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「毎月、借金が増えて不安」司法修習生を悩ませる「貸与制」ーー元の制度に戻すべき?
シンポジウムは横浜弁護士会館で開かれた

「毎月、借金が増えて不安」司法修習生を悩ませる「貸与制」ーー元の制度に戻すべき?

司法修習生に国が給与を支払う「給費制」が廃止され、返済が必要な「貸与制」に移行したことをめぐり、横浜弁護士会は1月21日、「給費制」の復活を求めるシンポジウムを横浜弁護士会館で開いた。「貸与制」で司法修習を受けた弁護士や、これから法曹を目指す大学生が登壇し、貸与制の問題点を指摘した。

司法試験の合格者が弁護士・検事・裁判官という「法曹」になるためには、合格のあと1年間、実地訓練である「司法修習」を受ける必要がある。2010年の合格者までは、国が給与を支給する「給費制」がとられていた。しかし国の財政面の理由で、2011年の合格者からは、修習の資金を貸し付ける「貸与制」に移行した。

●「お金のない人がいなくなれば、有利になってラッキー」

登壇した林裕介弁護士は、法科大学院時代に貸与された奨学金に加えて、修習中にも貸与を受けることになった経験をもとに、制度への不安を語った。

「貸与金が生活のために振り込まれるのはありがたいが、毎月毎月、借金が増えて行っているのが目に見えてわかる。弁護士になれたとしても、若手はすぐに仕事がまわってくるとは限らない。本当に返せるのかという不安は、修習中は常に付きまとっていたし、今もある」

日本大学法学部4年生で、4月から中央大学法科大学院に進学する竹崎祐喜さんも登壇し、「司法試験より、お金の心配が大きい」と語った。さらに、竹崎さんと異なり、来年度の同期進学者たちが「今の(貸与制)のままでいいんじゃないか」と認識していることにも疑問を感じたという。

「同期の中には、『お金のない人が(司法試験や司法修習から)去って行ったら、自分たちがその分だけ有利になってラッキーだ』という人もいます。こんなことを言うのは、だいたい裕福な家庭の人です。自分のことしか考えない弁護士が増えるのではないかという不安があります」

●法曹志願者の減少にも影響?

また、釜井英法弁護士は、近年、法曹志願者が激減している原因の一つが「貸与制」にあると指摘し、「給費制」を復活させる必要性を訴えた。

「司法修習は、国が『(法曹は)人の権利を扱う職業なんだから、1年間は実務的な訓練をしっかりやらなければならない』ということでできた制度だ。『無給』になったことで、若者が国の態度を敏感に感じ取っているのではないか」

このように「貸与制」が志願者の減少に影響を及ぼしていることを指摘したうえで、次のように語った。

「一般の企業で、『新入社員は最初は使えないんだから、生活できるお金は渡すけど、1年間は貸付ね』といわれたら、その企業に人は来るだろうか」

シンポジウム終了後、会場に来ていた弁護士の一人に話を聞くと、「私は奨学金と修習中の貸与金で700万円を借りています。法律相談で700万円の借金があるという人から相談を受けたら、私は破産の申立てを勧めますよ」と自嘲気味に話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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