「セフレの子を妊娠しました。相手に養育費を求めることはできるのでしょうか」。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、そんな相談が寄せられた。
相談者の女性は、セックスフレンドとの間に子ども授かり、一度は中絶することも考えていたそうだ。相手の男性との間で中絶同意書も書いていたという。しかし、その後、母性に目覚め、「この子を産みたい!」という気持ちが湧き、中絶手術を見送ったそうだ。
女性は、相手の男性に認知してもらって、養育費を支払ってほしいと考えている。だが、相手の男性に中絶手術をしなかったことを告げると、彼は激怒し、「約束を破ったんだから、こちらも責任を果たす義務はない」と言ったそうだ。
相談者は「愛情はもうありませんし、結婚は望んでいません」と話しているが、このような場合でも、男性に子どもを認知させ、養育費を支払わせることができるのだろうか。男女トラブルの法律問題に詳しい長瀬佑志弁護士に聞いた。
●任意認知と強制認知の2種類がある
「子どもの養育費を請求できる根拠は、民法877条以下の扶養に関する一般的な規定に基づいたものです。養育費も含めた扶養義務は、戸籍で確認できる直系血族等に認められるものですから、今回のケースのように、婚姻届を出していない男女間に生まれた子(非嫡出子)については、父に扶養義務は認められません。
この場合、養育費を請求するためには、認知をすることで、非嫡出子と父の間に法的な親子関係が成立していることが必要になります」
認知をしてもらうには、どうすればいいのだろうか。
「認知には、(1)父が自分の子であると届け出る任意認知と(2)裁判所に認知の訴えを起こす強制認知、の2つの方法があります。今回のご相談の場合、(2)の強制認知を選択することになります。
強制認知によって父と子の間に法的親子関係が成立した場合、父は、中絶の同意書を作成したことを根拠にして養育費の支払いを拒否することは難しいでしょう。中絶の同意書を作成したからといって、女性が養育費の請求権を放棄したことにはなりません。
また、仮に中絶の同意書の内容として、養育費請求権まで放棄する意味があったとしても、子どもの養育義務者である父母間の合意でしかありませんから、子ども自身から父に対する養育費の請求には影響しません。ですから、父が養育費の支払いを免れることは難しいでしょう」
長瀬弁護士はこのように話していた。