死亡事故

弁護士監修記事 2018年01月25日

交通事故で家族が死亡した場合に加害者と示談するタイミング

交通事故で親族が亡くなった場合、四十九日を過ぎたころに保険会社から示談交渉の打診が来ることが一般的です。 そのとき、加害者に厳罰を望んでいる場合や、事故状況についてお互いの言い分が異なる場合に、どのタイミングで示談すればよいのか判断に迷う方もいるでしょう。 この記事では、示談するタイミングや、交渉の流れについて詳しく解説します。

目次

  1. 死亡事故の示談交渉は一般的に「四十九日」を過ぎてから始まる
  2. 民事上の示談と刑事手続きの関係
  3. 示談で過失割合を争う場合は刑事裁判の結果を参考にすることも
  4. 刑事手続きがどのように進んでいるかを知る方法
    1. 被害者参加制度
    2. 被害者等通知制度
    3. 優先的に裁判を傍聴できる
  5. 裁判記録を取り寄せる方法
    1. 刑事記録を手に入れる方法
    2. 刑事記録を手に入れるべきかどうかは慎重に判断を

死亡事故の示談交渉は一般的に「四十九日」を過ぎてから始まる

alt 交通事故で親族が亡くなった場合、四十九日が過ぎてから示談交渉が始まることが一般的です。 特に決まりはありませんが、「遺族の心情や生活が落ち着くのを待つ」という保険会社の配慮と考えられています。 保険会社の担当者や、加害者から示談交渉の開始を打診する連絡が来るのも、この時期が多いでしょう。 遺族がこれより前に交渉を開始したいと考えている場合には、希望する時期に保険会社や加害者にコンタクトをとりましょう。 四十九日を過ぎても保険会社の担当者や加害者から連絡がなく、示談交渉について気になっている場合には、遺族から保険会社(加害者)に連絡することも自由です。

保険会社(加害者)に保険金を支払ってもらえる権利には、時効があります。死亡事故の場合の時効は通常、被害者が亡くなってから3年です。3年を過ぎると保険会社(加害者)にお金を払ってもらえなくなります。示談交渉が長引く場合には注意しましょう。

民事上の示談と刑事手続きの関係

alt 死亡事故の加害者は刑事裁判で「過失運転致死罪」や「危険運転致死罪」などの罪に問われる可能性があります。 刑事裁判と、民事上の損害賠償請求(示談交渉や民事裁判など)は別々の手続きですが、刑事手続きよりも先に示談が成立している場合、検察官が起訴・不起訴を判断する際や、裁判官が判決を下す際に、加害者に有利な事情(情状)として考慮されることがあります。 そのため、加害者に厳罰を望む場合には、すぐには示談をせずに、刑事手続きが完了したタイミングで交渉を開始することを検討した方がよいケースもあります。

加害者が任意保険に加入している場合には、最終的には保険金で損害が填補される可能性が高いので、「示談がいつ成立したか」ということにかかわらず、情状の一要素となる可能性があります。

示談で過失割合を争う場合は刑事裁判の結果を参考にすることも

alt このように、示談が刑事裁判に影響を与えることもあれば、反対に、刑事裁判の結果が示談に影響することもあります。 たとえば、示談交渉で「過失割合」について争いが場合です。 過失割合とは、「加害者と被害者のどちらにどれだけの落ち度があったか」を示す割合のことです。 たとえば、加害者の過失が90%、被害者の過失が10%、賠償額が1000万円の場合、加害者が被害者に支払う賠償金は900万円となります。 このように過失割合に応じて賠償額を減額することを「過失相殺」といいます。 死亡事故の被害者でも、たとえば赤信号無視や脇見運転など、過失があったとされる場合には、加害者よりも過失割合を多く取られることがあります。 過失割合に納得がいかない場合には、刑事裁判の判決や、不起訴の場合には実況見分調書など警察や検察が作成した記録(刑事記録)を手に入れて、それらに示された事故状況を参考にしながら交渉を進めていくことが考えられます。 刑事裁判では、裁判官は、「どのような事故状況だったのか」という事実について、証拠などをもとに厳密に認定します。 加害者が争えば、民事の場合でも事故状況について保険会社の調査が入りますが、捜査機関の調査と比べると限界があります。 そのため、認定された事実が遺族の主張に沿うものであれば、遺族の主張を裏付ける強力な証拠になります。 加害者が不起訴となり刑事裁判にならなかった場合でも、実況見分調書などの記録には、警察や検察が捜査した結果が書かれているので、やはり強力な証拠になります。 刑事記録を手に入れたい場合には、検察官が不起訴処分をするか、刑事裁判になった場合には判決が確定するまで待ちましょう。

事故状況に争いがあり、刑事記録が証拠として必要になるような紛争では、交渉の過程で専門的な知識が必要となることも少なくありません。保険会社と交渉を進めていくことに不安がある方は、刑事記録の入手も含めて紛争の解決を弁護士に依頼することを検討してもよいでしょう。

刑事手続きがどのように進んでいるかを知る方法

alt 刑事上の責任について、加害者を裁判にかけること(起訴)ができるのは、原則として「検察官」だけです。 また、刑罰を決めることができるのは「裁判官」と「裁判員」だけです。 そのため、遺族が加害者を裁判にかけたり、刑罰を決めたりすることはできません。 しかし、被害者(遺族)が事件の当事者として裁判の経緯や結果を見守り、裁判に適切に関わることができるように、「被害者参加制度」があります。 その他にも、遺族が加害者や刑事裁判に関する情報を得られやすくするような、以下の制度があります。

  • 被害者等通知制度
  • 優先して裁判を傍聴できる制度
  • 裁判記録の取寄せ

被害者参加制度

死亡事故など一定の刑事裁判については、遺族が刑事裁判に参加することができます。 この制度を「被害者参加制度」といい、参加する遺族のことを「被害者参加人」といいます。 遺族が刑事裁判に参加することで、裁判官や裁判員に影響を与え、遺族の意向を判決に反映してもらえる可能性があります。

被害者参加制度で遺族ができること

被害者参加人ができることは、次の5つです。

  • 裁判に出席すること
  • 検察官に意見を述べたり、説明を求めたりすること
  • 証人尋問すること
  • 加害者(被告人)に質問すること
  • 加害者の罪や刑罰について法廷で意見を述べること
裁判に出席すること

裁判が開かれるそれぞれの日に法廷に出席し、検察官の隣などに着席することができます。

検察官に意見を述べたり、説明を求めたりすること

裁判では、検察官は、加害者の罪を証明するために、法廷で証拠となる物を見せたり、書類を読み上げたり、証人を尋問したりしたいと裁判官に請求します(証拠調べ請求)。 検察官は、こうした証拠を裁判官に示した上で、「加害者はこのようなことをしたから、このような罪になるべきだ」「加害者の刑罰はこのくらいにするべきだ」と主張します(論告・求刑)。 このような検察官の主張を聞いた後で、裁判官が判決を下します。 被害者の遺族が被害者参加をした場合、このような検察官の証拠調べ請求や、論告、求刑などについて、意見を述べたり、説明を求めたりすることができます。

証人尋問すること

裁判では、加害者の親などが証人となり、加害者の罪を軽くするために証言をすることがあります(情状証言)。 遺族は、このような情状証人を尋問することができます。簡単にいえば、「情状証人の証言は信用できない」という心証を裁判官に抱いてもらうための尋問です。 どのようなことか、情状証人(母親)が、「加害者(息子)が社会復帰するためにサポートしていきます」と証言したという例を考えてみましょう。 裁判官は「母親のサポートが期待できるなら少し罪を軽くしようか」と考えています。 これに対して、尋問者(被害者遺族)が、情状証人(母親)にこれまでの監督状況や経済状況などを質問すると、母親が「これまで息子を放任していた事実」や、「そもそも母親自身が経済的に困窮している」ことなどが明らかになりました。 その結果、裁判官も「やっぱりサポートは期待できないかも(母親の証言は信用できないな)」と考えて、当初の考えを改める可能性があります。 こうしたことが、情状証言に対して尋問する狙いになります。

加害者(被告人)に質問すること

裁判では、加害者(被告人)にも質問が行われます。一般的には、加害者の弁護士が質問をした後に、検察官、裁判官も質問します(被告人質問)。 質問に答える中で、加害者は「交通事故を起こしたことを反省している」「申し訳ない」などと話すこともあります。 遺族が被害者参加をした場合、必要と認められる場合には遺族も加害者(被告人)に質問することができます。

加害者の罪や刑罰について法廷で意見を述べること

裁判では、検察官が「加害者はこのようなことをしたから、このような罪になるべきだ」「加害者の刑罰はこのくらいにするべきだ」という主張をします(論告・求刑)。 遺族が被害者参加をした場合、このような検察官の論告、求刑のように、加害者の罪や刑罰について意見を述べることができます(意見陳述)。

被害者参加をしたい場合は検察官に問い合わせよう

被害者参加制度を利用して遺族が刑事裁判に参加するためには、遺族が「事件を担当する検察官」に申し出る必要があります。 詳しくは検察官に問い合わせましょう。

被害者等通知制度

被害者等通知制度とは、被害者やその遺族が加害者の刑事裁判の情報などについて、通知を受け取ることができる制度です。 被害者等通知制度を利用して知ることができる情報は次のとおりです。

通知内容 具体例
検察官が下した処分の内容 ・起訴して裁判にかける
・裁判はせず罰金のみを科す
・不起訴にする
裁判を行う裁判所
裁判が行われる日
・裁判所名
・日時
裁判の結果 ・判決で言い渡された刑罰の内容
・控訴されているかどうか など
犯人の身柄の状況
起訴事実
不起訴の理由
・加害者が逮捕や勾留されている状況
・裁判で罪に問われる原因となる事実
・不起訴の理由
加害者が刑務所に入る場合の情報 ・刑務所の名前、所在地
・刑務所から釈放される予定の年月
・刑務所でどのような作業をさせられているか
・釈放された場合の年月日 など

被害者等通知制度を利用して通知を受けたい場合は、検察官、検察事務官、被害者支援員に対して、通知を受けたい旨を伝えます。電話での口頭や書面で通知されます。

優先的に裁判を傍聴できる

裁判の傍聴は原則として誰でも自由にできます。しかし、社会の関心が集まる事件の裁判で、見学者(傍聴人)が多くて法廷に入りきらない場合には、抽選となることがあります。 このような場合でも、遺族は、他の人より優先的に傍聴することができます。 裁判所や検察官、検察事務官、被害者支援員に、優先的に傍聴させてほしい旨を事前に伝えることで、優先的に傍聴できるよう配慮してもらうことができます。

裁判記録を取り寄せる方法

alt 遺族は、刑事裁判が行われている期間中に、裁判の記録を閲覧・コピーすることが認められています。 裁判の記録を見たい、コピーしたい場合には、担当する検察官、検察事務官、被害者支援員に問い合わせましょう。

刑事記録を手に入れる方法

alt

刑事裁判が行われた場合

刑事裁判が行われ、判決が確定した場合には、裁判が行われた裁判所に対応する検察庁に申請することで、刑事記録をコピーすることができます。 たとえば、裁判が東京地裁で行われた場合には、東京地検に申請することになります。 申請方法は、検察庁に出向いて、申請書を書いて提出します。 刑事裁判で判決が確定した場合には、判決書のほかに、警察や検察が事故当時の道路状況などを記録した実況見分調書、加害者や目撃者の証言が記録された供述調書なども閲覧することができます。 これらをコピーしたり、持参したデジカメで撮ったりします。 検察庁のコピー機が使えるかどうか、カラーコピーができるかどうかは、検察庁により異なるので、あらかじめ検察庁に電話で問い合わせをした方がよいでしょう。

加害者が不起訴となった場合

加害者が不起訴となり、刑事裁判が行われなかった場合には、不起訴処分をした検察庁に刑事記録をコピーさせてもらうよう請求することができます。 請求方法は、あらかじめ検察庁に電話して問い合わせましょう。 加害者が不起訴となった場合には、警察や検察が事故当時の道路状況などを記録した実況見分調書などを閲覧することができます。 一方で、加害者や目撃者の証言が記録された供述調書は、証言をした人のプライバシーなどの観点から、閲覧を認める条件が厳しく定められています。仮に閲覧謄写が認められたとしても、ほとんど黒塗りされた調書が出てくることあります。 そのため、実況見分調書で確認できる事故当時の道路状況以外の事情、たとえば「加害者が脇見運転をしていた」といった事情を明らかにする資料は手に入らない可能性があります。

弁護士に依頼した方が良い?

事故状況に争いがあり、刑事記録が証拠として必要になるような紛争では、交渉の過程で専門的な知識が必要となることも少なくありません。 保険会社と交渉を進めていくことに不安がある方は、刑事記録の入手も含めて紛争の解決を弁護士に依頼することを検討してもよいでしょう。

刑事記録を手に入れるべきかどうかは慎重に判断を

加害者に対して不起訴処分の判断がされる、あるいは刑事裁判で判決が確定するまでは、時間のかかるケースが少なくありません。 また、せっかく刑事記録を取り寄せても、思ったとおりの事情が書かれておらず、自分の言い分を通すための証拠としては決め手にならない場合もあります。 時間をかけてでも刑事記録を取り寄せるべきかどうかは、事前によく検討した方がよいでしょう。

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