【交通事故】複数の後遺障害があると等級が繰り上がる?「併合」のルールを弁護士が解説

交通事故による後遺症は1か所だけとは限りません。複数の部位に後遺症が残ることもあります。 複数の後遺症について、それぞれ後遺障害等級認定されると、「併合(へいごう)」というルールによって等級が繰り上がる可能性があります。 併合が適用される具体的なケースについて「みんなの法律相談」に寄せられた実際の相談事例と、弁護士の回答をまとめました。

目次

  1. 併合で等級が繰り上がるのはどんなケース?
  2. 併合のルールは必ず適用される?
  3. 後遺障害慰謝料を請求するときのポイント

併合で等級が繰り上がるのはどんなケース?

併合のルールが適用されるのはどのようなケースで、どのくらい等級が繰り上がるのでしょうか。

後遺障害 等級について

相談者の疑問 先日、後遺障害の申請をするため、診断書を書いてもらいました。

顔面部に縦3センチ横2センチの線状痕、縦5センチ横3.5センチの卵型の傷痕と膝の靭帯、半月板損傷で可動域が痛めた膝側が自動で屈曲が125、伸展がー15、他動が屈曲135、伸展ー10、反対側が、自動140他動140、伸展自動で0他動0でした。

併合される可能性が高いと言われたのですが…意味がわからないので教えて下さい。顔面の傷については、別々に等級がつくのでしょうか?いくらくらいの金額が妥当な金額でしょうか?

弁護士の写真 弁護士の回答 顔と膝については部位が異なりますので、それぞれ後遺障害等級認定がなされると思います。

13級以上の後遺障害が2つ以上あるときは重い方の等級を1級繰り上げ8級以上の後遺障害が2つ以上あるときは重い方の等級を2級繰り上げ5級以上の後遺障害が2つ以上あるときは重い方の等級を3級繰り上げます。

金額は後遺障害の等級によりますので、現時点では何とも言えないところがあります。

後遺障害の損害は、慰謝料と逸失利益によって構成されます。

逸失利益は、基礎収入に、労働能力喪失率、労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数を乗じて算定されますが、後遺障害の内容がいわゆる顔面醜状の場合、労働能力には影響がないとして、加害者側からは逸失利益を否定する主張をされることがあります。

金額としてはかなり大きくなることが予想されますので、弁護士に相談した方がいいと思います。

複数の後遺障害について併合のルールが適用されることで、等級が1〜3級繰り上がる可能性があるようです。 併合のルールは、次のようになっているとのことです。

  • 13級以上の後遺障害が2つ以上ある:重い方の等級を1級繰り上げ
  • 8級以上の後遺障害が2つ以上ある:重い方の等級を2級繰り上げ
  • 5級以上の後遺障害が2つ以上ある:重い方の等級を3級繰り上げ

等級が繰り上がると、後遺障害慰謝料や逸失利益が増額する場合があります。

併合のルールは必ず適用される?

併合のルールは、どのような場合でも必ず適用されるのでしょうか。

後遺障害の併合

相談者の疑問 人身事故で障害が残りました、下肢の長さが3センチ以上違い、大腿骨骨折で人工骨頭を入れています。

後遺障害認定の手続きをしていますが、これは併合でひとつ上の級になるのですか。

清水 卓の写真 弁護士の回答清水 卓弁護士 ご指摘のとおり、等級が1級繰り上がる可能性がありますが、以下のように、併合のルールどおりに等級が繰り上げされない場合もありますので、既に後遺障害の等級認定手続きの申請をしたのであれば、認定結果が判明した後、認定理由書を持参の上、弁護士の法律相談を受けてみることもご検討下さい。

・他の障害類型で評価済みの場合
(例)大腿骨の変形(12級)と1下肢の1cm以上の短縮(13級)
→ 変形したからこそ短縮と考え、1等級の繰り上げを行わず、重い12級と評価

後遺障害頚椎腰椎併合14級?

相談者の疑問 後遺障害認定で頚椎捻挫と腰椎捻挫で併合14級になった場合頚椎捻挫だけの14級と比べ慰謝料などは変わりますか?それとも14級は14級で併合は関係ないのでしょうか?

湯本 良明の写真 弁護士の回答湯本 良明弁護士 原則として14級に変わりはないので、慰謝料などは変わらないでしょう。
ただ、具体的な症状などによっては、慰謝料や後遺障害逸失利益の算定の際に考慮される可能性はあるでしょう。

複数の後遺障害が認定されたからといって、併合のルールは必ず適用されるわけではないようです。 後遺障害等級が14級の場合などでは、適用されないケースもあるようです。 ただ、症状によっては慰謝料や逸失利益を算定するときに考慮される可能性があるようです。

後遺障害慰謝料を請求するときのポイント

併合によって等級が繰り上がった場合、後遺障害慰謝料や逸失利益も増額されます。 では、相手方と慰謝料や逸失利益について交渉するとき、どのような点に注意すればよいでしょうか。

交通事故示談金について

相談者の疑問 昨年中学生の息子が車にぶつかり怪我をしました。過失割合は、息子〔自転車〕が2、相手〔車〕が8です。

先日後遺障害認定の結果として、顔に残った線状痕数箇所が9級、脊柱の圧迫骨折が11級、で併合し8級となりました。

そこで質問です。相手方保険会社からの後遺障害金含め示談金はいくら位の提示になるのでしょうか?

和氣 良浩の写真 弁護士の回答和氣 良浩弁護士 任意保険会社の提示額は、自賠責保険の限度額程度であると思って頂いて間違いないと思います。
後遺障害8級の限度額は819万円です。傷害部分の支払いは60万円程度であると予想されますので、900万円程度ですね。自賠責の範囲内の賠償であれば、過失相殺は問題となりません。

裁判基準での賠償額についてですが、傷害部分が120万円、後遺障害部分のうち慰謝料は830万円です。

問題は後遺障害逸失利益です。8級の労働能力喪失率は45%とされていますが、後遺障害のひとつが顔面醜状痕ということで、労働能力に影響を及ぼさないのではないかという問題があります。

要するに、顔に傷があっても、身体の機能的には問題ないのであるから、労働能力は喪失しないのではないかという論点です。

この点については、裁判上も争いがあり、消極的(労働能力は喪失しないのではないか)に考える裁判例もありますが、現在では、積極的に認める裁判例も見られます。

もちろん、消極的な裁判例でも労働能力喪失率をゼロとしているわけではなく、規定上の45%から割り引いて計算するようにしているのです。

また、お子さんの場合、脊柱の変形障害があり、その障害により背部・腰部痛が誘発され,身体の機能を害していると認められますので、11級規定の労働能力喪失率20%が認められると考えてよいでしょう。

そうすると、損害額としては、傷害慰謝料120万円、後遺障害慰謝料830万円、後遺障害逸失利益2000万円~ということでよいのではないでしょうか。仮にこちらの過失が2割だとすれば、上記金額の合計から20%控除すればよいと思います。
 
任意保険基準と裁判基準とでは全く賠償額が異なりますので、やはり弁護士に依頼して解決すべきでしょう。
また、後遺障害逸失利益の考え方が問題となる以上、専門的に取り扱っているところに依頼すべきです。

ところで、あなたやあなたの配偶者、同居のご家族の自動車保険に人身傷害保険は附帯していませんか?もし付帯していればお子さんの過失分に相当する額をその保険から受け取ることができますよ。

保険会社から提示される賠償金の額と、裁判基準での額とでは金額に差があるため、請求する時には注意が必要です。 裁判基準での金額を請求したい場合には、弁護士に相談することを検討してもいいでしょう。

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