2018年12月20日 09時40分

トラックの下にもぐった小5死亡 「回避できない」「実名報道おかしい」の声も

トラックの下にもぐった小5死亡 「回避できない」「実名報道おかしい」の声も
画像はイメージです(yakiniku / PIXTA)

痛ましい事故が起きた。千葉県佐倉市で12月7日、小学5年の男子児童が引っ越し業者の5.4tトラックにひかれ、死亡した。

報道によると、男児は友だちと付近で遊んでいたといい、サッカーボールをとろうとして、トラックの下にもぐりこんでいたようだ。運転していた女性はすぐに停車し、119番/110番通報した。

ネットでは、男児や遺族に同情しつつも、「これは回避できない」と女性をかばう声が多数あがっている。報道を見る限り、逮捕はされていないようだが、ドライバーの責任はどう考えられるだろうか。伊藤諭弁護士に聞いた。

●死亡事故でも刑事責任を問われないことはある

――ドライバーの刑事責任はどう考えられるのでしょうか?

「法的には、『過失運転致死傷罪』(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)が成立するかどうかが問題になります。仮に有罪になった場合、7年以下の懲役もしくは禁錮または百万円以下の罰金に処せられます。

ポイントとしては、この女性が『自動車の運転上必要な注意を怠』った結果今回の事故にいったと言えるかどうかです」

――「回避は難しい」という声が多いようですが…

「報道からは細かい事情までは分かりませんが、一般に停止中の車両の下に人が入り込むことまで予見することは極めて困難でしょうから、『自動車の運転上必要な注意を怠』ったとまでは言えない可能性が高いと考えます。

周辺の地理状況や環境なども加味して、仮に女性の落ち度がなんらか考えられたとしても、刑事罰を与えるほどのものではないと検察官が評価すれば、起訴されない(起訴猶予)で終わる可能性も十分にあります」

――死亡事故で刑事責任を問われないことは珍しいのでしょうか?

「加害者の落ち度がないか、仮にあったとしても非常に小さいものにとどまるような場合には、起訴されないというケースは当然あります。

交通事故では、加害者と被害者とをはっきり区別できないことがあります。どちらも落ち度がある場合、双方が加害者であり被害者であることもよくあり、両者が送検されるという事案も珍しくありません。

起訴されるケースは、検察官が、加害者に『刑罰を与えなければならないほどの過失がある』と判断したものと言い換えてもいいかもしれません」

●民事責任は過失次第

――民事はどうでしょうか。裁判になったとしたら、何らかの責任を負うことはあるのでしょうか?

「刑事と異なり、民事の場合は、現実に生じた損害を誰がどれだけ負担するべきか、という問題です。

男児に生ずる損害は、細かい点を除けば、死亡慰謝料と逸失利益(働き始めてから就労できる年齢までに得られたであろう利益)になります。このように言うと逸失利益は莫大になると思われるかも知れませんが、生活費と中間利息を控除しますので、そこまで高額にはならないというのが実情です。

今回の事件なら、女性ドライバーは、こうした損害のうち、女性側の過失割合に応じた損害を賠償する責任を負います。女性の過失がゼロであれば、賠償責任もゼロにはなります」

――亡くなった側への保障はないのでしょうか?

「被害者側の過失が大きいときは、『自賠責保険からの回収』を考えます。自賠責保険は被害者保護の制度ですので、加害者の過失がありつつ、被害者の過失が非常に大きい場合でも、自賠責保険基準に従った損害のうち5割までしか減額されません」

――それでも、加害者にいくらかの過失がないと難しいのですね。

●女性の実名を報じたメディアも…トレンドブログなどに広がる

――大半のメディアは女性の名前を出しませんでした。しかし、一部実名を出したメディアがあったために、トレンドブログなどで女性のプライバシーを探るような記事が出ています。

「事件報道が国民の知る権利に対して大きな役割を担っていることは言うまでもありません。

しかしながら、他方で保護されるべきプライバシー権とのバランスも必要になります。今回の事件では、ドライバーは逮捕もされていないようで、実名報道が必要であったかは疑問です。

また、報道そのものが制裁の一部として機能してしまっているという問題もあります。個人情報というのは、いったん流出してしまうと、いたずらに世間の関心を集めがちです。

アクセスを稼ぐためのまとめサイトも林立しており、そのサイトが実質的な中身がなかったり、真偽の怪しいものであっても、過剰にプライバシーが脅かされかねない事態を招いてしまいます。

最近判決の出たあおり運転の事件では、無関係な会社がデマの標的にされてしまい、それに絡んで名誉毀損で送検されるということもありました。これまで以上に、実名報道をするべきかどうか、冷静に見極める必要があるのかも知れません」

(弁護士ドットコムニュース)

取材協力弁護士

伊藤 諭弁護士
1976年生。2002年、弁護士登録。神奈川県弁護士会所属(川崎支部)。中小企業に関する法律相談、交通事故、倒産事件、離婚・相続等の家事事件、高齢者の財産管理(成年後見など)、刑事事件などを手がける。趣味はマラソン。

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