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サイボウズ・青野社長の夫婦別姓訴訟が結審、来年3月に判決へ 「ずっと苦しむ人がいる」
2018年1月、新たな夫婦別姓訴訟を提訴した青野慶久氏と代理人の作花知志弁護

サイボウズ・青野社長の夫婦別姓訴訟が結審、来年3月に判決へ 「ずっと苦しむ人がいる」

選択的夫婦別姓を求め、ソフトウェア企業「サイボウズ」の社長、青野慶久氏らが国を相手取り訴えている裁判の口頭弁論が12月5日、東京地裁(中吉徹郎裁判長)で開かれ、結審した。判決は2019年3月25日に言い渡される。

この裁判は2018年1月、婚姻時に夫婦が別姓を選べない戸籍法は、平等を保障する憲法に反するとして、青野氏ら4人が国を相手に計220万円の損害賠償を求めて提訴。国側は争う姿勢を示し、請求棄却を求めている。

夫婦別姓訴訟をめぐっては2015年12月、夫婦同姓を規定した民法750条は合憲とする最高裁判決が出ているが、今年に入ってから今回の訴訟を皮切りに、次々と夫婦別姓を求める裁判が起こされている。2015年の夫婦別姓訴訟の弁護団も5月、東京地裁と立川支部、広島地裁の3カ所で同時に提訴、第二次夫婦別姓訴訟を起こし、裁判が進んでいる。最高裁判決から4年、夫婦別姓について、あらためて裁判所の判断が示される。

●争点は戸籍法で夫婦別姓が選べないという問題

原告代理人の作花知志弁護士によると、今回の訴訟では2015年に最高裁まで争われた訴訟と異なり、戸籍法の問題が争点となっている。

日本では民法750条の規定により、夫婦同姓が義務付けられている。しかし、日本人同士が離婚する時は民法上は旧姓に戻るが、戸籍法にもとづく届出を行えば、婚姻時の氏をそのまま称することが可能で、日本人と外国人が婚姻・離婚する時も、夫婦別姓が選べる。つまり、日本人同士が結婚する時だけ、「戸籍法上の氏」として選択肢がないのは違憲であり、「法の欠缺」(不備)にあたるという主張だ。訴訟では、日本人同士の婚姻時にも別姓を選択できるよう、戸籍法の改正を求めている。

これに対し、国側は「夫婦同姓を規定している民法750条を改正しないまま、民法の手続法である戸籍法のみの改正によって選択的夫婦別姓制度を実質的に実現することは、法体系を無視するものであり、許されるものではない」と反論、訴えの棄却を求めた。

また、「日本人同士の離婚、日本人と外国人の婚姻と離婚はそれぞれ、民法750条の適用を受けていないため、日本人同士の結婚とは決定的に違う」とし、「日本人同士の夫婦が離婚する際、戸籍法による届出を行えば、婚姻時の姓を名乗ることができる。これは、旧姓に戻ると社会生活上の不利益がある可能性があり、特に離婚後に親権者に指定されることの多い母親と子どもの姓が異なることで不都合が生じるなど、『やむを得ない』理由がある場合といえる。手続きも煩雑で、離婚後も引き続き婚姻時の姓を名乗ろうとする人のために設けられたものではない」と反論していた。

●「裁判所はたった1人の人権であっても救済してくれる」

この日の法廷は、折しも同じ日に開かれていた第二次夫婦別姓訴訟の傍聴に訪れた人たちも駆けつけ、満席となった。大勢の夫婦別姓を求める両訴訟支援者たちが見守る中、原告代理人の作花知志弁護士による青野氏への尋問が行われた。青野氏は、2001年に結婚した際、妻の姓となったが、仕事では旧姓を使用。2つの姓を使うことはビジネス的に大きな損失があり、私生活でも精神的苦痛があることをあらためて訴えた。

青野氏は、「名前は、両親が姓名のバランスをみてつけてくれた創作物だと思っています。せっかく両親が考えてくれた姓名が変わってしまったことを申し訳なく感じています」と語り、自分の子どもも、なぜ青野氏が旧姓と戸籍の上の姓の両方を使ってるのか混乱していることを語った。

また、海外で仕事をする際や、契約を結ぶ際にビジネスネームとパスポートの姓名が異なることで、事務的な手間が増えて大きな損失も出ているとした。

青野氏は尋問の最後、「選択的夫婦別姓は何十年も議論されていますが、その影でずっと苦しんでいる人たちがいるということを理解してほしいです。裁判所はたった1人の人権であっても救済してくれると聞いています。ぜひ別姓が選べずに困っている人たちを救済し、法律を変えられるような判断をお願いします」と訴えた。

国による反対尋問はなかった。判決は2019年3月25日に言い渡される。

追記:取材時にあった株式名義変更に関する情報が訂正されたため、当該部分を削除いたしました。(2022年6月16日)

(弁護士ドットコムニュース)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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