名神高速道路を歩いていた男性が、トラックや後続の乗用車など計5台にはねられ死亡する事故が11月7日、起こった。大阪府警高速隊は、トラックを運転していた61歳の男性を、自動車運転処罰法違反の疑いで現行犯逮捕した。
報道によると、死亡した男性は、軽乗用車で下り車線を走行中に、側壁に接触する事故を起こした。その後、車を降りて、中央分離帯を乗り越え、上り車線に入り込んだところをはねられたとみられている。
このニュースに対してネット上では、「高速を歩く方が悪くないか?」「同じ状況で避けれる自信ないわ 思いっきりハンドル切ったら横転コースだろうし」など、トラックの運転手に同情する声があがっていた。
交通事故で歩行者をはねてしまった場合、たとえそれが歩行者がいないはずの高速道路で起きた事故でも、関係なく処罰されるものなのだろうか。和氣良浩弁護士に聞いた。
●運転手は罪に問われるのか?
「自動車の運転手は、車の進行方向を注視する『前方注視義務』を負っています。この義務を守らず、他人に怪我をさせたり命を奪ってしまうと、過失運転致死傷の罪に問われます」
和氣弁護士はこのように切り出した。今回、歩行者をはねてしまったトラックの運転手は、前方への注意を怠っていたと言えるのだろうか。
「必ずしもそうとは言えません。高速道路は、歩行者の進入が禁止されている場所です。高速道路を走る運転手には、前方に歩行者がいることを予測しながら運転することまでは要求されていません」
トラックの運転手も、まさか高速道路を人が歩いているとは思わなかっただろう。
「高速道路上でも、前方に事故車を発見した場合は、その車から人が降りてこないかなど注意する必要があります。
しかし本件で、被害者は下り線で事故を起こし、中央分離帯を乗り越えて上り線に入り込んできたということです。さすがに運転手にここまで予想して運転しろとは言えず、前方注視義務違反を問うのは酷でしょう。
もし、前方をちゃんと見ていたら被害者の存在に気づくことができた、という特段の事情があれば別ですが、そうでなければ、運転手は基本的には罪に問われないと思います」
●「逮捕=有罪」ではない
ただ、報道によるとトラックの運転手は「現行犯逮捕」されたようだが・・・。
「たしかに運転手は現行犯逮捕されていますが、『逮捕』=『有罪』ではありません。逮捕は、罪を犯した『疑い』があるというだけでできるので、裁判で有罪判決が下されるまでは無罪だと推定されます。
その後の警察の捜査によって、『運転者がよそ見をしていて、そのよそ見がなければ事故を回避することができた』といった事情が認められない限り、起訴まではされないでしょう」
和氣弁護士はこのように説明していた。