「大阪における非弁活動の実態と対策」非弁業者や人物の特徴と注意すべきポイント

弁護士資格を持たない者が法律事務を行う「非弁活動」が疑われる事例が、近年、過払い金返還や交通事故、相続などの分野で後を絶たない。非弁行為は、弁護士法72条、73条に抵触し、刑事罰を科される可能性のある違法行為ではあるが、広告代理店やWeb制作会社、他士業などから業務提携を持ちかけられた際に、「非弁にあたるかどうか」がわからないケースもある。大阪弁護士会の法七十二条等問題委員であり、近畿弁護士連合会の業際問題及び非弁護士活動対策委員の李義弁護士(大阪弁護士会)に、大阪での非弁活動の実態や対策、非弁提携を見分けるポイントなどについて、聞いた。(インタビュー日:2020年7月3日)

目次

  1. 「弁護士たるもの、どうあるべきか」を学ぶ機会が必要
  2. 現在は「他士業による非弁活動」や「Web広告業者」が多い印象
  3. 非弁活動は、大都市で増加傾向にある
  4. 取り調べは、こちらから出向く
  5. 大阪地検特捜部との連携を深めていきたい

「弁護士たるもの、どうあるべきか」を学ぶ機会が必要


ーー非弁活動を行う業者や人物に狙われるのは、どういった弁護士ですか。

「独立したての若手」や「高齢の弁護士」が狙われることが多い印象です。

若手に関しては、弁護士になってあまり年数が立っていない弁護士が立ち上げた事務所が狙われるケースが見られます。独立したてで「お金がない」という事情に、非弁業者が付け入る隙を見出して、言葉巧みに近寄ってきます。

高齢の弁護士に関しては、高齢になったから狙われるだけではありません。中には、非弁行為を行う人物との付き合いが昔からあり、それが現在も続いているケースなども見られます。

ーー無資格者が、有償で事件斡旋を行うことを禁じる旨は、弁護士法72条に明記されていますが、それだけでは不十分なのでしょうか。

一般の弁護士は、弁護士倫理の研修を受けるのですが、それだけでは不十分で、弁護士の存立根拠である弁護士法の各法文の趣旨をしっかりと学ぶことができる研修が必要だと考えています。

「実際の仕事において、何をどのようにするべきか」は、勤務弁護士として入った事務所で覚えるものですので、私としては、弁護士になってからの3年間程度は、先輩弁護士の指導の下での修行が必要だと考えています。これに加えて、自分自身で、できるだけ事件を選ばずに幅広く受任し、その事件を最後まで手がけて、自らの努力で、依頼者との関係の作り方や事件解決までの道筋を覚えることが重要です。

現在は「他士業による非弁活動」や「Web広告業者」が多い印象


ーー大阪における非弁活動の歴史について、教えてください。

大阪における非弁活動は、昭和40年代に、整理屋が(個人でなく組織の)倒産整理を私的に行ったところから始まっています。

特徴は、暴力団などの反社会的勢力との繋がりがある人物が、倒産整理に出てくることです。

具体的には、倒産しそうな企業の経営者に対して、夜逃げの資金を出して夜逃げさせておいて、見返りに手形帳や実印を預かり、委任状を書かせて、整理屋が大口の債権者になって債権者集会を開く、という手口です。整理屋は、大口債権者として、私的な債権者集会を開催してこれを差配し、弁護士の介在を阻止して裁判所の監督が及ぶ法的整理をさせないようにしていました。

その次に出てきたのは、交通事故の示談屋です。

ーー現在は、どのような人物や業者が多いのでしょうか。

現在は、他士業(行政書士、司法書士、社労士など)が参入してくるケースがあります。

刑事事件になったあゆみ共同法律事務所の事件も、司法書士が絡んでいました。

ーー他士業以外では、どのような業者が非弁活動を行なっているのですか。

Web広告業者が目立つようになりました。

単純なWeb広告だけでなく、対価の支払いが伴っている事件の紹介など、周旋に該当する行為を行なっている業者が見られます。

そういった業者は人材派遣業者も持っていて、事務所に、事務員や経理などを送り込んできます。一度中に入り込まれてしまうと、事件処理や金銭管理に弁護士が関与できなくなるばかりか、集客経路が一本になり、業者の言うこと聞かないと集客ができなくなってしまいます。結局、全てを支配されて、最終的に潰れるまで食い尽くされることになります。

非弁活動は、大都市で増加傾向にある


ーー大阪における非弁活動は、増加傾向にあるのですか。

案件数としては、増えてきているように思われます。大都市の東京、福岡、最近は札幌も同様です。ただ、これは、元々あった案件が最近顕在化してきているため、増加してるように感じるのだと考えています。

(増加の傾向は)地域的な非弁活動の特色の違いによるのではなく、地方都市は、「人間関係の基盤がある」「旧態依然とした社会構造の影響が色濃く残っている」のに対して、大都市はそうではないので、その違いがあるかもしれません。

ーー地方都市に比べて、大都市は弁護士の数も増えてきていますが、なぜ市民は弁護士ではなく他士業や事件屋などの無資格者に相談してしまうのでしょうか。

理由としては、もともと弁護士へのアクセスがよくなかったことが挙げられます。

今は、一見弁護士の数も増えてアクセスがよくなったように見受けられますが、それは違うのではないかと考えています。

過払金、B型肝炎、アスベストなどの事件は、テレビCMでも流れており、非常にアクセスがよくなっていますが、それ以外の紛争のアクセスは、あまり向上していません。

弁護士会も、駅やWebなどで広告を出していますが、「弁護士に頼むと、どのような手順で、いつ頃までに、依頼した案件が解決するのか」が、少々わかりにくい広告になってしまっています。市民に広く周知するためには、もう少し伝わりやすくできればいいのですが、弁護士会の集客によって、民業圧迫になってはいけないので難しいですね。

このような事情から、市民は、近くにいる顔の広い無資格者に相談してしまっているのだと考えられます。

仮に、弁護士よりもうまく事件を解決できる無資格者がいたとしても、手塚治虫のブラック・ジャックと同様で、これはいけないことです。

非弁活動は、当事者その他の関係人らの利益を損ねるだけではなく、法律上の生活の公正かつ円滑な営みを妨げることから、社会公益上も放置できない問題です。

ーー非弁業者を避けるためには、どのようなことに注意すればいいのですか。

「Webに広告を出しませんか」といったWeb広告業者からの誘いに安易に乗るのではなく、自分自身でHP制作会社などに依頼して広告を作成すればいいのではないでしょうか。

取り調べは、こちらから出向く


ーー大阪弁護士会の法七十二条等問題委員会の活動について、聞かせてください。

弁護士法72条違反と弁護士法27条違反の両方に取り組んでおり、被害者救済とともに、非弁行為の根絶を目的として、活動しています。

啓発活動としては、弁護士法72条や隣接士業法などについてまとめた書籍を出版する予定です。

平成24年に近畿弁護士会連合会の有志で結成された「72条研究会」で作成し、全国の弁護士会に配布した冊子「コンメンタール 弁護士法72条及び隣接士業法(第1版 研究会内資料)」(非売品)に掲載した「弁護士法72条や弁護士と隣接士業(司法書士、行政書士、社労士、税理士)の関係」「弁護士法の解釈論」「判例の解説」などの内容をブラッシュアップし、さらに「実例」や、新たな「判例」を追加しています。

ーー非弁の疑いがある業者や人物の取り締まりについても、聞かせてください。

取り締まりのための調査は、どうしても任意になるので、限界があって難しいですね。

非弁提携の場合の調査方法としては、非弁の疑いがある弁護士を弁護士会に呼び出すだけではなく、弁護士の事務所まで、私たち(委員会)が直接出向くこともあります。これは、非弁提携の実態を探るためであり、現在のところ、大阪弁護士会だけの方法だと思います。

ーー近畿弁護士会連合会の業際問題及び非弁護士活動対策委員会では、どのような活動をしているのでしょうか。

3カ月に一度集まって、近畿の各地で発生している非弁事件の報告を行い、各事件について相談がある場合は相談をしています。

各委員には、「非弁事件で方針や処理に悩む案件があったら、気軽に電話して相談して下さい」と伝えているため、最近は、相談したい案件がある場合は、直接私の事務所に電話がかかってくることもあります。

また、事件の調査・摘発に際して、(関西圏の)別の地域に応援に行くこともあります。

私の担当ではなかったのですが、5年ほど前に、滋賀県内で発生した非弁事件を、大阪弁護士会に所属している委員が現場に赴き、一緒に手がけたことがありました。

大阪地検特捜部との連携を深めていきたい


ーー非弁活動を行う業者や人物に対して取り調べに動く基準は、どこでしょうか。

市民などから、具体的な申告があることです。加えて、「実際にその事務所に紛争の解決を依頼したのに、事務員だけが対応して、弁護士が、動いている様子がない。さらに、依頼から相当期間が経っているのに、何らの連絡もないまま放置されたり、既に事件が解決して、相手方から金員を回収しているのに、依頼者に支払われていない」などといった実被害が出ている(被害者が出ている)かどうかです。

「(無資格者なのに)法律上の紛争が解決できます」と謳った非弁を疑われるような広告を出しているだけでは難しいです。被害者がいないと、非弁業者や非弁行為の実態が掴めませんので。

ーー刑事事件になるかどうかは、どうやって決まるのですか。

告発を受理した警察や検察庁の判断です。

大阪の場合は、立件が見込まれる場合には、最終的には大阪地方検察庁特別捜査部(以下、特捜部)が担当します。

あゆみ共同法律事務所が刑事事件になったのは、こちら(大阪弁護士会)からも特捜部に働きかけて、相互の連携を取れたことも大きいのではないかと考えています。

今後も、特捜部との連携を増やしていければと考えています。

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