交通事故

弁護士監修記事 2018年03月27日

【交通事故】ADRを利用することのメリットと利用すべき機関

示談交渉の次にADR(裁判外紛争解決手続)を利用したいけれど、いくつもある実施機関の中からどれを選べばよいのかわからないーー。そうした悩みを抱えている方もいるでしょう。

  • 主に利用されている2つの機関の特徴
  • どんなメリットがあるのか
  • どちらを選べばよいのか

この記事では、こうしたポイントについて詳しく解説します。

目次

  1. 交通事故の争いで主に利用されているADR機関は2つ
    1. 裁判よりも手軽で解決までが迅速
    2. 事故の事実関係に深刻な対立があると示談(和解)あっせんできない場合も
  2. 保険会社・共済組合に対して拘束力がある
    1. 審査制度を利用できる(協定を結んでいる)か確認する
    2. 相手方が共済組合だった場合
  3. その他の主な特徴
    1. 相談を開始できる時点
    2. 対象となる事案
    3. 加害者が無保険だった場合
    4. 利用できるセンターの数・所在地

交通事故の争いで主に利用されているADR機関は2つ

交通事故紛争の解決のために利用されるADR機関は複数ありますが、主に利用されていて、紛争解決の可能性が高い機関は「交通事故紛争処理センター」と「日弁連交通事故相談センター」です。 どちらの機関も、法律相談や保険会社(共済組合)との示談(和解)あっせんなどのサポートを無料で行ってくれます。

示談(和解)のあっせんとは、被害者と保険会社との話合い(示談交渉)では決着がつかないときに、弁護士などの専門家が間に入り、判例やその他の資料を参考に、公平・中立な立場で示談が成立するよう手伝ってくれる手続きです。

裁判よりも手軽で解決までが迅速

どちらの機関も無料で利用することができます。 また、保険会社(共済組合)と直接示談交渉する場合よりも高額の賠償金で示談(和解)が成立することを期待できます。 任意保険会社が提案する賠償額は、裁判で認められている賠償額(裁判基準)よりも低いことが一般的ですが、この2つのADR機関では、交通事故の争いに精通した弁護士が、裁判基準に近い賠償額をあっせん案として提示してくれるからです。

裁判基準とは、裁判例をもとにした基準で、日弁連交通事故相談センターが発行している「損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)という本で確認することができます。そのため、「弁護士基準」「日弁連基準」と呼ばれることもあります。

事故の事実関係に深刻な対立があると示談(和解)あっせんできない場合も

ただし、利用にあたっては注意すべき点もあります。事故の事実関係に深刻な対立があると、示談(和解)あっせんを受けられない可能性があるという点です。 たとえば、「事故についてお互いにどの程度の落ち度があったのか(過失割合)」という点や、「後遺障害の等級が適切だったかどうか」という点について争いがあった場合です。 示談(和解)あっせんは、第三者が間に入ってくれるとはいえ、基本的にはお互いが歩みよって納得できる着地点を探る手続きです。 そのため、こうした事実関係に深刻な対立がある場合は、ADRでの解決になじまないといえるでしょう。その場合、裁判手続きを利用することを検討しましょう。

保険会社・共済組合に対して拘束力がある

この2つのADR機関を利用する大きなメリットとして、審査制度の仕組みを利用すれば被害者が望む形で示談(和解)が成立する可能性が高いことがあげられます。 どのようなことか、まずは審査制度の仕組みを確認しましょう。 審査制度は、示談(和解)あっせんをしても示談(和解)が成立しなかった場合(不調に終わった場合)に、被害者と保険会社双方の主張を聞いた上で、弁護士などの専門家によって構成される審査会(審査委員会)が一定の結論を示す仕組みです。 審査制度は、示談の相手方の保険会社・共済組合が、センターと協定を結んでいる場合のみ利用できます。 協定を結んでいる保険会社・共済は、審査会(審査委員会)の出した結論を尊重する義務を負っています(事実上の拘束力があります)。 つまり、審査会の示した結論を被害者が受け入れれば、保険会社・共済組合はその結論に拘束され、審査会の示した結論で示談(和解)が成立することになるのです。 示談(和解)は、本来であれば、お互いが合意しなければ成立しません。被害者にとって、非常に有利な仕組みといえるでしょう。 そのため、どちらの機関を利用しようか悩んでいる方は、まずは審査制度の仕組みを利用できるかどうかを軸に検討することをおすすめします。

物損事故については、一定の場合被害者側も審査会の結論に拘束される場合があります(交通事故紛争処理センターの場合)。

審査制度を利用できる(協定を結んでいる)か確認する

相手方が保険会社の場合

相手方が保険会社だった場合、交通事故紛争処理センターで審査を受けることができます。

相手方が共済組合だった場合

以下の共済組合の場合、交通事故紛争処理センターでも、日弁連交通事故相談センターでも審査を受けることができます。

  • 全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)
  • 全国労働者共済生活協同組合連合会(全労済)
  • 全国トラック交通共済協同組合連合会(交協連)
  • 全国自動車共済協同組合連合会(全自共)
  • 全日本火災共済協同組合連合会(日火連)

これに加えて、日弁連交通事故相談センターでは、以下の共済組合でも審査を受けることができます。

  • 教職員共済生協(教職員共済生活協同組合)
  • 自治協会(全国自治協会)・町村生協(全国町村職員生活協同組合)
  • 都市生協(生活協同組合全国都市職員災害共済会)
  • 市有物件共済会(全国市有物件災害共済会)
  • 自治労共済生協(全日本自治体労働者共済生活協同組合)

その他の主な特徴

相談を開始できる時点

交通事故紛争処理センターは、治療が終わった段階、もしくは後遺障害等級認定の手続きが終わった段階でないと、原則として利用することはできません。 これに対して、日弁連交通事故相談センターは、治療中の段階であっても相談することができます。

対象となる事案

「歩行者対自動車」「自動車対自動車」など、自動車(バイクなど2輪自動車を含む)が絡む事故である必要があります。

日弁連交通事故相談センターでは、例外的に自転車事故についても示談あっせんの手続きを受けることができる場合があります。

加害者が無保険だった場合

交通事故紛争処理センターは、加害者が任意保険(共済)に加入していなかった場合は利用することができません。 一方、日弁連交通事故相談センターは、加害者が自賠責保険のみ加入している場合や、自賠責保険にすら加入していない場合でも、示談あっせんの手続きを受けることができます。 ただし、物損被害のみの場合は、加害者が任意保険などに加入していないと利用することができないことに注意しましょう。

利用できるセンターの数・所在地

交通事故紛争処理センターは全国に11の支部・相談室があります(札幌、仙台、東京、さいたま、静岡、名古屋、大阪、金沢、広島、高松、福岡)。 日弁連交通事故相談センターは、全国に156の相談所があります(2017年9月現在)。ただし、相談所によっては法律相談しか受け付けておらず、示談あっせんを受けられないことがあります。

それぞれのADRの具体的な利用方法については、この記事の下の「次に読みたい記事」で詳しく説明しています。

次に読みたい記事 2 件 / あわせて読みたい関連記事 5

次に読みたい記事

【交通事故ADR】日弁連交通事故相談センターを利用するための手続きと流れ

日弁連交通事故相談センターは、交通事故の紛争を解決するための代表的なADR(裁判外紛争解決手続き)を行う機関です。法律相談や示談あっせんなど解決に向け...

【交通事故ADR】交通事故紛争処理センターを利用するための手続きと流れ

交通事故紛争処理センターは、交通事故の紛争を解決するための代表的なADR(裁判外紛争解決手続き)を行う機関です。法律相談や和解あっせんなど、解決に向け...

あわせて読みたい関連記事

交通事故紛争の交渉を弁護士に依頼するときに必要な費用の相場

交通事故の被害にあって保険会社(加害者)に賠償を求めて示談交渉などを進めていく際、弁護士に交渉を依頼することを考える人もいるでしょう。 この記事...

交通事故の被害回復を弁護士に依頼することのメリット

交通事故の被害にあって保険会社と示談交渉するとき、弁護士に交渉を依頼することで適切な賠償(保険金)を受けられる可能性が高まります。 * 交渉を任せ...

交通事故の賠償金はどう決まる?3つの基準とケーススタディ

「収入が途絶えた分は補償されるの?」「慰謝料はどのくらいもらえるの?」ーー。交通事故の被害を完全に回復して日常生活に戻るためには、お金の話は切って...

交通事故で弁護士に依頼するときに「弁護士費用特約」を利用できるケース

交通事故の被害にあって保険会社(加害者)に賠償を求めて示談交渉などを進めていく際、弁護士に交渉を依頼することを考える人もいるでしょう。その際、保険...

交通事故裁判の流れ・期間・費用と遅延損害金について - 示談がまとまらないときの対処法

交通事故の被害者となり、保険会社と慰謝料や過失割合で示談しているものの、納得できない条件でまとまらないということも多いでしょう。裁判を起こすまで被...

解決までの流れ

解決までの全記事

解決までにすべきことを確認する

次に読みたい記事 2 件 / あわせて読みたい関連記事 4

次に読みたい記事

【交通事故ADR】日弁連交通事故相談センターを利用するための手続きと流れ

日弁連交通事故相談センターは、交通事故の紛争を解決するための代表的なADR(裁判外紛争解決手続き)を行う機関です。法律相談や示談あっせんなど解決に向け...

【交通事故ADR】交通事故紛争処理センターを利用するための手続きと流れ

交通事故紛争処理センターは、交通事故の紛争を解決するための代表的なADR(裁判外紛争解決手続き)を行う機関です。法律相談や和解あっせんなど、解決に向け...

あわせて読みたい関連記事

交通事故紛争の交渉を弁護士に依頼するときに必要な費用の相場

交通事故の被害にあって保険会社(加害者)に賠償を求めて示談交渉などを進めていく際、弁護士に交渉を依頼することを考える人もいるでしょう。 この記事...

交通事故の被害回復を弁護士に依頼することのメリット

交通事故の被害にあって保険会社と示談交渉するとき、弁護士に交渉を依頼することで適切な賠償(保険金)を受けられる可能性が高まります。 * 交渉を任せ...

交通事故で弁護士に依頼するときに「弁護士費用特約」を利用できるケース

交通事故の被害にあって保険会社(加害者)に賠償を求めて示談交渉などを進めていく際、弁護士に交渉を依頼することを考える人もいるでしょう。その際、保険...

交通事故裁判の流れ・期間・費用と遅延損害金について - 示談がまとまらないときの対処法

交通事故の被害者となり、保険会社と慰謝料や過失割合で示談しているものの、納得できない条件でまとまらないということも多いでしょう。裁判を起こすまで被...

解決までの流れ

解決までの全記事

解決までにすべきことを確認する

次に読みたい記事 2 件 / あわせて読みたい関連記事 5

次に読みたい記事

【交通事故ADR】日弁連交通事故相談センターを利用するための手続きと流れ

日弁連交通事故相談センターは、交通事故の紛争を解決するための代表的なADR(裁判外紛争解決手続き)を行う機関です。法律相談や示談あっせんなど解決に向け...

【交通事故ADR】交通事故紛争処理センターを利用するための手続きと流れ

交通事故紛争処理センターは、交通事故の紛争を解決するための代表的なADR(裁判外紛争解決手続き)を行う機関です。法律相談や和解あっせんなど、解決に向け...

あわせて読みたい関連記事

交通事故紛争の交渉を弁護士に依頼するときに必要な費用の相場

交通事故の被害にあって保険会社(加害者)に賠償を求めて示談交渉などを進めていく際、弁護士に交渉を依頼することを考える人もいるでしょう。 この記事...

交通事故の被害回復を弁護士に依頼することのメリット

交通事故の被害にあって保険会社と示談交渉するとき、弁護士に交渉を依頼することで適切な賠償(保険金)を受けられる可能性が高まります。 * 交渉を任せ...

交通事故の賠償金はどう決まる?3つの基準とケーススタディ

「収入が途絶えた分は補償されるの?」「慰謝料はどのくらいもらえるの?」ーー。交通事故の被害を完全に回復して日常生活に戻るためには、お金の話は切って...

交通事故で弁護士に依頼するときに「弁護士費用特約」を利用できるケース

交通事故の被害にあって保険会社(加害者)に賠償を求めて示談交渉などを進めていく際、弁護士に交渉を依頼することを考える人もいるでしょう。その際、保険...

交通事故裁判の流れ・期間・費用と遅延損害金について - 示談がまとまらないときの対処法

交通事故の被害者となり、保険会社と慰謝料や過失割合で示談しているものの、納得できない条件でまとまらないということも多いでしょう。裁判を起こすまで被...

解決までの流れ

解決までの全記事

解決までにすべきことを確認する

弁護士に見積り依頼をする

複数の弁護士にまとめて見積り依頼
費用対処方針比べて選ぶことができます。

  • 弁護士費用がいくらかかるか知りたい
  • 弁護士の選び方がわからない
  • 弁護士が何をしてくれるか知りたい
一括見積りをはじめる無料

依頼前に知っておきたい弁護士知識

交通事故を扱う弁護士を探す

交通事故に関する法律相談

  • 人身事故 検察呼び出し

    人身事故の検察呼び出しについて教えてください。 人身事故でも過失運転致傷の場合、不起訴率が高いようですが、検察呼び出し後に不起訴になることが一般的な流れでしょうか? それとも検...

    3弁護士回答
  • 今までありがとうございました 刑務所

    刑務所前の相談。ひき逃げと無免許運転の代償相談… 半年前 通勤途中車同士で軽く接触しましたが場離れてしまいひき逃げになりました。 すぐに警察連絡し 現場に戻りましたがだめでし...

    1弁護士回答
  • 調査嘱託と送付嘱託について

    調査嘱託と送付嘱託について 事故直後の様子が相手方の店舗の防犯カメラに写っているようなのですが見せてくれません。 訴状を出すときに相手方に画像なり映像なりを提出してもらいたいので...

    2弁護士回答
  • 歩行者の鞄の紐が引っかかり、自転車で転倒

    私が通勤途中で自転車に乗っていて、すれ違い様に歩行者の鞄の紐がハンドルに引っかかり私だけ転倒してしまいました。 妊娠6ヶ月です。自転車で倒れた時に側頭部を強打し、膝と肘を擦りむき...

    1弁護士回答
  • 相手方の嘱託調査において、相手方に不利になると思われる部分の扱いについて

    民事訴訟係属中において、相手方が嘱託調査を依頼し、回答が返ってきました。具体的には、交通事故においての保険会社への嘱託調査です。その回答の中に、相手方運転者の過失を自身で認める...

    3弁護士回答
1 2 3 4 5 ... 30 ... 50

法律相談を検索する

交通事故の法律ガイド

関連カテゴリから解決方法を探す

弁護士に相談しようと思ったら…

弁護士に見積り依頼をする

複数の弁護士にまとめて見積り依頼

  • 最短3分で依頼完了
  • 依頼内容は非公開
  • 分野に詳しい弁護士から見積り依頼が届く
一括見積りをはじめる無料

依頼前に知っておきたい弁護士知識

交通事故のニュース

  1. 「いじめの時効」はいつか…中学時代の同級生...
  2. 国内最悪「時速235キロ」で高速道路暴走した...
  3. 高速道路の落下物「年30万件」以上…タイヤ原...
  4. 高齢ドライバー対策、自動ブレーキ車など「限...
  5. 東名夫婦死亡事故、進路妨害した容疑者の「危...
  6. ひき逃げ事件「人をひいた認識はない」男性に...
  7. うちの車に便乗したがる図々しい「ママ友」、...