死亡事故

弁護士監修記事 2018年01月25日

交通事故で家族が死亡したときに保険会社が支払う慰謝料の相場と計算方法

死亡事故の遺族が保険会社と示談交渉する際、保険会社は賠償金として慰謝料の額を提示してきますが、適正な金額なのか判断に迷う方もいるでしょう。 慰謝料の計算方法を理解し、適切に交渉を進めることで、増額が見込める場合もあります。この記事では、慰謝料の相場と計算方法について詳しく解説します。

目次

  1. 死亡事故による慰謝料の計算方法
  2. 賠償金を計算する3つの基準
    1. 自賠責基準
    2. 任意保険基準
    3. 裁判基準
  3. 慰謝料の額はそれぞれの基準でどう変わるのか
    1. 自賠責基準で定められている慰謝料の金額
    2. 裁判基準で定められている慰謝料の金額

死亡事故による慰謝料の計算方法

alt 交通事故で被害者が亡くなった場合、被害者が受けた精神的苦痛に対する慰謝料は、被害者の相続人が相続します。 この他に、被害者の父母や配偶者、子など、被害者に親しい人が受けた精神的苦痛に対する慰謝料(遺族固有の慰謝料)が、個別に認められています。 つまり、遺族は、2種類の慰謝料(亡くなった方の慰謝料と遺族自身の慰謝料)を加害者に求めることができます。

遺族固有の慰謝料が認められるのは、相続人が原則ですが、相続人の立場ではない遺族であっても、慰謝料が認められるケースがあります。詳しくは次の記事で紹介しています。

賠償金を計算する3つの基準

alt 慰謝料は、交通事故の賠償金の費目のひとつです。賠償金の金額は、保険会社や裁判例などによって、ある程度の目安となる基準が作成されています。その基準をもとに、個別のケースで慰謝料がいくらになるかを計算していきます。 賠償金の目安となる基準は、大きく3つあります。

  • 自賠責基準
  • 任意保険基準
  • 裁判基準

一般的には、保険会社の基準より、裁判例をもとにした基準(裁判基準)が高額になっています。 具体的に慰謝料がいくら認められるかをみていく前に、それぞれどのような基準なのか確認しておきましょう。

自賠責基準

交通事故の加害者が加入している保険は、通常2種類あります。 一つは、「自動車損害賠償責任保険(自賠責)」です。すべての自動車が加入することを義務づけられています。 自賠責には、「自賠責基準」と呼ばれる支払基準があり、この基準に従って保険金が支払われます。自賠責基準では、被害者救済のための最低限の金額が保証されています。 自賠責基準では、自賠責保険から支払われる保険金に限度額が決められています。自賠責基準を詳しく確認したい方は、こちらを参考にしてください。

任意保険基準

もう一つは、ドライバーがそれぞれ任意で加入する損害保険(任意保険)です。 任意保険にも、「任意保険基準」と呼ばれる支払基準があります。任意保険基準は各保険会社が定めており、この基準をもとに保険金が計算されています。 ただし、任意保険基準は裁判で認められる金額より低いことが一般的です。

任意保険会社が提案する保険金の内訳

任意保険から支払われる保険金は、事故の損害のうち、自賠責保険の限度額を超える部分です。 任意保険会社の担当者が提案する保険金の内容は、自賠責保険から支払われる保険金と、任意保険会社から支払われる保険金の両方が含まれています。 任意保険会社は、自賠責保険の分も含めて先にまとめて被害者に支払いをしてから、後で自賠責保険の分を自賠責保険会社に請求します。 このように、自賠責の分もまとめて支払う任意保険会社の対応を「一括対応」といいます。

裁判基準

保険会社との話し合いがまとまらなかった場合などに裁判を起こすことがあります。 裁判で裁判官が賠償金を決める際には、「裁判基準」といわれる基準が用いられます。 裁判基準は、過去に裁判で認められた賠償額をまとめて基準にしたものです。任意保険基準に比べて高額なことが特徴です。 裁判基準は、日弁連交通事故相談センターが発行している「損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)という本で確認することができます。そのため、「日弁連基準」「弁護士基準」といわれることもあります。

裁判基準の賠償額であっても、最終的には保険会社から支払われることになります。

保険会社との交渉を弁護士に依頼した場合、弁護士も裁判基準を参考に賠償金を計算し、裁判基準に近い金額が得られるように保険会社に交渉します。 自分で保険会社と交渉する場合にも、裁判基準であればいくらもらえるのかを確認しておくとよいでしょう。 では、実際に各基準で慰謝料がいくら認められるのかを見ていきましょう。

慰謝料の額はそれぞれの基準でどう変わるのか

alt

自賠責基準で定められている慰謝料の金額

自賠責基準では、被害者本人の慰謝料と遺族固有の慰謝料が定められています。 alt 被害者本人の慰謝料は、350万円です。 遺族の慰謝料を請求できるのは、被害者の父母、配偶者、子です。 被害者の父母には、養子縁組をしている養父母も含まれます。 子には、養子縁組をしている養子、法律上の夫婦ではないカップルから生まれたが自分の子であると認知した子、胎児が含まれます。 遺族の慰謝料の金額は、慰謝料を請求できる人が1人の場合には550万円、2人の場合には650万円、3人以上の場合には750万円です。 未成年の子どもなど、被害者が生活費を負担していた遺族が1人以上いる場合には、上記の金額に200万円が加算されます。 たとえば、被害者に父母、共働きの妻、未成年の子がいる場合、慰謝料は次のようになります。 まず、被害者本人の慰謝料が350万円です。 次に、遺族の慰謝料を請求できる人は、父、母、妻、子の4人です。慰謝料を請求できる人が3人以上の場合にあたるので、遺族の慰謝料は750万円です。 さらに、未成年の子がいるので、被害者が生活費を負担していた遺族がいる場合にあたるので、200万円が加算されます。 これらを合計した1300万円が慰謝料になります。

裁判基準で定められている慰謝料の金額

裁判基準では、被害者が家族の中でどのような立場にあったかによって金額が定められています(被害者本人の慰謝料と、遺族固有の慰謝料を合計した金額です)。 alt 主に被害者の収入によって生活が成り立っている場合を「一家の支柱」といいます。一家の支柱の慰謝料は2800万円です。 「一家の支柱」には、シングルマザーや、独身で高齢の父母や幼い兄弟を扶養している人も含まれます。 一家の支柱ではない配偶者の慰謝料は、2500万円です。 共働きの主婦の場合には、慰謝料が増額されて一家の支柱の場合と同じような金額が認められるケースもあります。 上記に当てはまらない人の慰謝料は、2000万円から2500万円です。ここには、独身の人や、子ども、高齢者などが含まれます。 この基準は一応の目安を示したもので、「父親だから絶対に2800万円」というわけではありません。具体的な事情によって増額したり、減額したりすることがあります。

胎児が死亡した場合の慰謝料

妊婦が交通事故に遭い、胎児が亡くなってしまった場合、残念ながら、胎児自身の慰謝料は認められていません。 ただし、母親が流産・死産により受けた精神的苦痛に対する慰謝料が認められています。 この場合の慰謝料の金額には、一般的な基準はありませんが、裁判例では、次のように慰謝料を認めたケースもあります。

  • 妊娠8週 → 150万円
  • 妊娠12週未満 → 200万円
  • 妊娠18週 → 350万円
  • 妊娠27週 → 250万円
  • 妊娠36週 → 母に700万円、父に300万円
  • 妊娠39週 → 800万円

裁判で慰謝料が増額されるケース

裁判基準は一応の目安を示したもので、具体的な事情によって増額することがあります(反対に、減額されることもあります)。 慰謝料を増額されるのは、次のような事情があった場合です。

  • 加害者に故意、重過失、著しく不誠実な態度などがある場合
  • 被害者の親族が精神疾患に罹患した場合

加害者に重過失があるとされるのは、次のような場合です。

  • 無免許
  • ひき逃げ
  • 酒酔い
  • 著しいスピード違反
  • ことさらに信号無視をしたこと
  • 薬物などの影響で正常な運転ができない状態で運転をしたこと

被害者の親族の精神疾患には、PTSD、うつ病、心的外傷後ストレス障害などがあてはまります。

あわせて読みたい関連記事

交通事故で被害者が死亡した場合の逸失利益の計算方法【職業別】

死亡事故で保険会社が支払う逸失利益の額は適正な金額なのか、判断に迷う人もいるでしょう。 逸失利益の計算方法を理解し、適切に交渉を進めることで、増...

交通事故でケガを負った場合に保険会社から支払ってもらえる治療費の内容

交通事故で負ったケガを治療する際、その費用は加害者が加入する保険会社から支払ってもらうことが一般的です。 * どの範囲までが治療費として認められる...

交通事故でケガをした場合に請求できる慰謝料の計算方法

交通事故の被害にあってケガをした場合、治療費だけではなく、入院や通院を余儀なくされて精神的なダメージを受けたことに対する傷害慰謝料を加害者に支払っ...

【職業別】交通事故の被害にあったときに補償される休業損害の計算方法

交通事故でケガをしたために仕事を休まなければならなかった…。このような場合に、仕事ができれば得られたはずの収入を「休業損害」として賠償してもらうこと...

【交通事故】物損について保険会社に請求できる賠償金の費目と手続きの流れ

交通事故の被害は、ケガや死亡など「人」に生じる被害(人損)と、車が破損するなど「物」に生じる被害(物損)との大きく2つに分けられます。 この記事で...

【交通事故】過失割合の基礎知識と納得できない場合の対処法

交通事故の被害にあったとき、「自分には全く非がない」と考えていたのに、加害者の加入する保険会社から「過失割合は8対2」と告げられたーー。 過失割合...

交通事故で保険会社との示談交渉がまとまらない場合の3つの対処法

「示談金額に納得がいかない」「担当者が取り合ってくれない」ーー。保険会社との示談交渉がまとまらない場合には、自分自身で交渉を続ける他にも、主に3つの...

解決までの流れ

解決までの全記事

解決までにすべきことを確認する

弁護士に見積り依頼をする

複数の弁護士にまとめて見積り依頼
費用対処方針比べて選ぶことができます。

  • 弁護士費用がいくらかかるか知りたい
  • 弁護士の選び方がわからない
  • 弁護士が何をしてくれるか知りたい
一括見積りをはじめる無料

依頼前に知っておきたい弁護士知識

死亡事故を扱う弁護士を探す

死亡事故に関する法律相談

  • 自動車死亡事故で受け取る共済金は相続の対象ですか?

    父が自動車運転中の事故で死亡しました。相手方は軽症でしたが過失割合は父が10割で加害者です。賠償金は請求出来ませんが、父が自動車総合補償共済に加入していた為(主たる被共済者は本人...

    1弁護士回答
  • 交通事故 保険金 病院の対応

    先日祖父が交通事故を起こしてしまい亡くなってしまいました。状況は事故当時の少し前に血液の異常が見つかり再検査で来院、その時点で高熱があり検査をしたらインフルエンザと診断、その帰...

    1弁護士回答
  • 交通事故での死亡事故の賠償について

    母親が2年前の8月に交通事故で亡くなりました。加害者の全面的に悪く、交通刑務所に服役しています。 さて、これからが本題となります。加害者側は任意保険に加入していました。2年経っても...

    1弁護士回答
  • 交通事故死亡事故に伴う訴訟のやり方について

    交通事故で母が亡くなりました。相続人は私と兄の二人ですが、兄とは離れて暮らしており、また、仲が悪いため、加害者側保険会社とどのような話になっているのか教えてもらえません。 また、...

    2弁護士回答
  • 老人ホームでの死亡事故

    さる1月下旬にある老人ホームにいた父が「具合が悪くなった」ということで病院に搬送され5日後に死亡しました。病院の医師の診断で死因に疑いがあり警察も介入し司法解剖の結果「死因は転...

    1弁護士回答

法律相談を検索する

死亡事故の法律ガイド

関連カテゴリから解決方法を探す

弁護士に相談しようと思ったら…

弁護士に見積り依頼をする

複数の弁護士にまとめて見積り依頼

  • 最短3分で依頼完了
  • 依頼内容は非公開
  • 分野に詳しい弁護士から見積り依頼が届く
一括見積りをはじめる無料

依頼前に知っておきたい弁護士知識

交通事故のニュース

  1. 池袋事故「上級国民だから逮捕されない」 運...
  2. 「いじめの時効」はいつか…中学時代の同級生...
  3. 国内最悪「時速235キロ」で高速道路暴走した...
  4. 高速道路の落下物「年30万件」以上…タイヤ原...
  5. 高齢ドライバー対策、自動ブレーキ車など「限...
  6. 東名夫婦死亡事故、進路妨害した容疑者の「危...
  7. ひき逃げ事件「人をひいた認識はない」男性に...