白い御影石に覆われた威厳ある最高裁判所。司法権の象徴であるその建物の主が、4月に交代した。第18代長官に就任したのは、寺田逸郎氏。寺田長官は就任に際して、戦後70年で裁判所に求められるものが幅広くなり、社会のテンポも速まっているとして、事件の妥当・迅速な解決に向けて「誠実に努める」という談話を発表した。
寺田長官の父親・寺田治郎氏も1980年代に最高裁長官を務めている。親子で最高裁長官を務めるのは初めてという。そもそも最高裁長官は、具体的にどういった仕事や役割を担っているのだろうか。松丸伸一郎弁護士に聞いた。
●司法権を担う「三権の長」のひとつ
「最高裁判所は、日本の司法権を担当する最高機関です。
日本の裁判制度は『三審制』が基本で、下級の裁判所が出した判決に不服がある場合、上級の裁判所で審理を求めることができます。最高裁はその中で、最も上級の裁判所となっています。
最高裁はさらに、訴訟手続等に関する規則を制定する権限や、高裁以下の裁判官を指名する権限、裁判所職員の任免・監督や庁舎の管理を行う『司法行政監督権』など、重要な権限を持っています」
最高裁長官はそのトップだ。どんな位置づけなのだろうか。
「最高裁長官は、最高裁にいる15人の裁判官の長で、内閣の指名に基づいて、天皇によって任命されます。
内閣総理大臣(行政権)、衆議院議長・参議院議長(立法権)と並び、『三権の長』と呼ばれています」
その役割は、どんなものだろうか?
「最高裁長官は、他の最高裁判事とともに司法権(裁判権)を行使し、大法廷および小法廷の裁判長となります。
『一票の格差』事件などでは、ある法律が憲法に違反しないかどうかを審査する『違憲審査権』をどのように行使するかが、特に注目されています。三審制における『最後の砦』として、再審事件などの迅速・適正な審理も期待されています」
裁判官のリーダーとしての役割がまずある、ということだ。
●寺田長官に期待されているのは?
もう一つの大きな役割が、日本の裁判制度そのものに対するものだ。松丸弁護士は次のように、寺田新長官に期待する言葉を述べていた。
「最高裁長官は、最高裁が行う司法行政事務を統括し、最高裁事務総長などを監督します。
前任の竹崎博允長官は、裁判員裁判制度の導入・定着に多大な功績があったと言われています。寺田新長官は、裁判員裁判の審理のあり方などの問題点について、さらに研究するよう指示すると思われます。
裁判制度に関しては、医療訴訟・特許訴訟をはじめとする専門訴訟の迅速・適正な解決のための方策、弁護士の急増に伴って民事事件が増加することへの対策などが求められています。
こうした点について、民事関係の法整備に携わり、立法や行政にも精通している寺田新長官に対する期待は大きいと言われています」