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1 給与所得者の逸失利益における基礎収入は事故前年とするのが原則です。そうすると、御相談者の場合には、平成29年の1000万円とするのが原則通りです。しかし、平成29年1000万円、平成30年800万円と減収になっており、転職をして症状固定時には400万円と事故前年の収入の半分以下となっており、原則通りとするのは相当ではないと判断される事例です。
2 つまり、給与所得者で、同じ会社に勤務を継続してしており、減収の理由も説明がつく場合には、原則通り平成29年の年収を基礎収入とすることも可能です。しかし、転職をしており、また事故前年と事故年との年収の差額も大きな幅となっており、それらの点から単純に給与所得者として事故前年の年収を基礎とはできないからです。
3 通常の事案は、事故前年の所得よりも高い収入が将来見込まれた蓋然性が問題となるのですが、御相談者の事例は、事故前年の収入が症状固定時の現実収入との乖離が大きすぎて原則通り適用するのは、公平に反すると判断される恐れがある事例と保険会社が見ているのです。そこで、ご指摘の通り基礎収入を単純に400万円とするのではなく、実就労日数で除して365日を乗じるという若干技巧的な方法で、従前の収入に近づけるやりかたを採用したのだと推測します。
4 転職の合理的な理由が説明できて、将来の収入の上昇が予想される高度な蓋然性が立証できれば、584万円以上の金額の基礎収入とすることは可能かと思います。あるいは、年齢が不明ですし、職種・学歴・経歴と言った要素が不明ですので、軽々しくは断定できませんが、賃金センサスによる平均賃金との比較も重要です。仮に、賃金センサスのそれとも乖離があるならば、賃金センサスレベルまでの収入が将来得られたという証明は可能でしょう。もし、弁護士費用特約がついておられるならば、利用して依頼をすべきかと思います。ご参考にしていただければ幸いです。