死亡事故

弁護士監修記事 2018年02月26日

【死亡逸失利益】事業所得者で収入の証明が難しい場合でも逸失利益が認められるケース

交通事故で亡くなった被害者が事業を営んでいたけれど、確定申告をしていたかどうかわからない…。 このような場合には、収入の証明ができず、逸失利益が認められないことがあります。 しかし、収入の具体的な金額がわからない場合でも、そのほかの事情から逸失利益を認めた裁判例があります。どのような場合なのか詳しく解説します。

目次

  1. 収入の証明ができない場合には原則として逸失利益は認められない
  2. 収入の具体的な金額がわからない場合でも逸失利益が認められた事例(大阪地裁平成25年8月27日判決)
    1. 事故の内容
    2. 裁判で争われた内容
    3. 裁判所の判断
  3. 収入の証明が難しい場合には弁護士に相談を

収入の証明ができない場合には原則として逸失利益は認められない

逸失利益を計算するには、被害者の収入を調べる必要があります。 被害者の収入を証明するために、確定申告の控えなど、証拠となる資料を準備する必要があります。 しかし、被害者が確定申告をしていなかった場合など、被害者の収入がいくらだったのかわからず、収入の証明をすることが難しいことがあります。 収入の証明ができない場合には、原則として逸失利益は認められません。 ただし、収入の具体的な金額がわからない場合でも、そのほかの事情から、「少なくとも平均賃金くらいの収入は得ていただろう」と認められて、平均賃金をもとに逸失利益が認められた事例があります。 どのような場合なのか見ていきましょう。

収入の具体的な金額がわからない場合でも逸失利益が認められた事例(大阪地裁平成25年8月27日判決)

事故の内容

この事例は、信号のない交差点での事故でした。 当時76歳だった女性が自転車で交差点を渡っているときに、女性から見て右側からやってきた車の運転手が脇見運転で女性を見落としてぶつかるという事故が起きました。 被害者の女性は、頭を強く打ち頭の中での出血が脳を圧迫する急性硬膜下血腫、脳自体を損傷する脳挫傷、右側の肋骨が多数折れる右多発性肋骨骨折などの傷害を負い、4日間入院した後に死亡しました。 車の運転手は、仕事中に会社の車で運転をしていました。 被害者の唯一の相続人である養女が、車の運転手と会社を相手に、賠償金の支払いを求める裁判を起こしました。

裁判で争われた内容

裁判では、被害者が入院している間の休業損害と、死亡した後の逸失利益の有無や金額などが争われました。

裁判所の判断

裁判所は、次のような事実を認定し、休業損害と逸失利益を認めました。

  • 被害者は、事故当時、健康で、一人暮らしをしていた。
  • 飲食店(居酒屋兼スナック、カウンター席8つ、ボックス席1つ)を55年以上前から経営していた。
  • 事故当時は、アルバイトの従業員を1人雇っていた。

  • 被害者が、所得税の確定申告をしていたかどうかはわからない。

  • 確定申告をしていたとしても、申告額はわからない。

このような事情などをもとに、確定申告をしていたかどうかわからないとしても、少なくとも平均賃金程度の収入は得られた確率が高いと評価しました。 平均賃金については、被害者は76歳ですが、70歳以上の区分ではなく、65〜69歳の区分を参考にし、その70%を被害者の収入として計算しました。 その理由は、簡単にいえば、平均賃金の70歳以上の区分の方が65歳〜69歳の平均賃金の区分より高いのはおかしい、サンプルの採取に偏りがあるなどといった理由でした。 このような計算をもとに、事故から死亡するまでの4日間の休業損害と、死亡してから平均余命までの間の逸失利益を認めました。

収入の証明が難しい場合には弁護士に相談を

このように、収入の証明が難しい場合でも逸失利益が認められたケースはありますが、確定申告の控えなど具体的な金額がわかる証拠がないのに保険会社を説得することは難しいでしょう。 保険会社を説得できないけれど逸失利益を認めてほしい場合には、裁判で争うことになります。 ただし、収入の証明が難しい中で、裁判で逸失利益を認めてもらえるかどうかは、「具体的にどのような事情があったのか」「確定申告の控えなどの他にはどのような証拠があるのか」といった事情に左右されます。必ず裁判所が認めてくれるとは限りません。 収入の証明が難しい場合には、弁護士などの専門家に相談し、裁判をすれば逸失利益が認められる可能性があるのかどうか確認してもらった方がよいでしょう。

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