合があります。 申立てが裁判所で妥当と判断されれば、担保金を法務局に供託したのち、仮差押が決定されます。申立者は保全決定正本を裁判所の窓口で受領します。

もし財産を隠されたら

相手方が管理する財産に目を配っていたとしても、銀行口座の残高が突然に減ったり、あるはずの物がいつの間にか売却されていた、ということは起こります。前述の通り、隠された財産を見つけ出すのは非常に困難ですが、諦めてしまう前にできることがあります。

弁護士会照会

弁護士から企業や団体に対し、事件解決に向け必要な事項の調査や確認を認める法律があります。この制度は、弁護士が所属する各地の弁護士会を通じて行使されるため、弁護士会照会制度と呼ばれます。 照会が行われるかどうかは個別の事情や弁護士会の判断次第ですが、企業や団体には照会に回答する義務があり、銀行口座の預金や不動産の行方をたどる際に有効となりうる手段です。例えば動向を追っていた口座の預金が突然減り、所在を突き止めたい場合などに効果的です。

離婚、そして財産分与が現実的になってきた段階で、夫婦の財産についてなるべく詳細に把握するように務めることが、財産隠しの問題を防ぐうえで最も重要です。預金の動向を追うのも手間がかかりますが、不動産が対象となっている場合には、実際の価値が簡単には分からないため、より複雑な問題が生じることも考えられます。 財産分与に関して不透明な点、わかりにくい点が生じたら、弁護士に相談するとよいでしょう。

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