交通事故

弁護士監修記事 2018年02月28日

【後遺障害の逸失利益】事業所得者で収入の証明が難しい場合でも逸失利益が認められるケース

交通事故で後遺障害になったので逸失利益を請求したいけど、今まで赤字申告だった…。このような場合には、収入の証明ができず、逸失利益が認められないことがあります。 しかし、収入の具体的な金額がわからない場合でも、そのほかの事情から逸失利益を認めた裁判例があります。どのような場合なのか詳しく解説します。

目次

  1. 収入の証明ができない場合には原則として逸失利益は認められない
  2. <ケース1>確定申告が赤字の場合でも逸失利益が認められた事例(大阪地裁平成18年6月14日判決)
    1. 事故の内容
    2. 裁判で争われた内容
    3. 裁判所の判断
  3. <ケース2>収入の具体的な金額がわからない場合でも逸失利益が認められた事例(大阪地裁平成27年7月10日判決)
    1. 事故の内容
    2. 裁判で争われた内容
    3. 裁判所の判断
  4. 収入の証明が難しい場合には弁護士に相談を

収入の証明ができない場合には原則として逸失利益は認められない

逸失利益を計算するには、被害者の収入を証明する必要があります。 収入を証明するために、確定申告の控えなど、証拠となる資料を準備する必要があります。 しかし、確定申告の上では赤字で実際の収入がいくらだったかはわからない場合など、収入の証明をすることが難しいことがあります。 収入の証明ができない場合には、原則として逸失利益は認められません。 ただし、収入の具体的な金額がわからない場合でも、そのほかの事情から、「少なくとも平均賃金くらいの収入は得ていただろう」と認められて、平均賃金をもとに逸失利益が認められた事例があります。 どのような場合なのか見ていきましょう。

<ケース1>確定申告が赤字の場合でも逸失利益が認められた事例(大阪地裁平成18年6月14日判決)

事故の内容

当時56歳だった男性が原付自転車で走っていたら、後ろから大型の車に追い越されそうになったので端に寄ったところ、歩道のコンクリートと車道のアスファルトでできた段差に乗り上げてバランスを崩し、そのまま止まりきれずに歩道の柵にぶつかるという事故が起きました。 ぶつかった柵は、以前に別の車とぶつかって壊れたことがあり、壊れた部分が切断されていたのですがカバーなどはなく、鉄パイプがむき出しのままになっていました。 男性はその鉄パイプの切断面に右足をぶつけ、スニーカーが突き破られて右足の中指と薬指が切れて裂けるという怪我をしました。 治療をした後に、右足の中指と薬指は「欠損した」として症状固定の診断を受けました。 男性は、歩道の柵を管理していた府を相手に、賠償金の支払いを求める裁判を起こしました。

裁判で争われた内容

男性の収入が確定申告の上では赤字だったことから、逸失利益が認められるかどうかなどが争われました。

裁判所の判断

裁判所は、次のような事実を認定し、逸失利益を認めました。

  • 男性は、商店の代表者として、米穀や灯油の販売、灯油・LPガスの卸売販売(配達)、ガス・石油給湯器の販売と設置配管工事、自動販売機での清涼飲料水の販売を行っていた。
  • 交通事故により2か月間休業した。
  • 事故の前年にガソリンスタンドの営業を廃止していた。事故にあった年に高圧ガス、液化石油ガスの販売事業を廃止した。
  • 確定申告は交通事故の前年、事故にあった年、その翌年と、いずれも赤字だった。

このような事情を踏まえ、交通事故にあう前から大幅な赤字に陥っており、男性の後遺障害により仕事ができなくなる幅は限定的なので、交通事故があったから事業が廃止されたという関係にあった(事故と事業縮小との間に相当因果関係がある)とまでは認められないとしました。 ただし、男性が後遺障害により仕事が満足にできなくなったことと事業を縮小したこととが全く関係ないとまではいえないこと、家族の手伝いにより商店の営業が支えられていることなども考慮し、賃金センサスの中の「各種商品小売業者」の平均賃金を参考に、その70%の収入が得られた確率が高いと認め、逸失利益を認めました

<ケース2>収入の具体的な金額がわからない場合でも逸失利益が認められた事例(大阪地裁平成27年7月10日判決)

事故の内容

事故が起きたのは夜19時のことでした。 当時56歳だった男性が、T字路を歩いて渡っていたところ、男性から見て右側からやってきた車の運転手が男性を見落としてぶつかるという事故が起きました。 事故当日に男性は病院を受診し、左手、両膝、右足の打撲と診断されましたが、別の病院で検査をしたところ、右膝の靭帯(じんたい)と、半月板と呼ばれる軟骨を損傷していました。 また、事故から7か月以上経ってから、左足のかかとの上にある距骨という骨が折れ、折れた骨が壊死して欠損していたことがわかりました。 手術や治療の結果、右膝は、靭帯と半月板が治らず、装具(補助器具)を使用した上で杖を使用しないと歩けないほどグラグラした状態で症状固定したと診断されました。 左足も、関節痛を残す状態で症状固定したと診断されました。 男性は、車の運転手と、運転手が加入していた任意保険会社を相手に、賠償金の支払いを求める裁判を起こしました。

裁判で争われた内容

裁判では、後遺障害等級のほか、男性が事故の約1か月前に飲食店をオープンし、事故後に男性が店に出ることができないまま廃業したことから、休業損害や逸失利益の額などについて争われました。

裁判所の判断

裁判所は、後遺障害等級については、右膝は12級7号、左足は12級13号に相当し、全体としては11級に相当すると判断しました。 逸失利益については、次のような事実を認定しました。

  • 男性は飲食店を開業する前は貿易会社で働いており、その頃の年収は420万円だった。
  • 男性は事故の約1か月前、飲食店を開店した。
  • 事故にあった後は、少なくとも入院中は男性が店に出ることはできなかった。
  • しかし、妻の手伝いと板前の働きにより飲食店の営業を続けることができた。
  • 事故から約1年1か月後に廃業したが、男性の不在というよりは板前の体調不良によるところが大きかった。

このような事情から、飲食店が開業していた間に男性が得た利益額は不明というほかないが、男性の年齢に対応した平均賃金額などを見ると、男性が貿易会社で働いていた頃の収入(年420万円)を得ていたとして休業損害(や逸失利益)を計算することにも一応の相当性が認められるとし、420万円を男性の年収として休業損害、逸失利益を計算しました。

収入の証明が難しい場合には弁護士に相談を

このように、収入の証明が難しい場合でも逸失利益が認められたケースはありますが、確定申告の控えなど具体的な金額がわかる証拠がないのに保険会社を説得することは難しいでしょう。 保険会社を説得できないけれど逸失利益を認めてほしい場合には裁判をすることになります。 ただし、収入の証明が難しい中で裁判で逸失利益を認めてもらえるかどうかは、具体的にどのような事情があったのか、確定申告の控えなどの他にはどのような証拠があるのかなどによって左右されるので、必ず裁判所が認めてくれるとは限りません。 収入の証明が難しい場合には、弁護士などの専門家に相談し、裁判をすれば逸失利益が認められる可能性があるのかどうか、きちんと見てもらった方がよいでしょう。

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