後遺障害

弁護士監修記事 2017年11月14日

交通事故で歯が折れた…後遺障害等級認定を受けられるケースとは

交通事故によって歯が折れるなどのダメージを受けた場合、後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。認定にあたっては、損傷した歯の本数や、噛む力にどのくらい影響が出ているかといったことが重要なポイントです。

  • 歯が2本折れても後遺障害等級認定されない?重要なポイントは「3本以上」
  • 食べ物を噛むときや発音に支障が…認定にあたって考慮される?
  • 弁護士に依頼した方がよいのか

この記事では、「みんなの法律相談」に寄せられた、実際の相談事例と弁護士の回答をもとに、こうしたポイントについて解説します。 交通事故で歯にダメージを受け、治療をしてもなお日常生活に不便を感じている人はぜひ参考にしてください。

目次

  1. 事故で歯が2本折れた…後遺障害等級認定を受けられる?
  2. 後遺障害等級認定のポイント「咀嚼(そしゃく)機能に障害を残すもの」って?
  3. 歯を失ったときに逸失利益は請求できるの?
  4. 弁護士に依頼すると慰謝料が増額する?
  5. まとめ

事故で歯が2本折れた…後遺障害等級認定を受けられる?

alt 事故のケガを一定期間治療して、「これ以上治療を続けても良くならない」(症状固定)という状態になっても痛みなどが残った場合、その症状について後遺障害等級認定を受けられれば、後遺障害慰謝料を受け取ることができます。 後遺障害等級認定を受けるためには、決められた条件をクリアしなければなりません。歯にダメージを受けた場合はどんなことがポイントになるのでしょうか。

交通事故の示談金について質問します。


相談者の疑問
今年の5月に当方125ccのバイクに娘を後ろに乗せて、交差点に直進侵入した所、左折してきた車に右後方からぶつけられ転倒、私は足、腰、肩を打撲し未だに通院加療中です。
娘は足の打撲と、前歯を2本折ってしまい、整形外科と歯科に通いました。

娘は17歳です。整形外科に5月15日から9月11日まで120日の間に47回通院して終了しました。歯科は、根っこはまだ生きているからと、セラミックの差し歯を入れてもらいました。5月14日から8月11日まで90日の間に11回通院して終了しました。

保険会社から送られてきた示談書には治療費が664300円かかった事。傷害慰謝料は通院1日8400円なので、8400円×50日で420000円だと送られてきました。17歳の娘が受けた精神的苦痛は図りしれないと思います。この金額って妥当なんでしょうか?

後遺障害の認定は歯が3本折れた場合からということですが、2本の場合は3分の2程度の請求は可能でしょうか?


古本 和雅弁護士
>1 この金額(8400円×50日で420000円)って妥当なんでしょうか?

結論から言えば、裁判基準から考えると妥当ではありません。

慰謝料には2種類あり、1つは通院日数に応じて計算される「通院慰謝料」と、もう1つは後遺障害の重さによって計算される「後遺症慰謝料」とがあります。
この質問で聞かれているのは、「通院慰謝料」です。

「通院慰謝料」の金額は、全国の裁判所においてほぼ基準が決まっており、通院期間によって機械的に計算されることが多いです。

このような基準に当てはめた場合、本件(通院期間5月14日~9月11日の約4か月)では、90万円の通院慰謝料が妥当であると考えられます。

>2 後遺障害の認定は3本と書かれていますが、3分の2程度の請求は可能でしょうか?

そのような請求が認められる可能性は極めて低いです。

どのような障害が後遺障害に当たるかについては具体的に定められており(重さに応じて1級~14級まで定められています)、これらに該当しない障害はすべて後遺障害「非該当」と判断されます。

そして、仮に娘さんの歯が3本折れていた場合には後遺障害14級に該当するのですが、これより軽い後遺障害の定めは存在しないため、2本折れた場合には「非該当」となってしまうのです。
 
先ほども述べたとおり、「後遺症慰謝料」は後遺症の重さに応じて金額が決まるのですが、1級~14級に応じて金額も明確に決まっています。

そして、このような基準によれば、後遺障害「非該当」の場合には、「後遺障害慰謝料」は0円となります。

そのため、保険会社が、歯が2本折れたことに対して「後遺障害慰謝料」を認めてくれる可能性は極めて低いでしょう。

なお、裁判まで起こせば、「歯が2本折れたことによる精神的損害」を個別に判断してくれる可能性もあります。

あくまでも、保険会社との交渉において、上記のような請求が可能であるか否かという回答です。

歯のケガについて後遺障害等級認定を受けるためには、折れるなどのダメージを受けた歯の本数が「3本以上」ということが重要なポイントになるようです。 ただし、裁判で争った場合には、歯が2本折れたことへの精神的苦痛に対する慰謝料が認められる可能性があります。

後遺障害等級認定のポイント「咀嚼(そしゃく)機能に障害を残すもの」って?

alt 交通事故で歯を損傷すると、咀嚼(そしゃく)(食べ物を噛んだり飲み込んだりすること)がしづらくなる場合があります。言葉を発音しづらくなったと感じる人もいるかもしれません。 後遺障害等級認定の判断にあたって、失った歯の本数だけではなく、咀嚼機能や発音に支障が出ていることもポイントの1つになるのでしょうか。

交通事故で前歯を3本を損傷した時の,後遺障害別等級が該当するかどうかについて.


相談者の疑問
自転車同士の事故で上の前歯3本を損傷しました。今回のような怪我の場合、後遺障害別等級表における慰謝料を請求できるのでしょうか?

1本目は、露髄を伴う歯冠破折をし、歯冠修復措置を行いました。
2本目は、歯冠破折し、充填措置を行いました。
3本目は、歯全体にひびが入っていましたが自己治癒が可能かもしれないため経過観察としました。

今回のような怪我の場合、後遺障害別等級表1)における
第10級 咀嚼または言語の機能に障害を残すもの (慰謝料461万円)
第14級 3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの (慰謝料75万円)

に該当するでしょうか?また、全額を請求できなくても一部の金額を慰謝料として請求することはできるのでしょうか?


比護 望弁護士
「咀嚼機能に障害を残すもの」は労災の基準で以下のようになっています(自賠責基準はそれに準じる)。

固いものを噛めないのが前歯だけであるとその支障の程度によりますが、判断が分かれる可能性があると思います。

なお「第10級…慰謝料461万円」とありますが、この金額は後遺障害による損害(逸失利益、慰謝料等)の自賠責保険の支払限度額で、財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部・赤い本の基準では10級の後遺障害慰謝料は550万円です(これとは別に後遺障害による逸失利益等の損害賠償請求が考えられます)。

「そしゃく機能に障害を残すもの」とは、固形食物の中にそしゃくができないもの又はそしゃくが十分にできないものがあり、そのことが医学的に確認できる場合をいう。

(ア) 「固形食物の中にそしゃくができないもの又はそしゃくが十分にできないものがあり」の例としては、ごはん、煮魚、ハム等はそしゃくできるが、たくあん、らっきょう、ピーナッツ等の一定の固さの食物中にそしゃくができないもの又はそしゃくが十分にできないものがあるなどの場合をいう。

(イ) 「医学的に確認できる」とは、そしゃくができないもの又はそしゃくが十分にできないものがあることの原因が、不正咬合、そしゃく関与筋群の異常、下顎関節の障害、開口障害、歯牙損傷(補てつができない場合)等にあると医学的に確認できることをいう。

東京地裁昭和62・2・27判決
前示の原告の現在の症状、すなわち、仮義歯を装着しているものの、仮義歯と歯茎との間に間隙が生じているうえ、仮義歯の装着状態が不安定であるため、食べ物を前歯で食い千切るような食べ方ができず、さ行の発音や英語の発音に支障がある状況は、それ自体、いまだ、前示の等級表第九級ないし第一〇級の「咀嚼機能に障害を残すもの」あるいは「言語の機能に障害を残すもの」に該当する程度に至つているものとは認め難いのみならず、原告の歯の欠損部に対しては、技術的な困難は伴うものの、義歯を装着することが可能であり、義歯を装着した場合には、現在よりもなお咀嚼及び言語の機能が改善される見通しである旨の診断を受けていることを勘案すると、その後遺障害の程度は、等級表第九級六号所定の「咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの」にも、同表第一〇級二号所定の「咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの」にも該当しないものといわざるをえない。

後遺障害等級認定にあたっては、咀嚼機能に支障が出ていることも1つの要素として考慮されます。 「咀嚼または言語の機能に障害を残すもの」という規定の内容は細かく決められています。単に「食べ物がかみづらい」という程度では規定に当てはまりません。 裁判例によると、差し歯などを装着して前歯で食べ物を食いちぎることが難しかったり、発音に支障がある程度では認められない可能性があるようです。

歯を失ったときに逸失利益は請求できるの?

alt 後遺障害等級認定を受けると、「逸失利益」(交通事故に遭わなければ得られたはずの利益)を受け取ることができます。歯を損傷して後遺障害等級認定を受けた場合でも、逸失利益は認められるのでしょうか。

歯の後遺症障害。またやはり歯の場合は逸失利益は出ないのですか?


相談者の疑問
もうすぐ交通事故で失った歯の治療が終わりますが、後遺症障害などはどうなりますか?
弁護士さんにも頼んではいるのですが、ここで話も聞きたいです。前歯の上が4本根元から無く、インプラント2本にブリッジになります。

下の前歯は3本なく全てブリッジ予定です。合計7本が根元から無いですが、そのうち2本はもともと、被せ物をした差し歯でした。弁護士さんは12等級の後遺症障害であろうと言ってましたが、そんな感じですか?またやはり歯の場合は逸失利益は出ないのですか?


加藤 寛崇弁護士
7歯であれば、12級に該当します。歯の後遺障害の場合は、現実の労働能力に影響するケースが限られるので、逸失利益は認められないか12級よりも低く抑えられるケースが多いのは事実です。その分、慰謝料を多めにされたりはしますが。

他の後遺症に該当する事情があれば、その点をきちんと後遺障害診断書に記載してもらいましょう。

労働能力に影響するケースが限られることから、歯を失ったことによる逸失利益は認められないことが多く、その分を慰謝料に上乗せという形で考慮されることがあるようです。

弁護士に依頼すると慰謝料が増額する?

alt 交通事故により、歯だけではなく顔の他の部分にもダメージを負った場合、後遺障害の等級はどのように判断されるのでしょうか。弁護士に交渉を依頼すると賠償額はどれくらい変わってくるのでしょうか。

弁護士の方に依頼した場合慰謝料等の差額を教えて下さい。


相談者の疑問
交通事故にあいました。こちらがバイクで相手が車です。
治療費は全額相手の任意保険会社が負担になっています。

当時の症状が鼻の骨骨折。歯を6本なくしました。それと顔に亀裂、唇を縫いました。
さらに事故により眼鏡をかけなければいけないぐらい視力が落ちました。

現在、骨折は治り、傷は何ヵ所か残っていますが、5センチ以上にはならない傷です。
今も歯の治療を続けている状態なのですが、インプラント治療になり、歯を矯正するため入れ歯をいれずに治療期間が2年はかかると言われました。

事故当時はアルバイトをしていて、休業補償を5カ月もらっていましたが、会社の方から退職という形になり、先月は次の仕事までの費用として、休業補償と同額の金額を頂きました。しかし、入れ歯を入れていないので、なかなか面接に受からず、それに2年も歯がない状態での仕事になります。

現在、治療している最中ですが、今の段階で弁護士の方に相談し、後遺障害や慰謝料などを任せた方がよろしいのでしょうか?


清水 卓弁護士
1 顔面部に複数の傷がある場合の後遺障害等級の認定方法

「2個以上の瘢痕又は線状痕が隣接し、又は相まつて1個の瘢痕又は線状痕と同程度以上の醜状を呈する場合は、それらの面積、長さ等を合算して等級を決定するものとする。」

ですので、ご相談のご事案のケースでも、場合によっては、複数の傷の長さが合算されて等級認定される可能性があります(なお、顔面の怪我の場合、調査機関による面談審査があります)。

2 予想されるお顔の傷の等級

傷の長さ等の合算認定がなされる場合には後遺障害9級の可能性がありますが、合算認定がなされない場合には、ご投稿内容からしますと、後遺障害12級となる可能性があります。

3 予想される視力の点と歯のお怪我の等級

ご投稿内容からしますと、視力の点については後遺障害非該当、歯のお怪我については、6歯を亡くされたとのことですので、後遺障害13級が認定される可能性がございます。

4 後遺障害の等級認定が複数なされた場合の処理

「第13級以上に該当する後遺障害が2つ以上あるときは、重い方の後遺障害の等級を1級繰上げる。」

そうしますと、ご相談事案では併合11級となる可能性がございます。なお、11級の後遺障害慰謝料は420万程度です。ただ、慰謝料には入通院慰謝料(傷害慰謝料)ございますのでご注意下さい。

5 弁護士を代理人として交渉した場合の増額幅について

結論から申しますと、2倍以上の増額となるケースも多々ございます。

加害者側保険会社は、ご本人交渉の際には自社基準ないし自賠責基準を前提に賠償金額を算定し示談を迫ってきますが、弁護士が代理人となって交渉等する場合には、いわゆる裁判基準を前提に交渉等し、賠償させます。

(ご参考)後遺障害慰謝料を例とした自賠責基準と裁判基準の比較
 ⇒http://support-jiko.jp/contents/jiko_isharyou/

また、ご相談事案をご本人で交渉された場合、加害者側保険会社が逸失利益(予想される将来の収入減少)の賠償を拒否ないし低額の賠償提示をしてくる可能性がございますが、弁護士を代理人に立て示談交渉ないし訴訟提起をした場合、逸失利益の賠償ないし増額が認められる可能性がございます。

複数の後遺障害等級が認められると、重い方の等級を一級繰り上げる形で等級が認定されるようです。 また、弁護士を代理人として加害者側と賠償金の交渉を行うと、自力で交渉する場合に比べて、賠償金が増額されることもあるようです。

まとめ

交通事故で歯にダメージを負った場合、後遺障害等級認定を受けるためには「損傷した歯の本数」が1つの重要なポイントです。 歯が3本折れた場合は後遺障害等級14級に認定される可能性がありますが、2本以下の場合は後遺障害非該当と判断されてしまいます。 非該当となれば後遺障害に対する慰謝料は受け取れませんが、裁判を起こした場合、歯を失ったことへの精神的苦痛としての慰謝料が認められる可能性があります。 歯にダメージを受けて食事や言葉の発音がしづらくなった場合、「咀嚼または言語の機能に障害を残すもの」という規定に当てはまれば、14級よりもさらに高い後遺障害等級が認められ、後遺障害に対する慰謝料も増額します。 加害者側と賠償金の交渉を行う際、弁護士を代理人として立てると、自力で交渉する場合に比べて、賠償金が増額されることもあるようです。

慰謝料や損害賠償金額を計算する

計算機とお金の画像

交通事故被害の慰謝料・賠償金を計算できます 慰謝料・損害賠償金計算機

あわせて読みたい関連記事

被害者請求で後遺障害の等級を認めてもらうためのポイントと手続きの流れ

被害者請求は、交通事故の被害者自身が、自賠責保険の請求を行うことです。後遺障害の等級を認定してほしい場合は、等級認定の申請手続きも進めていくことに...

後遺障害等級認定の結果に納得できない場合の対処法【異議申立て】

後遺障害等級認定を受けたけれど結果に満足できない場合、等級認定を審査した機関に異議を申し立てることによって結果を変更してもらえる可能性があります。 ...

解決までの流れ

解決までの全記事

弁護士に見積り依頼をする

複数の弁護士にまとめて見積り依頼
費用対処方針比べて選ぶことができます。

  • 弁護士費用がいくらかかるか知りたい
  • 弁護士の選び方がわからない
  • 弁護士が何をしてくれるか知りたい
一括見積りをはじめる無料

依頼前に知っておきたい弁護士知識

後遺障害等級認定を扱う弁護士を探す

後遺障害に関する法律相談

  • 自動車事故の遅延損害金の起算日について

    ①自動車事故の保険金の遅延損害金の支払いの起算日は、いつからですか? 事故が起こった日ですか? それとも退院後ですか? それとも後遺障害が診断された日からですか? ②個人と保険会社と...

    1弁護士回答
  • 後遺障害の併合について

    併合について質問です。 可動域制限の12級7号と痛みの12級13号は、同じ足首であっても併合で11級になるのでしょうか?

    1弁護士回答
  • 示談交渉をした後に、後遺症が出て、毎朝辛いです 示談をしつこく言われた

    こんばんは 去年の9月に追突事故にあい 後ろ二台から追突になりました 支払いをしてくれたのが、後ろの車の人です。 その保険屋さんが、3か月過ぎたころから示談を進めてきましたが、「痛...

    2弁護士回答
  • 後遺障害等級について

    後遺障害についてお聞きしたいのですが、5月あたまに後遺障害の申請し、つい先日結果がでました。 私の場合、手指、足指に後遺症が残りました。 そして結果が手指12級、足指13級で併合して11...

    1弁護士回答
  • 後遺障害の無等級に対して異議申し立て

    交通事故に1年半の間に3度合い1度目の後遺症で膝半月板損傷等、頚椎、腰椎捻挫で14級の後遺障害になり示談中 その後、歩いていてトレーラーのタイヤ留めが飛んで来て足のくるぶしに当たり骨...

    1弁護士回答
1 2 3 4 5 ... 30

相談を絞り込む

後遺障害の法律ガイド

関連カテゴリから解決方法を探す

弁護士に相談しようと思ったら…

弁護士に見積り依頼をする

複数の弁護士にまとめて見積り依頼

  • 最短3分で依頼完了
  • 依頼内容は非公開
  • 分野に詳しい弁護士から見積り依頼が届く
一括見積りをはじめる無料

依頼前に知っておきたい弁護士知識

交通事故のニュース

  1. 凶暴な飼い犬、小学生を襲う…被害児の親は「...
  2. バイク運転手死亡事故、信号無視した「歩行者...
  3. 池袋事故「上級国民だから逮捕されない」 運...
  4. 「いじめの時効」はいつか…中学時代の同級生...
  5. 国内最悪「時速235キロ」で高速道路暴走した...
  6. 高速道路の落下物「年30万件」以上…タイヤ原...
  7. 高齢ドライバー対策、自動ブレーキ車など「限...