死亡事故

弁護士監修記事 2018年01月25日

【交通死亡事故】相続人ではない遺族が加害者に慰謝料を請求できるケース

交通事故で死亡した被害者の遺族の中には、相続人の立場にないために、損害賠償や慰謝料を加害者に請求する権利を被害者から相続することができない人がいます。しかし、そのような人も加害者に対して慰謝料を請求できる可能性があります。

  • 夫婦同然の生活をしていたが結婚していなかった(内縁)
  • 婚約していた
  • 相続人ではない親族

このような人が慰謝料を求めることはできるのか、裁判例などをもとに詳しく紹介します。

目次

  1. 慰謝料を求めることができるのは、原則として相続人
  2. 相続人ではない遺族が慰謝料を請求する方法
  3. 相続人ではない遺族が慰謝料を求めることができるケース
    1. 法律で定められている場合
    2. 裁判で認められた事例
    3. 婚約者(慰謝料が認められなかった例)

慰謝料を求めることができるのは、原則として相続人

alt 加害者に慰謝料を請求できるのは本来、被害者本人ですが、死亡事故の場合には本人が亡くなっています。そこで、相続人が慰謝料を請求する権利(慰謝料請求権)を相続して、加害者(保険会社)に請求することになります。 誰が相続人となるかについては、下記の記事で詳しく解説しています。

相続人ではない遺族が慰謝料を請求する方法

alt 保険会社は被害者の相続人を交渉相手として想定しています。したがって、相続人ではない遺族が保険会社と交渉することは原則として難しいようです。 ただし、保険会社によっては、相続人ではない遺族でも交渉できる場合があるようなので、まずは保険会社の担当者に問い合わせてみるのがよいでしょう。 保険会社との交渉が難しい場合には、加害者を相手に裁判を起こすことになります。 裁判を起こす場合には、被害者の相続人と一緒に裁判を起こし、相続人の慰謝料と同時に相続人ではない遺族の慰謝料も認めてもらうというケースが少なくありません。 ただし、裁判を起こす前に保険会社と相続人との間で示談がすでに成立していて、それとは別に相続人ではない遺族が単独で裁判を起こして慰謝料が認められたケースもあります。 具体的にどのように裁判を起こすかについては、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

相続人ではない遺族が慰謝料を求めることができるケース

alt

法律で定められている場合

死亡事故の遺族は、被害者本人の慰謝料とは別に、「被害者が亡くなったことで遺族が受けた精神的苦痛」に対する慰謝料(遺族固有の慰謝料)も求めることができます。 遺族固有の慰謝料が法律で認められているのは、被害者の父母、配偶者、子です。 たとえば、被害者に父母、妻、子がいる場合、相続人となるのは妻と子ですが、父母についても遺族固有の慰謝料が認められることになります。 alt

裁判で認められた事例

相続人ではない遺族でも、最高裁は、次のような場合には、加害者に対し慰謝料を請求することができるとしています(昭和49年12月17日判決)。

  • 父母、配偶者、子と実質的に同じとみなすことができる関係が存在すること
  • 被害者の死亡により非常に大きな精神的苦痛を受けたこと

この判決では、被害者の夫の妹(被害者の義妹)について10万円の慰謝料を認めました。

  • 被害者の夫の妹は、障害等級2級の身体障害で歩行が困難な状態だった。
  • 長年にわたり被害者と同居をし、被害者の看護を受けて生活をしていた。
  • 将来もその生活を続けていくことが期待されていた。

こうした事情などをもとに、最高裁は、被害者の突然の死亡により、夫の妹が非常に大きな精神的苦痛を受けたとして、慰謝料を認めました。 この他にも慰謝料が認められたケースを具体的に見ていきましょう。

  • 祖父母
  • 兄弟姉妹
  • 内縁の配偶者
  • 養子縁組をしていない夫の連れ子

祖父母に慰謝料が認められた事例

被害者は事故当時6歳(小学1年生)の男の子でした。 被害者と同居していた父方の祖母に50万円、同居していない母方の祖父母に各30万円の慰謝料が認められました。

兄弟姉妹に慰謝料が認められた事例

兄弟姉妹に慰謝料を認めた裁判例は比較的多くあります。 ただし、慰謝料の金額については、それぞれの事例で個別に認定されており、「兄だからいくら」というように一律に決まっているわけではないようです。

妹1人と弟2人に各150万円が認められた事例(大阪地裁平成12年9月21日判決)・被害者は58歳、男性、大学教授
・被害者の妹は、事故後の心労が重なり慢性胃炎と診断された。
・被害者の弟は、事故後に胆のう炎などで入院し、治療を受けた。
・もう1人の弟は、洞不全症候群、不整脈、うつ状態、発作性心房細動などの症状により、事故後に公立中学校教師の職を1年近く休職している。

こうした事情などをもとに、被害者の死亡により著しい精神的苦痛を被ったことは十分に認めることができるとして、妹弟に慰謝料が認められました。

妹に300万円が認められた事例(大阪地裁平成14年3月15日判決)・被害者は61歳、男性、無職
・被害者の妹は被害者と50年以上一緒に暮らしていた。姪を引き取って、被害者と2人で父母代わりとなって育ててきた。
・妹自身も被害者に扶養される関係にあった。
・姪が結婚してからは被害者と2人暮らしだった。

こうした事情などをもとに、被害者と妹との間には父母、配偶者、子と実質的に同じとみなすことができる関係が存在するとして、妹に慰謝料が認められました。

兄に200万円が認められた事例(東京地裁平成21年7月8日判決)・被害者は3歳、男の子
・被害者の兄(4歳)は事故現場を目撃していた。

被害者の悲惨な死を目の前で目撃しなければならなかったことに対するショックなどが考慮され、被害者の兄に慰謝料が認められました。

弟に100万円、姉に50万円が認められた事例(東京地裁平成24年12月26日判決)・被害者は16歳、男性、商業高校を中途退学し、翌春工業高校に再入学予定だった。
・両親の離婚により被害者が1歳の頃から母、姉、弟の4人暮らしだった。被害者と弟は年齢が離れており、被害者を父親代わりのようにして成長していた。
・姉と被害者の仲は良好だった。

被害者の死亡により、かなりの精神的苦痛を受けたことが認められるとして、姉と弟に慰謝料が認められました。

弟に100万円が認められた事例(大阪地裁平成26年8月29日判決)・被害者は51歳、女性、会社員
・被害者の弟は、事故により被害者と母親が重傷を負い別々の病院に入院する中で、家族の中心となって付き添いなどの対応をすることとなり、心身共に非常に大きな負担を余儀なくされた。

妹に120万円が認められた事例(東京地裁平成26年11月26日判決)・被害者は50歳、女性、小学校教員兼主婦
・被害者の妹は、結婚するまで被害者と共に生活し、結婚して被害者と離れて生活するようになっても被害者と頻繁に交流を持ち、円満な親戚関係を築いていた。

双子の弟に50万円、妹に20万円が認められた事例(大阪地裁平成25年6月27日判決)・被害者は10歳、男の子、小学4年生
・被害者の双子の弟は、普段は両親から自宅の鍵を1本渡され、被害者と一緒に下校するようにしていたが、事故当日は、学校の課題が終わらず居残りをしたため、被害者が先に帰宅した。その後、被害者は自転車に乗って出かけた途中で、事故にあった。被害者の双子の弟は、事故直後に現場を通りがかり、負傷した直後の被害者の様子を目撃した。
・被害者の妹は5歳。事故後に発熱し、40℃の熱が1週間以上続いた。四十九日の法要の前に、被害者の葬儀の場面や事故の場面と思われる絵を描き、覚えたてのひらがなで、血にまみれた被害者の様子について書いた。

こうした事実をもとに、被害者の双子の弟は「自分が居残りをしなければ被害者が事故にあうことはなかったと考え、自分を責めており、現在もそのような傾向が続いている」、被害者の妹は「幼いながらも精神的なショックを受けたと認められる」として、慰謝料が認められました。

姪に慰謝料が認められた事例

被害者は事故当時61歳の男性、無職でした。 被害者が生後間もなく引き取り実質的な父親として育ててきた姪に、100万円の慰謝料が認められました。

内縁の配偶者に慰謝料が認められた事例

内縁とは、夫婦として生活しているものの、婚姻届を提出していないために、法律上の夫婦とは認められない関係のことをいいます。 内縁の配偶者に慰謝料が認められるかどうかは、「同居期間の長さ」「生活費を負担していたか」「住民票などの住所が同じか」「結婚式をしたか」「周りの家族に認められていたか」など、さまざまな事情が考慮されています。

内縁の妻に500万円が認められた事例(東京地裁平成12年9月13日判決)・被害者は61歳、男性、会社員
・被害者と内縁の妻は、内縁の妻の長男の家族とともに生活をしていた。
・結婚披露宴をした。
・内縁の妻の長男がお金を借りたとき、父として連帯保証人になった。

このような事情をもとに、事実上夫婦として生活し内縁関係にあったとして、内縁の妻に慰謝料が認められました。

内縁の妻に900万円が認められた事例(名古屋地裁平成21年7月29日判決)・被害者は37歳、男性、会社員
・同居は5年に渡り、生計も同じにしていた。

同居期間の長さからすると、住民票上の住所が異なっており、婚姻の予定が必ずしも明確ではないとしても、内縁の妻と認められると判断されました。

内縁の夫に1300万円が認められた事例(大阪地裁平成21年12月11日判決)・被害者は78歳、女性、料理店女将
・内縁の夫は、被害者が働く料理店を経営していた

このほか、被害者と同居して生活費の負担をしてもらうなど、扶養を受けていた内縁の配偶者は、被害者から受けることができた将来の扶養利益について、損害賠償請求が認められる可能性があります。

養子縁組をしていない夫の連れ子に慰謝料が認められた事例

被害者の夫の連れ子2名は、被害者と養子縁組はしていないが、幼い頃から被害者を母親として育てられ、成人後も実親子同様の間柄を保ってきたとして、それぞれに慰謝料450万円が認められました。

婚約者(慰謝料が認められなかった例)

  • 被害者の婚約者は、被害者から指輪をもらって将来結婚することを約束し、家族ぐるみの交際をしていた。
  • 事故が起きた年の秋には結納を行い、翌年春には結婚式をする予定だった。
  • 結婚式の具体的な日取りは決まっていなかった。

裁判所は、こうした事情などをもとに、婚約を破棄すれば損害賠償義務が生じるような法的拘束力を伴う関係だったとまでは認めがたいとして、婚約者の慰謝料を認めませんでした。

関連記事

何をするべきか知りたい方へ

交通事故_やること診断イラスト

簡単な質問に答えることで
今するべきことがわかります
やること診断

状況別に知りたい方へ

弁護士に見積り依頼をする

複数の弁護士にまとめて見積り依頼
費用対処方針比べて選ぶことができます。

  • 弁護士費用がいくらかかるか知りたい
  • 弁護士の選び方がわからない
  • 弁護士が何をしてくれるか知りたい
一括見積りをはじめる無料

依頼前に知っておきたい弁護士知識

死亡事故を扱う弁護士を探す

死亡事故に関する法律相談

  • 交通事故 保険金 病院の対応

    先日祖父が交通事故を起こしてしまい亡くなってしまいました。状況は事故当時の少し前に血液の異常が見つかり再検査で来院、その時点で高熱があり検査をしたらインフルエンザと診断、その帰...

    1弁護士回答
  • 交通事故での死亡事故の賠償について

    母親が2年前の8月に交通事故で亡くなりました。加害者の全面的に悪く、交通刑務所に服役しています。 さて、これからが本題となります。加害者側は任意保険に加入していました。2年経っても...

    1弁護士回答
  • 交通事故死亡事故に伴う訴訟のやり方について

    交通事故で母が亡くなりました。相続人は私と兄の二人ですが、兄とは離れて暮らしており、また、仲が悪いため、加害者側保険会社とどのような話になっているのか教えてもらえません。 また、...

    2弁護士回答
  • 老人ホームでの死亡事故

    さる1月下旬にある老人ホームにいた父が「具合が悪くなった」ということで病院に搬送され5日後に死亡しました。病院の医師の診断で死因に疑いがあり警察も介入し司法解剖の結果「死因は転...

    1弁護士回答
  • 交通死亡事故の裁判について

    はじめまして。 去年の12月下旬に兄が交通事故でなくなりました。 原因は乗用車の信号無視。 兄は信号待ち。 今現在弁護士の先生の選定中で1人の弁護士の先生にこういう場合は民事と刑事があ...

    3弁護士回答

法律相談を検索する

死亡事故の法律ガイド

関連カテゴリから解決方法を探す

弁護士に相談しようと思ったら…

弁護士に見積り依頼をする

複数の弁護士にまとめて見積り依頼

  • 最短3分で依頼完了
  • 依頼内容は非公開
  • 分野に詳しい弁護士から見積り依頼が届く
一括見積りをはじめる無料

依頼前に知っておきたい弁護士知識

交通事故のニュース

  1. 「いじめの時効」はいつか…中学時代の同級生...
  2. 国内最悪「時速235キロ」で高速道路暴走した...
  3. 高速道路の落下物「年30万件」以上…タイヤ原...
  4. 高齢ドライバー対策、自動ブレーキ車など「限...
  5. 東名夫婦死亡事故、進路妨害した容疑者の「危...
  6. ひき逃げ事件「人をひいた認識はない」男性に...
  7. うちの車に便乗したがる図々しい「ママ友」、...