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パートナーの「DV歴」は知らされるべき? 日本も「クレア法」を導入すべきか
パートナーの前科を知ることが出来ればクレアさんのような被害者を減らせるのではないか

パートナーの「DV歴」は知らされるべき? 日本も「クレア法」を導入すべきか

配偶者や恋人からの暴力を意味するドメスティック・バイオレンス(DV)。このDVを防止するための新ルールが、イギリスのイングランドとウェールズで、来年3月から施行されることになった。

通称「クレア法」と呼ばれる新ルールの要点は、(1)自分のパートナーが過去に起こしたDVや暴力行為について、警察に「尋ねる権利」を認めることと、(2)警察が一定の条件下で、積極的にこうした情報を開示できるようにすることだ。

ルールの通称は、2009年に元恋人に殺害された女性クレア・ウッドさんにちなんだもの。クレアさんの元恋人には、女性に対する犯罪で、3件の前科があった。もしそれが知らされていれば事件は防げたのではないか、という議論がルール創設のきっかけだった。

DV被害は日本でも増え続けている。警察庁が2012年に把握した「配偶者からの暴力事案」の件数は、約4万4000件にも上っている。2001年にDV防止法が成立し、改正も重ねられてきたが、それで十分なのか。今後「クレア法」のような法律を、日本でも導入する必要性はあるのだろうか。DV・離婚問題にくわしく、国際離婚も取り扱う梁英哲弁護士に聞いた。

●DV加害者が常に暴力的とは限らない

「日本でもクレア法と同様の制度の導入を検討するべきです」

梁弁護士はこう切り出した。なぜだろうか。

「DV被害者が、具体的な被害の発生前に、提供を受けた情報で、命を守ることができる場合もあるからです。

常習的なDV加害者といっても、常に暴力的とは限りません。優しい面をパートナーに見せることも多いです。『本当は優しい人』と思って交際を続けているうち、DVのサイクルに取り込まれ、重大な被害を受けるケースも珍しくありません。

しかし『DVによる犯罪歴』を知ることができれば、そうしたDV被害を未然に防止できると言えます」

日本でも、このようなルールを導入しようという動きがあるのだろうか?

「日本では、『DVによる犯罪歴』の情報提供をめぐる議論において、加害者側のプライバシー権侵害という問題が強調されているように感じます。情報を管理している捜査機関側にも、犯罪歴の情報を市民へ提供するという発想はないでしょう」

●プライバシーへの配慮は必要

プライバシーについては、どう考えるべきだろうか?イギリスでも、情報開示にあたっては、プライバシーに配慮がなされているようだが……。

「当然、クレア法のような制度を導入する場合には、情報利用者の悪用を防止し、提供される者のプライバシーにも配慮する必要があります。

対象となる情報が『犯罪歴』なので、制度設計は簡単ではないと思いますが、全く不可能なことでもないと思います」

制度設計を議論する際に気をつけたい点として、他にどのようなことがあるだろうか?

「提供される情報は限定的であるべきです。たとえば、『DV保護命令』に関する履歴の情報提供はされるべきではないと思います。

なぜなら、緊急性が優先され、発令されても処罰を受けるわけではない保護命令は、刑事裁判と比べて、加害者側に十分な反論の機会が与えられていないからです」

梁弁護士はこのように述べていた。

DVをどうやって防いでいくかを考えるため、この「クレア法」がイギリスでどのように運用され、どのような効果をあげるのか、注目していきたい。

(弁護士ドットコムニュース)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

梁 英哲
梁 英哲(りゃん よんちょる)弁護士 なんば国際法律事務所
大阪弁護士会所属 日韓の渉外案件を中心に国際離婚、国際相続事件を多く取り扱っている。日韓の法律家のネットワークを生かした柔軟性のある事件解決を目指している。

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