東京ミネルヴァ法律事務所の破産事件に見る非弁提携の問題点と対策【前編】

6月24日に、約51億円という法律事務所としては大きな負債を抱えて破産した「東京ミネルヴァ法律事務所」について、広告業者による非弁提携の疑いが指摘されている。 東京ミネルヴァ法律事務所の破産事件における被害者の状況や法曹界への影響、同様の事件を起こさないための対策などについて、福岡県弁護士会非弁活動監視等委員会委員であり、九州弁護士会連合会業際非弁対策に関する連絡協議会委員長である向原栄大朗弁護士(福岡県弁護士会)に聞いた。(インタビュー日:2020年7月21日)

目次

  1. 東京ミネルヴァ法律事務所の依頼者にとって一番の問題は「弁済状況が把握できない」こと

東京ミネルヴァ法律事務所の依頼者にとって一番の問題は「弁済状況が把握できない」こと


ーー東京ミネルヴァ法律事務所の依頼者から、福岡県弁護士会を通して相談などはありましたか。

福岡県弁護士会からは特にありませんが、私個人宛に福岡在住の依頼者から数件、問い合わせがありました。彼らは、一旦、第一東京弁護士会の相談窓口など電話したようですが、そこで「地元の弁護士に聞いてください」と案内されたとのことでした。

ーー相談内容について、聞かせてください。

「弁済状況がどうなっているかわからず、不安である」「案件を引き継いだ事務所から伝えられた金額を、毎月払うのが厳しい」の2点です。


私が相談を受けた依頼者に聞いたところ、現在は、案件を引き継いだ事務所に対して、委任している状態のようですが、「その事務所から手紙が来たので問い合わせをしたが、忙しいようで、なかなか回答が得られない」とのことでした。そこで、その依頼者に、「債務の弁済状況について、必ず事務所に確認してほしい」と伝え、再度問い合わせをしてもらいましたが、「(どこにいくら残っているのかを調べるのに)時間がかかる」との回答だったようです。

また、月々の弁済額について聞いたところ、「これで任意整理をやるのか」と思うような金額でした。月の手取りが20万の人に、「毎月8万円弁済してください」と言うようなレベルです。状況によりますが、私は、弁済原資に充当できる限界は手取りの3割程度だと考えています。それを超えるような弁済提案をしているので、依頼者の財産状況に見合った債務整理方法を提案しているのか、疑わしく感じました。

ーー「月々の支払いは行なっているのに、どのくらい弁済されているかわからない」という状況は、非常に不安ですね。

このようなケースでは、「債務整理を依頼してから、今まで払ったお金がどうなっているのか」が、一番のポイントになります。

「今までに依頼者が支払った金額のうち、弁済に充当された額」がわからないと債権者との関係で問題が起きます。今まで依頼者が支払ったお金が、引き継がれる前に(弁済ではない)別のところに使われている可能性もあります。 別の事務所が事件を引き継いだということであるならば、その引き継ぎ先の事務所は、現状について早急に回答すべきだと考えています。

ーー今回の件で相談を受けて、特徴的な点について、聞かせてください。

引き継ぎ前の法律事務所側は、依頼者に和解状況を報告しているのかもしれません。ところが、依頼者側が内容を、全く理解しておらず、説明を受けていない可能性すら感じる点です。

債務整理の依頼を受けた弁護士が、あらかじめ依頼者に支払可能な金額を聞いて、その中で和解をするのだと思いますが、依頼者は和解のプロセスを理解しておらず、「自分が月々いくら支払うのか」のみを把握している状態でした。

かつて、過払い金訴訟全盛のころ、地方で「相談会」のためのドサ回りを行って多重債務案件を集めている事務所の依頼者から、「どんな処理をされているのか、わからない」という相談が、しばしば市役所や弁護士会の無料法律相談に寄せられましたが、そのことを思い出しました。

今回とは別件ですが、以前、実際に相談を受けたケースで、法律事務所に依頼したが、貸金業者に言われるがままの金額で、分割案だけを立案して和解しているケースがありました。こうしたケースでは、例えば、貸金が50万円あったとして、その金額については交渉を一切せず、法律事務所は分割案だけを作り、貸金業者との間で「50万を●回に分けて支払わせてほしい」と提案していました。つまり、弁護士がほとんど交渉しないまま貸金業者側の提案を丸呑みしていました。

たしかに、昨今は、過払い金の発生がほとんどなく、減額の余地もあまりないため、(依頼者にとって)厳しめの弁済額になるのかもしれません。しかし、債務整理関連の広告を見ると「借金は減額できます!」と声高らかに広告宣伝している法律事務所等が散見されます。広告で「減額できます」と謳っている以上、少なくとも依頼者には減額の状況を示すべきです。なのに、実際私がこれまで相談等で関与したケースでも、依頼者への説明がまったくなく、法律事務所等側で全部取り仕切って、弁済回数の交渉だけをしているようなことが散見されます。

ーー今回のような事件を起こした事務所の依頼者から相談があることについて、どのように考えていますか。

公益的な問題ですので、被害者である依頼者からの相談にはできる範囲で応じる必要があると思っています。個人的には、相談は無料でも良いかと思いますが、実際に受任するとなると、その方からは案件処理費用をいただかねばなりません。 弁護士会に考えていただきたいのは、懲戒処分、とくに業務停止処分を発動する場合には、処分で発生する影響へのケアをもう少し考えてもらいたいということです。

関係して、「法人の清算に関する費用負担を誰がするのか」についても、考えなければならないと思っています。弁護士法人が解散した事案で、弁護士会が清算費用を出しているケースがあったようです。そのような場合、弁護士法人の清算費用を弁護士会の会員が負担する、つまり会員がそのつけを払うような結果になっており、会費の使われ方としてはいかがなものかと思います。

この点、法人設立時に供託金などの形で準備させるような仕組みが、一例として考えられると思います。今のままだと、弁護士法人という制度が、「儲けるだけ儲けて、潰れたら、弁護士会の会員にその尻拭いをさせる」という使い方ができてしまいます。<

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