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「リベンジポルノが犯罪として明確になった」 被害防止法を弁護士はどう評価する?
リベンジポルノで心に深い傷を負った人もいるであろう

「リベンジポルノが犯罪として明確になった」 被害防止法を弁護士はどう評価する?

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別れた元恋人や元配偶者に嫌がらせをするために、かつて撮影した相手の性的な写真や動画をインターネット上で拡散させる「リベンジポルノ」。いったん写真や動画がネット上で広がると、すべてを削除することは難しい。

そんなリベンジポルノの被害を防ぐため、議員立法でまとめた「リベンジポルノ被害防止法」(私事性的画像記録の提供被害防止法)が11月中旬、参議院本会議で可決、成立した。最高で「懲役3年」の罰則ができるなど、リベンジポルノの取り締まりが強化される。

この法律のポイントはどこにあるのか。最所義一弁護士に聞いた。

●現行法でも、ある程度は対応可能だった

「新しくできた法律では、

(1)第三者が撮影対象者を特定できる方法で、

(2)個人的に撮影した性交や性交類似行為、性器等が写っている画像記録を、

(3)インターネットに公開、あるいは不特定多数に提供した場合、

3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます」

最所弁護士はこう解説する。これまでの法律では、リベンジポルノの被害を防ぐことはできなかったのか。

「現行法でも、リベンジポルノの被害があった場合、まったく刑事事件化できなかったわけではありません。

撮影対象者が18歳未満であれば、児童ポルノ法によって、リベンジポルノの加害者を刑事事件化していました。

また、撮影対象者が18歳以上の場合は、『わいせつ物頒布罪(刑法175条)』や『名誉毀損罪(同法230条)』で刑事事件化する方法がありました」

●刑事事件化が難しいケースもあった

では、今回の法律は必要だったのか。

「これまでの法律には限界もありました。たとえば、性器が写った画像がネット上にバラまかれるケースがあるとします。

このような画像は『わいせつ画像』にあたるので、その頒布行為を取り締まることは原則として、可能です。しかし、『わいせつ物頒布罪』は、個人の利益を守るためではなく、社会の秩序を守る目的で犯罪とされたものです。

そのため、リベンジポルノの被害者は、『わいせつ物頒布罪』の直接的な『被害者』には該当しません。『被害者』に該当しないリベンジポルノの被害者が、被害届を出すこと自体、困難であるなど、法律に限界があったことは事実です」

名誉毀損罪はどうだろうか。

「撮影対象者の名前(伏せ字も含む)や、対象者が不特定多数の異性と交際しているかのようなフレーズが記載されていなければ、通常、画像のみで名誉毀損にあたるとすることは困難です。もっとも、画像の内容によっては、そのような写真を撮らせるような人物であるという事実が摘示されたものとして、名誉毀損の成立が認められる場合もあります。

名誉毀損にあたらないケース、たとえば、単に画像のみが出回っている場合は、プライバシー権侵害にあたるとすることはできても、プライバシー権侵害が、直接的には、刑法上の『犯罪』とならない以上、刑事事件化は著しく難しい状況でした。

今回の法律によって、リベンジポルノが『犯罪』であることが明確化されました。これまでプライバシー権侵害としか評価できないものも、刑事事件化できるようになったことが最大のメリットだと思います」

最所弁護士はこのように評価していた。

【追記】一部、説明を補足しました。(12月3日19時57分)

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

最所 義一
最所 義一(さいしょ よしかず)弁護士 弁護士法人港国際法律事務所湘南平塚事務所
東京大学農学部農業工学科(現生物・環境工学専攻)を卒業後、IT技術者や病院事務職(事務長)を経て、弁護士に。一般企業法務や知的財産問題のほか、インターネット関連のトラブルの解決に精力的に取り組んでいる。

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