別居するとき配偶者に婚姻費用を支払う必要がある場合とは

離婚に先立って別居するとき、配偶者に比べて自分の方が収入が多いような場合、配偶者に生活費を支払う義務を負うことがあります。 夫婦には結婚生活を送るうえで必要な費用(婚姻費用)を分担する義務があり、別居中もその義務は続くからです。 この記事では、「そもそも婚姻費用とは何か」「どのくらい支払う必要があるのか」といったポイントについて詳しく解説します。

目次

  1. 婚姻費用とは?
    1. 婚姻費用の計算方法と算定表の見方
  2. 婚姻費用分担請求調停の流れ
  3. 申立て先
    1. 申立てに必要な書類
    2. 調停ではどんなことをするのか
    3. 調停で決着がつく前に婚姻費用の支払いを命じられることがある
    4. 支払いを拒否するとどうなるのか

婚姻費用とは?

alt 婚姻費用とは、結婚生活を営む上で必要な費用のことです。夫婦には、それぞれが同じくらいの水準で生活を続けるために必要な費用を分担する法律上の義務があります。 この費用には、衣食住にかかるお金のほか、医療費、交際費、子どもがいる場合はその養育費なども含まれます。 一般的に、婚姻費用は、収入が多い配偶者(義務者)が収入の少ないもう一方の配偶者(権利者)に対して支払うという形で分担します。 別居中であっても、婚姻関係は続いています。そのため、別居した配偶者に収入がない(少ない)場合や、自分より収入が多くても子どもを引き取って育てているなどの場合は、婚姻費用を支払わなければならないことがあります。

婚姻費用の計算方法と算定表の見方

婚姻費用の金額は、家庭裁判所が参考にしている算定表が目安になります(2019年12月23日に改訂版が公表されました)。 alt 算定表に書かれた金額を目安に、支払い金額や支払い方法について夫婦で話し合います。 子どもの人数と年齢によって、見るべき表が違うので、まずは自分のケースに当てはまる表を探しましょう。 表では、縦軸が婚姻費用を支払う側の年収、横軸が受け取る側の年収となっていて、その交差するゾーンに書かれた金額が婚姻費用の目安を表しています。 子どもの年齢、人数、お互いの年収、会社員か自営業かなどで額が変わります。 改訂版をもとに計算例をあげると、次のようになります。

婚姻費用が月額12~14万円(「算定表」の「表13 婚姻費用・子2人表(第1子及び第2子0~14歳)」参照)・夫:会社員で年収600万
・妻:パートで年収150万円
・第1子:12歳
・第2子:10歳

※妻が子どもを引き取って育てていて、妻から夫に婚姻費用を請求するケースを想定

婚姻費用が月額8~10万円(「算定表」の「表12 婚姻費用 ・ 子1人表 (子15歳以上)」参照)・夫:自営業で年収450万
・妻:会社員で年収400万
・子ども:17歳

※妻が子どもを引き取って育てていて、妻から夫に婚姻費用を請求するケースを想定

夫婦で話し合って合意すれば、算定表の目安以上の金額を設定することもできますし、逆に少ない金額を設定することもできます。

話合いがまとまらないとき

alt 婚姻費用について夫婦間での話合いで決めることができない場合には、家庭裁判所に対して「婚姻費用の分担請求調停」を申し立てることができます。 たとえば、「配偶者が算定表よりかなり高額な婚姻費用を請求してきて、話合いが難航している」という場合、調停を利用することで解決を目指せるでしょう。 婚姻費用の分担請求調停は、離婚をするかどうかまだ決まっていない段階でも申し立てることができます。離婚調停を利用することが決まっていれば、同時に申し立てることもできます。 逆に、あなたが婚姻費用の支払いを拒否している場合、配偶者から調停を申し立てられる可能性があります。

婚姻費用分担請求調停の流れ

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申立て先

申立て先は、配偶者の住所地を管轄する家庭裁判所か、当事者が合意して決めた家庭裁判所です。 住所地とは、生活の本拠、つまり「主に生活をしている場所」のことです。本籍地とは関係ありません。たとえば、配偶者が別居してアパートを借りている場合や、実家に戻ってそこで主に生活している場合には、その場所が住所地となります。 裁判所の管轄区域はこちらから確認できます。

申立てに必要な書類

申立てには、次の書類が必要です。

  • 申立書とそのコピー1通(裁判所のホームページからダウンロード可能)
  • 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 申立人の収入に関する資料(源泉徴収票、給与明細、確定申告書などのコピー)

この他、追加書類の提出が必要な場合もあります。また、申立ての費用として、収入印紙1200円分と連絡用の郵便切手が必要です。

調停ではどんなことをするのか

調停は平日に行われ、1回にかかる時間は2時間ほどです。申立人と配偶者はそれぞれ別の待合室で待機し、交互に調停室と呼ばれる部屋に入ります。 実務上、調停が始まる時に、申立人と配偶者が同席のもとで、調停という手続きについて説明を受けることが原則ですが、同席を拒否することもできます。 調停室では、夫婦の資産・収入・支出といったあらゆる事情について、調停委員による聞取りが行われます。 調停委員とは、弁護士や医師など豊富な専門知識と経験をもつ人です。当事者それぞれの事情をニュートラルな立場で聞き取り、婚姻費用の算定表を参考にしながら、双方の合意を目指して解決案やアドバイスを提示します。 調停での話合いがまとまらない場合、調停は不成立となり終了します。その後、自動的に審判という手続きに移ります。審判では、裁判官が一切の事情を考慮して、婚姻費用の金額を決定します。 調停で解決すると「調停調書」、審判で解決すると「審判書」という文書が家庭裁判所で作られます。 審判の決定に納得できない場合は、2週間以内に不服申立てをすれば、審判は確定せず、高等裁判所で判断がやり直されます。 婚姻費用の支払額などが決まった場合、申立人が申し立てた月から和解が成立した月までの婚姻費用については、ある程度まとまった金額を支払うことになります(決まった月以降については各月ごとに支払い)。 調停の和解であれば、相手が合意してくれれば分割支払いもあり得ますが、審判となればまとまった金額を一括払いすることになります。 その点は、心づもりをして、別居開始時より貯金などをしておいた方がよいかもしれません。

調停で決着がつく前に婚姻費用の支払いを命じられることがある

調停での話合いに決着がつくまでには、ある程度の時間がかかります。 配偶者に収入がないなど、「すぐに婚姻費用が支払われないと生活に困る」という場合に、調停委員や裁判官が、職権で婚姻費用を支払うように仮の処分を命じることがあります(調停前の処分)。 この処分が出された場合、調停で決着がつく前に、配偶者に対して婚姻費用を支払うことになる可能性があります。

正当な理由なくこの処分に従わない場合、10万円以下の過料というペナルティが課せられます。

調停前の処分のほかにも、配偶者が「審判前の保全処分」という手続きを利用した場合も、婚姻費用として仮に一定額を支払うよう決定が下される可能性があります。 審判前の保全処分は、生活費が支払われないとすぐにでも生活が困窮してしまうなど、緊急の必要がある場合に認められます。 この処分に従わない場合、給与口座などを差し押さえられ、そこから婚姻費用を支払うことになる可能性があります。

支払いを拒否するとどうなるのか

alt 調停や審判で、婚姻費用を支払うよう判断されたのに、支払いを拒否した場合は、配偶者の裁判所への申立てによって、「履行勧告」「履行命令」「強制執行」といった措置をとられる可能性があります。 履行勧告は、家庭裁判所の調査官が、電話や手紙、訪問などの方法で、婚姻費用を支払うよう勧告をすることです。 履行勧告をされても支払いを拒否すると、履行命令を申し立てられる可能性があります。履行命令とは、家庭裁判所が相当と認める場合に、期限を決めて、「この時までに支払いなさい」と命じる措置です。 履行命令に従わず、婚姻費用を支払わない場合には、10万円以下のペナルティが課せられます。 強制執行は、財産(給与、口座預金、不動産など)を差し押さえて、そこから婚姻費用を支払わせる措置です。 最後に、ここまでのポイントを振り返ってみましょう。重要なことは次の3点です。 alt 別居をしても婚姻関係が続いている以上、婚姻費用を夫婦で分担する義務があることを理解しましょう。

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