【交通事故の休業損害】被害者が給与所得者だった場合の計算方法

交通事故でケガをしたために仕事を休まなければならなかった…。このような場合に、仕事ができれば得られたはずの収入を「休業損害」として賠償してもらうことができます。病院へ行くために有給を使った場合も同じです。この記事では、給与所得者の休業損害の計算方法について解説します。

目次

  1. 給与所得者の休業損害
  2. 事故前の給与から休んだ日数分の給与を計算する
    1. 長期間続けて休んだ場合
    2. 仕事をしながら時々休みをとって通院した場合
  3. 有給休暇を利用した場合
  4. 昇給・昇格、減給された場合など
  5. 症状固定前(完治)前に退職した場合

給与所得者の休業損害

休業損害とは、交通事故の賠償金の費目のひとつで、交通事故でケガが治るまでの間、または症状固定(これ以上治療を続けても症状が改善しないと医学的に判断されたこと)までの間、仕事を休むことによって減ってしまった分の収入のことをいいます。 給与所得者の休業損害は、原則として、交通事故のケガを理由に仕事を休んだことで収入が減った場合の、実際に減った分の金額です。 収入がいくら減ったのかがわかる場合には、その金額が休業損害となります。 わからない場合には、事故にあう前に実際にもらっていた給与をもとに、休んだ日数分の給与を計算していきます。

給与には、基本給のほかに、残業代などの手当も含まれます。

多くの場合、保険会社から「休業損害証明書」が送られてきて、勤務先に記入してもらい、その内容をもとに保険会社が休業損害を計算する流れになります。

「休業損害証明書」の書き方は、この記事の下の「次に読みたい記事」で詳しく説明しています。

事故前の給与から休んだ日数分の給与を計算する

休業損害の計算方法は、次のようになります。

  1. 事故前の給与から1日あたりの収入を計算する
  2. 仕事を休んだ日数を数える
  3. 次の計算式に当てはめて計算する

休業損害の計算式1日あたりの収入×仕事を休んだ日数

1日あたりの収入は次のように計算します。

1日あたりの収入の計算式事故にあう前の一定期間の収入÷その期間の日数

一定期間の日数は、休日を除く(実際に仕事をした日のみを数える)方法と、休日を含める方法があります。 どちらの方法がよいのか、長期間続けて休んだ場合と、仕事をしながら時々休みをとって通院した場合とに分けて見ていきましょう。

実際には事故後しばらくは長期間続けて休み、ある程度回復した時点で仕事に復帰をし、休みをとりながら通院をすることが多いと思います。その場合には、それぞれの期間に合わせた計算方法を組み合わせて計算することになります。

長期間続けて休んだ場合

長期間続けて休んだ場合には、休日を除く場合と休日を含める場合とで、結論に大きな差は出ないので、どちらの計算方法を用いてもよいとされています。 具体的に計算してみましょう。 たとえば、次のようなカレンダーで、1月から3月までの3か月間の給与(90万円)から、1日あたりの収入を計算します。 仕事を休んだのは4月の1か月間とします。

具体例(休日を含めて計算する)

まず、休日を含めて計算する場合です。 1日あたりの収入は次のように計算します。

1日あたりの収入の計算式事故にあう前の一定期間の収入÷その期間の日数

この場合、事故にあう前の一定期間(1月から3月までの3か月間)の収入は90万円です。 その3か月間の休日を含めた日数は、31日(1月)+28日(2月)+31日(3月)=90日です。 1日あたりの収入は、90万円÷90日=1万円となります。 この1万円に、仕事を休んだ日数を掛けると、休業損害の金額がわかります。

休業損害の計算式1日あたりの収入×仕事を休んだ日数

1日あたりの収入の計算で休日を含めた場合、実際に仕事を休んだ日数も休日を含めて計算します。 この場合は30日(4月)なので、1万円×30日=30万円が休業損害となります。

具体例(休日を除いて計算する)

次は、休日を除いて計算してみましょう。

1日あたりの収入の計算式事故にあう前の一定期間の収入÷その期間の日数

1月から3月までの休日を除いた日数は、19日(1月)+19日(2月)+21日(3月)=59日です。 1日あたりの収入は、90万円÷59日=約1万5254円となります。 次に、1日あたりの収入の計算で休日を除く場合、実際に仕事を休んだ日数も休日を除いて計算します。

休業損害の計算式1日あたりの収入×仕事を休んだ日数

この場合は20日(4月)なので、1万5254円×20日=30万5080円が休業損害となります。 今回の例では、休日を除いて計算した方が5080円多い結果となりました。 仕事を休んだ日数やカレンダー(休日の数)などによって、どちらの計算方法の方が多くなるかは変わりますので、自分の場合はいくらになるのか確認してみましょう。

仕事をしながら時々休みをとって通院した場合

仕事をしながら時々休みをとって通院した場合、1日あたりの収入を計算するときに休日を除く方法が望ましいです。 ただし、証拠が揃わない場合など、このような方法をとることができない場合もあります。その場合には、1日あたりの収入を休日を含めた日数で計算することになります。

1日あたりの収入を休日を含めた日数で計算する場合、休日を除いて計算するよりも休業損害の金額が少なくなります。

具体的に見ていきましょう。 たとえば、次のようなカレンダーで、1月から3月までの3か月間の給与(90万円)から、1日あたりの収入を計算します。 仕事を休んだのは4月以降の5日間とします。

具体例(休日を除いて計算する)

まず、休日を除いて計算する方法です。

1日あたりの収入の計算式事故にあう前の一定期間の収入÷その期間の日数

1月から3月までの休日を除いた日数は、19日(1月)+19日(2月)+21日(3月)=59日です。 1日あたりの収入は、90万円÷59日=約1万5254円となります。 この金額に仕事を休んだ日数(5日間)を掛けると、休業損害の金額がわかります。

休業損害の計算式1日あたりの収入×仕事を休んだ日数

1万5254円×5日=7万6270円が休業損害となります。

休日を除いて計算する方法ができない場合

上記のように休日を除いて計算する方法ができない場合もあります。 その場合には、1日あたりの収入を休日を含めた日数で計算することになります。 たとえば、休業損害証明書を勤務先に書いてもらうことができず、事故前の3か月間の勤務日数を証明することができない場合などが考えられます。 たとえば、先ほどのカレンダーで、1月から3月までの3か月間の給与(90万円)から、休日を含めた日数で1日あたりの収入を計算します。 仕事を休んだのは4月以降の5日間とします。

1日あたりの収入の計算式事故にあう前の一定期間の収入÷その期間の日数

1月から3月までの休日を含めた日数は、31日(1月)+28日(2月)+31日(3月)=90日です。 1日あたりの収入は、90万円÷90日=1万円となります。 この金額に仕事を休んだ日数(5日間)を掛けると、休業損害の金額がわかります。

休業損害の計算式1日あたりの収入×仕事を休んだ日数

1万円×5日=5万円が休業損害となります。 今回の例では、休日を含めて計算すると、休日を除いて計算するよりも2万6270円少ない結果となりました。 このように、1日あたりの収入を休日を含めた日数で計算する場合、休日を除いて計算するよりも休業損害の金額が少なくなります。

有給休暇を利用した場合

有給休暇を利用して通院した場合、収入は減りませんが、休業損害は認められています。 この場合、休業損害の計算方法は、有給休暇を利用しないで休んだ場合と同じです。

昇給・昇格、減給された場合など

就業規則や、同期入社の同僚の昇給率などから、もし仕事を休まなければ昇給や昇格をしていたと証明できる場合には、昇給や昇格後の収入も休業損害に含まれます。 その場合には、昇給・昇格するまでの間は事故前の収入を、昇給・昇格後は昇給・昇格した収入をもとに計算します。 仕事を休んだことによりボーナス(賞与)が減額されたり支払われなかった場合には、仕事を休んでいなければ支払われたはずのボーナスと実際のボーナスとの差額が休業損害として認められます。 また、仕事を休んだことにより昇給や昇格が遅れた場合にも、仕事を休んでいなければ昇給や昇格できた時期以降の収入について、昇給・昇格した場合の収入と実際の収入との差額が休業損害として認められます。仕事を休まなければ昇給や昇格ができたと認められるかどうかは、主に就業規則や賃金規定をみて判断されます。

症状固定前(完治)前に退職した場合

症状固定前またはケガが完治する前に退職した場合、交通事故によるケガが原因で退職をしたといえる場合(交通事故によるケガと退職との間に相当因果関係がある場合)には、退職前の収入をもとに、退職後の期間についても休業損害が認められる場合があります。 ただし、どのくらいの期間認められるかは個別の事情によるので、弁護士などの専門家に相談して確認した方がよいでしょう。

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