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「毒親」との縁の切り方…お金の要求、恫喝された場合は?

子どもに悪意をぶつけたり、経済的に頼りきったりする「毒親」。話し合いをしようにも成立せず、逃げても「金を出せ」と追いかけてくるーー。弁護士ドットコムの法律相談コーナーには、そんな「毒親」に悩まされる方からの相談が後をたちません。

17歳で一人暮らしをする女性は、母親からガス代や電気代を度々援助してきたといいます。ある時、「自分でなんとかしろと言いました。そうしたら『お前の会社にいって給料取るからな!』とブチ切れ。実際会社に来ましたし、暴れられて周りの人に迷惑をかけました」。そして、その日帰宅すると「家で待ち伏せしていて、金を出せと脅してきます」。

また、家族が自分の意見を聞くまで怒鳴り散らすという父親から逃れようと家を出た方は「学費を返せと請求されました」そうです。さらに、「引越し先にも自分は悪くないという手紙が届きます。精神衛生上の問題もあり、面談強要禁止、接近禁止などの法的な処分、親族関係調整調停などを用いて事態を改善することは可能でしょうか?」

実親と「縁を切る」ことは、法的に認められているのでしょうか? 毒親やアダルトチルドレンの問題にくわしい福尾 美希弁護士に聞きました。

 ●「毒親」とは何か?

「毒親」とは、スーザン・フォワードの「毒になる親」(副題は「一生苦しむ子ども」)という書籍からきています。この本が刊行されたのは今より10年以上も前ですが、ベストセラーとなっており、それだけ親との関係で苦しんでいる人は実は日本でもとても多いのではないでしょうか。

毒親との関係に悩む方から、「縁を切りたい」という相談をよく受けます。しかし残念ながら、法的に親と「縁を切る」術はありません。

「毒親」とは、子どもに対し虐待(心理的、経済的虐待も含む)をし、子どもが安心・自信・自由をもって生きられる環境を奪う親ですので、縁を切って新しい自分の人生を切り開きたいという気持ちが生まれるのは当然です。しかし、そのような親に対してとれる法的手段は限られているのが実情です。

未成年者であれば、「親権喪失(民法834条)」、「親権停止(民法834条の2)」の制度が民法上用意されていますが、親権という権利に対する制限なので、やはり最小限にしか認められないということで裁判所の判断も非情なのが実情です。

成人している場合は、親権にはそもそも服さないですし、18歳を超えれば児童福祉法の対象からも外れるので、もはや手立てはありません。成人の場合、気になるのは「扶養義務(民法877条)」及び「相続(民法887条等)」かと思います。

実際福祉の現場では、生い立ちを理由に親の援助を断る例も多いようです。親に対する扶養義務は自らが社会的地位にふさわしい生活を確立した上で、なお余裕があれば養うというものですので、それほど厳格なものではありません。

また、相続についてですが、民法上、親の生前にあらかじめ相続放棄をすることは残念ながら認められていません。そのため、遺言を書いてもらうのが一番確実ではありますが、毒親に書いてもらうことは困難でしょうから、相続開始後、放棄するしかありません。

もっとも、子である以上、最低限の遺産の取り分である「遺留分」がありますが、こちらについては親の生前から「遺留分放棄」の審判を受けることで放棄することが可能です。

 ●「面談強要禁止」「接近禁止」などの法的な処分は?

では、子どもが親元を離れ、自立してからもどこまでも追ってくる親に対し、「面談強要禁止」や「接近禁止」などの法的な処分は認められるのでしょうか。

「面談強要禁止」や「接近禁止」というと、まず「DV規制法」や「ストーカー規制法」が思い浮かびますが、これらの法律は親子問題を想定した法律ではありません。

もっとも、民事保全法上の仮の地位を定める「仮処分命令(民事保全法23条第2項)」を求めることは可能です。ただし、子どもの側に生ずる「著しい損害又は緊急の危険を避けるために必要な場合」という要件があり、これらについては疎明資料(証拠書類)を提出して裁判所を説得せねばなりません。

未成年者で警察や児童相談所に相談しているような場合であればまだしも、現在は親と別居していて差し迫った身の危険が生じていないような場合では、そもそも以前の虐待についての資料がないことや、現在は緊急の危険はないと判断されてしまう可能性があるなど、なかなかハードルは高いといえます。

そのため、身の危険を感じたらまずは警察に連絡するのが一番です。また、何度も強要してくるのが嫌という場合には弁護士を通じて「内容証明郵便」を送ることも考えられます。

 ●「親族関係調整調停」とは?

また、毒親との関係に悩む方が「親族関係調整調停」を申し立てることも考慮に入れても良いでしょう。

「親族関係調整調停」については、裁判所のHPでは、「感情的対立や親などの財産の管理に関する紛争等が原因となるなどして親族関係が円満でなくなった場合には,円満な親族関係を回復するための話合いをする場として,家庭裁判所の調停手続を利用することができます。」とありますので、特に毒親と話し合いをするために利用できないという制約はありません。

しかし、裁判所HPの記載例にもあるような「物置の設置」についてもめているなど、毒親との間で生じている具体的な問題について話し合う場を裁判所は想定しています。

そのため、毒親育ちの子どもが親に対して子ども時代の虐待によって傷ついたことやもう関わらないでほしいこと等を伝える場としては利用すること自体にハードルがあり、弁護士が裁判所と交渉してようやく話し合いの場をもてることもしばしばです。

しかも、調停はそもそも話し合いの場であり、調停委員はどちらかというと親世代であり、子どもは親の言うことを聞くべきといった古い価値観の持ち主が多いため、話が通じない可能性も高く、結局自分の悩みは大したことないのではないか等と悩み苦しみ、二次被害を受けることもしばしばです。

もっとも、調停で話し合いがつけば、最終的には調停調書というものが作られます。

そこに過去の虐待について謝罪するという文言を入れたり、もう二度と接触しないという条項を入れたりすることができる可能性はあります。ただし、あくまでも相手方が同意してくれる場合に限られ、毒親は往々にして過去の虐待を否定したり、自分も一生懸命だったなどと言い訳にはしったりしますので、そこまでうまくいくことはまず期待しない方がご自身の精神衛生上もよいといえます。

ここまで説明すると、親族関係調整調停は無意味なのではないかと思われるかもしれません。しかし、それでも、自分が子ども時代を冷静にとらえ、そこと決別し、乗り越えて自分の人生を切り開いていくための大きな儀式になることは間違いありません。

子ども時代に受けた傷は成人してからもありとあらゆる場面で自分を苦しめますから、いつかは子ども時代と向き合い、そこを乗り越えていくことが必要になるでしょう。そのための手続きとしては、親族関係調整調停は有効な一つの手段であると思います。

日本ではまだまだ「年老いた親の面倒を見ないとはなんと非情な子どもだ」という観念が強いようですが、果たして親から虐待を受け、親元で安心した生活を送ることができなかった人が同じことを言えるでしょうか。親からの虐待や子ども時代の傷つきは一生に影響するといっても過言ではありません。もっとそういうことを堂々と議論できる社会になってほしいと切に思います。

取材協力弁護士 吉田 美希 (よしだ みき)弁護士
離婚事件を100件以上取り扱った経験及び幼少時からの家庭での経験を踏まえ、離婚男女問題及び毒親問題に積極的に取り組む。相談者の話をじっくり聞き、事件処理のプロセスをも重視するスタイルで弁護にあたる。
法律事務所クロリス

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